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今の社会で生きづらい「繊細さん」が学びたいこと|辛酸なめ子#05

「繊細さん」にあてはまるワードとは?

最近「繊細さん」というワードが話題になっています。書店に行くと繊細さん関連の本が並んでいて売れているようです。繊細さんは専門用語では「HSP」と表現され、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略。刺激や他人の感情に過敏に反応する人、という意味で、心理学者のエレイン・アーロン博士によって提唱されました。

この名称も人間としてハイレベルな印象で、繊細さんへの羨望の念すら抱きかけていたのですが、先日「幻冬舎plus」の記事で「HSP自己診断テスト」というものを見つけました。脳科学医の高田明和先生が、自身も敏感な気質に悩み、「HSP」についての本や記事を執筆。ネットの記事のチェックリストは23項目あり、12個以上当てはまったら「超過敏」だそうです。

「周囲の微妙な変化によく気がつくほうだ」
「他人の気分に左右されやすい」
「痛みにとても敏感である」
「想像力が豊かで、空想にふけりやすい」
「他人に対し、とても良心的である」
「一度にたくさんのことを頼まれるのは避けたい」
「空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる」
「子どもの頃、親や教師に『敏感だ』とか『内気だ』といわれていた」

など……。

ちなみに私は17項目ほど該当して、これは「HSP」と判定しても良いかもしれません。ついに「繊細さん」ビジネスに参入できる!と繊細さんに似つかわしくない貪欲な思いが芽生えました。そもそも「繊細さん」と、さん付けしている呼び名は世の中的にOKなのか気になります。自称するのに一瞬躊躇してしまいます。でも世の人がその呼び名にあまり突っ込みを入れないのは、「繊細さん」を批判すると傷付きそう、というイメージがあるからでしょうか。ちなみに「敏感さん」という呼び名もあるそうですが、考えすぎかもしれませんが、若干、性的な妄想を抱かれそうな懸念があります。

自己評価が低い、人に気を遣いすぎる、ネガティブ思考になりがち……

関連の資料などを調べてみると、「HSP」の人は「自己評価が低い」「人に気を遣いすぎる」「人の表情が気になる」「ネガティブ思考になりがち」といった生きづらさの要素があるそうです。たしかに、自己評価が低くていつも出版社に申し訳ないという思いを抱いているし、自分のことよりも相手の気分を気にしてしまったり、人の表情を見て嫌われているのではと思ったり、思い当たる部分が多いです。相手に気を使いすぎて、人に頼み事や相談事ができません。

ネガティブ思考についても、最近は日々の瞑想のおかげで少しましになってきましたが、連絡が取れない人がいると逝去されたのかも、と勝手に飛躍して考えてしまう癖があります。数ヶ月間音信が途絶えただけで(◯◯さん、胃腸の調子が悪いと言っていたので、もしかしたら……。結局、お葬式にも行けなかった)と、負の妄想連鎖が止まりません。

逆に、すごいごぶさたしていた人から連絡があると、急に昔の知り合いと会うなんて、私の死期が近いのかも……とネガティブな方向に想像してしまいます。もちろんHSPの長所として「情報を深く処理する」「完璧主義」「共感力が高い」「想像力豊か」といった点もあるようです。芸術家にも多いタイプだとか。

自分が悪くないのに「すみません」とすぐ謝る癖

一度専門家の意見も伺いたいと思い、先日心理カウンセラーのカウンセリングを受けました。ご自身も「HSP」という優しそうな女性カウンセラーに相談。あらかじめサイトのチェックリストにチェックを入れていたのですが、「『人に振り回されやすい』『光や音に敏感』など。HSPの項目に多くチェックがついているのでHSPの可能性が高いです」と判定されました。

HSPは先天的な気質で人口の15~20%存在するそうなので、もはや血液型くらいの率かもしれません。気苦労が多い人がそんなにたくさん存在しているとは……。ちなみに私の場合、自分が悪くないのに「すみません」とすぐ謝る癖があり、そのことについても聞いてみました。例えば一緒に歩いている人が道を間違ったら私の方が「すみません」と謝ったり……お店で物を買う時にもなぜか「すみません」と言いながらレジに持って行ったり、人に何かプレゼントする時も「すみません」と気に入らない可能性を考えて先に謝ったり、常に申し訳ない気持ちが先立ちます。その癖についてカウンセラーさんに相談すると、

相手が謝る気持ちに共感して自分が謝ってしまうのかもしれません。また、トラブルや争いが起きないように、何か起こったら自分が悪いと思えば、場が平和に保たれると思っているのでしょう」

とのことで、納得しました。

「自分が悪いと思ってしまう」癖

さらに「自分が悪いと思ってしまう」癖は、子ども時代の出来事に起因していたようです。家族構成や家庭の状況について聞かれるうちに、子ども時代は父親の虫の居所が悪いと度々グーで殴られていたことを思い出しました。父の豹変した表情と受けた痛みが今でもフラッシュバックします。それも、父親が見ていた野球中継のチャンネルを変えた、とか、先に新聞を読んだ、といった理由で……。でも当時は自分はなんて悪いことをしてしまったんだろう、と罪悪感を覚えたほどでした。

体罰は潜在意識にじかに影響を与えます。思っている以上に体で受けたショックは大きいです。叩かれた体験があると、自分の方がダメだとか悪いと思いはじめてしまいます。子どもは素直なんで、怖い存在に対しては先に謝ろうとするんです」

