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対談「西浦博先生に丁寧に聞く」の冒頭を公開(岩田健太郎『丁寧に考える新型コロナ』)

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大好評発売中の新刊『丁寧に考える新型コロナ』(岩田健太郎)
本書では、長期戦が予想される新型コロナ対応について、色々なことを「分かったつもり」になって論じたり批判したりしていないか、問いかけつつ、丁寧に解説しています。この辺りで腰を落ち着けて、「本当に分かった」を目指して、ぜひじっくり読んでみたい1冊です。
さて、本書の巻末特別対談(「西浦博先生に丁寧に聞く」)では、「8割おじさん」こと西浦博先生にご登場いただいています。ここで、本題に入る前の冒頭部分を少しだけ公開します。


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西浦博(にしうら・ひろし)

1977年、大阪府出身。2002年、宮崎医科大学医学部卒業。タイ、英、独、長崎などでの研究生活の後、ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授、北海道大学教授などを経て、20年8月から京都大学教授。専門は理論疫学。新型コロナウイルス感染症の流行に際し、数理モデルによる疫学研究にいち早く取り組み、20年1月から論文を次々と発表。2月末より厚生労働省のクラスター対策班に参画。「三密」の条件の特定や、北海道での緊急事態宣言発出、人との接触の8割削減の提言などをはじめ、感染拡大防止のための情報提供に尽力し続けている。


「数理モデル」の夏期講習


岩田 こんにちは、岩田健太郎です。『丁寧に考える新型コロナ』というこの本で、ぜひ丁寧に話を聞いてみたい方として、西浦先生をということで、今日はお忙しい中お願いしました。西浦先生、よろしくお願いいたします。今日は京都大学のラボからとうかがいました。

西浦 はい、じつは今日(7月20日)は引っ越しの搬入日なんです。このあと業者さんが来て、荷物をガラガラ運んでくれる予定ですので、音がするかもしれません(笑)。今のところは電話機と、ボロボロの机だけがある、そういうスペースからZoomしています。よろしくお願いいたします。

岩田 京都大学への異動は、コロナの流行が始まる以前の昨年(2019年)にはすでに決まっていたと聞いています。今月(7月)からのご着任なのですか?

西浦 いえ、着任は8月1日からです。本当は7月は、少し有休でも消化して……なんて思っていたのですが、コロナの流行が大きくなってきて、それどころではなくなって。今引っ越さないと、引っ越せないのではないかということになって、急いで引っ越ししています。


―――岩田先生と西浦先生、おふたりはすでに、かなりご面識が?

西浦 はい、かなりというわけではないですが、お互い存じ上げていますという感じですかね。
以前、ぼくは夏に毎年、立川の統計数理研究所というところで、数理モデルの短期コース(夏期大学院)を開講していました。「感染症の数理モデルについて入門するぞ」と思う人たち100人弱ぐらいに集まっていただいて、集中コースを開講しているんですよね。

で、じつは岩田先生にも、これに参加していただきたいなと思って、宣伝かねがねご連絡していたら、たぶんご連絡し始めて2年目か3年目のところで、うまく日程調整してくださって、全日程ではないですが来てくださって、受講生として皆のディスカッションに入っていただいたことがありました。

その結果、岩田先生にはそこから研究までしてもらったりして、もうなんていうか、「数理モデルの入り口」どころか、こんなにガツガツと使おうとしてくれている人はなかなかいないので(笑)、そういう面では、たいへんありがたいなあと思いながら……。

岩田 たしか2015年の夏ですね。もうエボラ(*2014~15年にかけて流行した)がそこそこ収束しようとしている時期で、たまたまある程度時間を作ることができたので、たしか9日間だったかな、お邪魔させていただきました。9日、10日、時間を空けるって、すごい調整が大変なんですけど(笑)。

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西浦 はい、臨床医には相当ハードルの高い話なのですが。
でもそうやって来てくださる方というのは、やっぱり「数理モデルを使うんだ」という強い意志を持ってきてくれる方なので、皆さんすごく熱いパッションを感じるのですが、特に岩田先生はその最たるもので、エボラの研究だけではなくて、今のCOVIDでもそうですけれど、他でもすぐに活用を始めてくださる人なんです。

細部にマニアックにこだわり過ぎずに、一般で活用できる新しい技術をどんどんと使っていくんだと、そういう姿勢でやってくださる臨床医は、日本では私の知っている限りそういらっしゃらないので、たいへん貴重な存在だと思っています。

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北海道に西浦あり、ではなく岸田あり


岩田 あとは岸田(直樹)先生(北海道科学大学客員教授、総合診療医、感染症コンサルタント)ぐらいですかね。

西浦 あ、そうですね、キッシーですね。今は北海道のぼくの教室の大学院生、PhD(博士課程)の2年目です。

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冒頭部分からほんの少しご紹介いたしました。
巻末特別対談(「西浦博先生に丁寧に聞く」)では、以下のような項目で100ページあまり、西浦氏と岩田氏の語りが展開されています。

巻末特別対談:「西浦博先生に丁寧に聞く」
西浦博×岩田健太郎 


◆「数理モデル」の夏期講習
◆北海道に西浦あり、ではなく岸田あり
◆「数理モデルって何!?」
◆ポピュレーション・サイエンス元年
◆各国の研究者たちの相談の場
◆クラスター対策班の結集
◆クラスター対策か、ロックダウンか
◆皆が皆、二次感染を起こすわけではない
◆「消えやすい」コロナとの付き合い方
◆夜の街の積極的検査――区の保健所の地道な苦労
◆コロナが要求する膨大な労働量
◆クラスター対策に重要な「時間と数」「人とモノ」
◆何が「接触」になるか――一般の人にとっての初めての経験
◆「濃厚接触」の定義とは
◆人の振る舞いが影響する新型コロナ
◆人類史上いちばん変なキャラのウイルス
◆緊急事態宣言の発出は遅すぎたか
◆範囲は広すぎた
◆解除は遅すぎたのか
◆早く始めれば、早く終わる
◆敢えて「今は勉強するフェーズ」と捉える
◆政治が変わるという期待
◆「届け出システム」の課題に見る日本の構造
◆発言と党派性の切り離し方
◆「ファクト」と「高度な専門的意見」を分ける
◆「タイで1人の感染者」からパンデミックが見える
◆実験データと、経験則は違う
◆ゾーニングに必要な「イメージ」
◆「若い人が経済を回せばいい」論について
◆「高齢者だけ感染させない」は現実的ではない
◆抗体ができることの意味
◆今後のウイルスとのつきあい方
◆できるだけ楽をして感染症を防ぐ「最適解探し」
◆一瞬一瞬の最適解を多様化し、ばらばらに選択する
◆エターナルに変わるべきもの


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本全体の目次を知りたい方は、以下の記事もお読みください…!!

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