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外飲みの新しい相棒「マルチステンレスボトル」|パリッコの「つつまし酒」#70

人生は辛い。未来への不安は消えない。世の中って甘くない。
けれども、そんな日々の中にだって「幸せ」は存在する。
いつでもどこでも、美味しいお酒とつまみがあればいい――。
混迷極まる令和の飲酒シーンに、颯爽と登場した酒場ライター・パリッコが、「お酒にまつわる、自分だけの、つつましくも幸せな時間」について丹念に紡いだエッセイ、noteで再始動! 
そろそろ飲みたくなる、毎週金曜日だいたい17時ごろ、更新です。

「ちょっとこれ、買ってくるわ!」

 休日、何気なくつけっぱなしにしていたTVから流れてきたCMに、一瞬で釘づけになりました。なんでも今、セブンイレブン限定商品として、「保温マルチステンレスボトルBOOK」なるものが販売中らしい。以前にも何度か書いていますが僕、「真空断熱モノ」に異常に弱いんですよね。
 シンプルな円柱状の、いかにも大容量そうな見た目がいい。フタが2種類付属し、ペットボトルをそのまま収納できるギミックがいい。雑誌の付録がどんどん豪華になっていった先の到達点というんでしょうか、商品名に「BOOK」とあるのに、どうやら付属するのは8ページの小さな説明書のみらしく、その潔さがいい。
 妻子に「ちょっとこれ、買ってくるわ!」とだけ告げ、全速力で最寄りのセブンへ向かってみたところ、確かにありましたよ。白黒2種類のステンレスボトルが。ほんの少しだけ迷い、シックなマットブラックを選びレジへ。お値段税込、1958円。僕からしてみれば安い買い物ではないけれど、今この激情に抗うことなどできるはずもありません。それに、真空断熱水筒としてはじゅうぶんお手頃な値段ですしね。などと、自分に言い聞かせつつ。

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無事ゲットできました。かなりあれこれ使えると書いてあり、わくわく

大容量が嬉しいポイント

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愛用しているサーモスの缶ホルダーと並べてみたところ

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ペットボトル用のフタを装着するとこんな感じ

 第一印象は、とにかくでかい! それに尽きます。横に並べてみたサーモスの缶ホルダーには500mlの缶飲料がすぽっと入るんですが、それよりひと回りはでかい。なので、缶やペットボトルを直接入れると周囲に若干の隙間ができ、カタカタと揺れてしまいます。あくまで屋外での保冷、保温用であって、セットしたドリンクをそこから直接飲むのには、そこまで向いていない印象。コンビニで買った缶チューハイを気軽に保冷しつつ、しかも周囲の街人にお酒だと悟らせずに飲めるという、僕がよく使っている用途に関していえば、サーモスのほうに軍配が上がりますね。
 ではせっかく買ったのにあんまり使い道がない? というと、そんなことはない。シンプルに水筒として使用したときの容量がなんと670mlもあるこのボトル、なんと、僕のリュックのサイドポケットにギリギリ収まりました。670mlというとたぶん、居酒屋でジョッキで出てくるウーロンハイ2杯ぶんくらいになるんじゃないかな?

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専用ポケットのような収まりかた

 ということは? そう。家でお酒を満たしていって、公園のベンチで気軽に一杯。なんてシチュエーションにぴったりなんじゃないですか?

たっぷりの緑茶割りをたずさえて

 ある日の仕事後、朝から降っていた雨がいつの間にかやんでいました。そこで、今がタイミングだ! とばかりに、ボトル酒の準備を始めます。普段は仕事場で、当然ストレートで飲んでいる2リットルペットボトルの緑茶、氷、そして焼酎を、ボトルに注ぐ。ギンギンに冷えた約670mlの緑茶割りを持ち歩く男に、これからなるというわけですね。
 おつまみはどうしようか。飲むのが緑茶割りなので、なんか酒場感のあるものがいいな。そうだ、駅前の「かぶら屋」が、確か串モノのテイクアウト販売を始めていたはず。あれを何本か買って公園へ行こう。サブのつまみはポテサラあたりがいいな。これはそのへんのコンビニのでいいか。
 そんなこんなで準備万端、お気に入りの東屋に到着しました。さぁ、ボトル酒解禁の儀を始めるぞ~!

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完璧なセッティング

 最近、我が地元の石神井公園では、もう蝉が鳴き始めましてね。かなりごきげんな情緒をかもしだしているんですよ。梅雨雨の打ち水効果か、池のほとりは適度な涼しさ。周囲に人出はなく、完全にひとりの世界。手もとには大好きなおつまみと、たっぷりの緑茶割り。この状況を「つまんなそ!」なんて言う人とは、ちょっと友達になれませんね。まぁ、そんな人が僕の連載なんて読んでるはずないか。
 そうそう、最近気に入ってる調味料があって、それがS&Bの「粗切りトウガラシ」。ペースト状の唐辛子なんですけど、ちょっと酸味が効かせてあって、これがたまにやきとん屋さんなんかで添えられている「辛味噌」感覚で使えていいんですよ。しかも、ポテサラにも合うんだな。
 ポテサラに唐辛子をちょんと乗せ、ひと口つまむ。まったりと甘いイモにほんのりとした辛味が加わり、こりゃあ理想的な酒のつまみだ。氷がほどよく溶け、絶好のコンディションとなった緑茶ハイをぐびり。すると、想定外の嬉しい発見! このボトル、一般的な水筒と違って口がすぼまったりしていません。つまり、飲み口がジョッキやグラスとほぼ一緒なんですね。これはいい! むしろ、お酒にこそ向いてるボトルなんじゃないの?
 串は、つくね、もも、ももにんにく、皮、ぼんじり。ぼんじりだけが塩で、あとはタレ。かぶら屋はタレがうまいですから。買ってきたばかりでまだほんのりと温かい串たちを、そのままかじったり、唐辛子をつけてかじったり。あぁ、酒場の味だ。緑茶割りぐびぐび。う~ん……天国ですね、これは。

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どんな料理のおつまみ力もアップさせてくれる「粗切りトウガラシ」

 というわけで、今回買ったボトル。僕の体感としまして、このくらいのおつまみの量に対して、ちょうどいい量のお酒を持ち歩けるという印象でした。ふらり公園酒の新しい相棒として、これからよろしく頼むよ。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)など。Twitter @paricco


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