とくに相手が男親とか圧倒的に立場が強いので、自分が悪いという意識を刷り込まれてしまうそうです。大人になってから、すぐ自分が悪いとか至らないと思ってしまうのは少女時代の体験の影響かもしれません。父は完全に忘れているようですが……。お子さんをお持ちの方は、絶対にお子さんを叩いたり殴ったりしないように、この場を借りて頼みたいです。

「HSP気質が強いと今の社会は生きづらいんです」

HSP気質が強いと今の社会は生きづらいんです。組織には合わないのでフリーで仕事されるのが向いてます。組織では思ったことをうまく言えなかったりしますが、じっくり考えると良い意見を持っているのがHSPです」

と、カウンセラーさんはおっしゃいます。人の話を聞いて共感する心理カウンセラーも向いているそうです。

でも気になるのが相手に共感しすぎてネガティブなエネルギーを受けてしまわないか、ということ。カウンセラーだととくに重い話を聞いてもらってしまいそうですが……。そのことについて伺うと

境界線を意識すれば大丈夫です。まずは意識なんです。相手の話聞いた後、いろいろとその人について考えてしまうとエネルギーを持って行かれてしまう。カウンセリング中は相手の境界に入りながら話を聞きますが、終わったら境界から出ることを意識します。相手にとらわれず、ちゃんと意識を分けることが大切です」

と、具体的に教えてくださいました。HSPの人は相手と自分の間に境界線をうまく引けていないことが多く、そのため相手の感情を過度に気にしたり、頼みを断れなかったり、仕事を任せられなかったり、親の期待に沿って生きようとしたり、人に細かく注意をしてしまったり、といった弊害が起こるそうです。

人と自分の境界線を意識するには、まず「『私の感情』と『相手の感情』は別のもの」と思うことが重要です。「あの人を怒らせてしまったかも……」と気に病むのは、相手の境界に知らずのうちに入ってしまっていることになります。自分の感情は自分がコントロールできるけれど、相手の感情はコントロールできません。どうにもならないことなら、気にしないで放っておいた方が良いです。今までもたしかに、自分の領域の一部を人に譲り渡して、相手に追従している感覚がありました。

友人や知人に自慢されることが多いのはなぜ?

逆に、人の言動でこちらの感情がざわざわすることも多いです。例えば私は友人や知人に自慢されることが多く、以前も延々と夫の学歴やママ友との華麗な交流について自慢され、かなりエネルギーを吸い取られたことがありました。それもHSPの気質が影響しているのか伺うと

HSPは、自己顕示欲が強い人の話をちゃんと聞いてあげるので、そういう人が集まってくる傾向がありますね。受け止めてくれると思われてどうしても変な人が寄ってきてしまう……。物理的に距離を置いた方が良いですよ」

と、アドバイスいただきました。
変な人はときどきネタになる、とポジティブに捉えたいです。

つい甘いものを食べてしまうのはなぜ?

また最近、「bizSPA! レッシュ」の記事で「神経が鋭敏になる原因に脳の慢性炎症があることが考えられる」という説を目にしました。

「炎症を引き起こしやすい食べ物」のリストを見ると、チョコレート、ケーキ、フライドポテトなど好きなものが入っていて、これらの嗜好品のせいで「HSP」の症状が強くなっているのでは?と思えてきました。カウンセラーさんに聞くと

糖質を取りすぎたからHSPの症状が出たというより、脳にストレスを感じやすいから甘いものを食べてしまうのかもしれません。ちょっとしたことで悩んだり、やるせなくなってしまう人はお酒で解消しようとする傾向もあります。適度な睡眠と運動が大切です」

とのこと。規則正しい生活、野菜中心の食事、適度な運動など基本的なことを心がけたいです。

「鈍感さん」の生き方に学ぶ

「繊細さん」としての自分を自覚して生きていたら、正反対の「鈍感さん」が気になってきました。今、「鈍感さん」の代表といえば、話題の小室圭さん(&母親)……。眞子様との婚約内定会見でも自分の性格について「単純で鈍い方」と表現していました。

世の中からあれこれいわれてもアメリカに行って悠々と留学し、お金を用立ててもらった恩義もスルーして、秋篠宮様が求められた「それ相応の対応」もしないまま結婚に突き進んでいます。そして銀行員時代にも、相手に断らず人のデスクの横で書類整理を始めたとか、大切な書類を紛失しても知らんぷりだったとか、細かい「鈍感さん」エピソードには事欠きません。あそこまで鈍感に生きられたらどんなにラクだろう……と、羨ましく、その嫉妬の念でついいろいろ物申したくなってしまうのかもしれません。きっとヤフコメとかにすごい勢いでコメントを書いている方々も同じく「繊細さん」タイプなのだと思われます。「鈍感さん」の小室さんのことが気になりすぎている時点で小室さんにエネルギーを奪われてしまっていることに気付きました。「繊細さん」と「鈍感さん」、お互い自分にないものを認め合い、平和に共存できると良いのですが……。敏感になりすぎたら、「鈍感さん」の生き方を少し見習いたいです。

今月の教訓
人にエネルギーを奪われやすい「繊細さん」は、「鈍感さん」の図太さも時には参考に……。

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辛酸なめ子(しんさん なめこ)
1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。 漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『霊道紀行』(角川文庫)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、最新刊に『女子校礼讃』(中公新書ラクレ)がある。
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