見出し画像

岩田健太郎「PCRの『陽性』『陰性』と、ウイルスが『ある』『ない』は、同義ではありません。」


大好評発売中の岩田健太郎著『丁寧に考える新型コロナ(光文社新書)。
ファイル2「検査について」から一部を公開いたします。


画像4


PCR検査とは?――定量的検査、定性的検査がある


PCR検査とは、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)の略で、ウイルスの遺伝子を見つける検査です。定量的な検査と、定性的な検査があります。

定量的な検査とは、ウイルスがたくさんいますよ、とか、少ししかいませんよ、という「量」を測る検査です。

典型的なのはエイズの原因であるHIVのPCRです。

どうして定量的なのかというと、HIVにおいては「ウイルスの量」が病気の重大さと深く関係しているので、ぼくらはウイルスの量を知りたいのです。

残念ながら、HIV感染は一度起きると、一生ウイルスを体から除去することはできません(稀有な例外はありますが、基本的にはできません)。

だから、感染が確定したら「ウイルスがいるか、いないか」は我々の知りたい命題にはならないのです。知りたいのは「どれだけたくさん、いるのか」です。

HIVが検査で10万コピー以上見つかりましたよ、と分かると、それは病気が重大になりそうなことを予兆しています(ちゃんと治療しない限り)。

これが1000コピーくらいになると、だいぶましだな、と判断します。

1つも見つからないと、これはウイルスがなくなった、という意味ではなく、検査では見つけられないくらいに減りましたよ、という意味になります。この場合には、治療はかなり上手くいっているので患者さんは元気になる、なっている可能性が高いです。

画像4


一方、新型コロナウイルスに対して行うPCRは、基本的に定性検査です。つまり「陽性」「陰性」という2分割です。あるのか、ないのか。それだけを問題にしています。

おっと。実は、PCRの「陽性」「陰性」と、ウイルスが「ある」「ない」は、同義ではありません。そこからスタートする必要があります。

そもそも、コロナのPCRは「本当は」定性検査ではなく、定量検査なのです。

えー、そこからちゃぶ台ひっくり返すのー⁉ という文句が来そうですが、事実です。

画像4


PCRは、ウイルスの遺伝子を機械の中で増幅(増やす)して見つけます。

古典的なPCRは、増やした遺伝子を電気泳動というもので動かして、動いた場所から検査結果を出していました。

現在主流のリアルタイムPCRは、増幅した遺伝子に蛍光を発する試薬をくっつけ、分光蛍光光度計を使って測定するものです。この光の強度をウイルスの遺伝子の量として解釈するのです。

もともと採った検体にウイルスがたくさん入っていれば、それほど増幅しなくてもウイルスは見つかります。

少なければ繰り返し増幅してウイルスを見つけます。

光度計のノイズ(ベースライン)よりもずっと高い、ウイルスがいるなと判定できるだけの蛍光光度を検出する基準となる値を閾値(いきち:Threshold line)と言います。ここより高ければ陽性ってことです。

この閾値を超える蛍光シグナルを出すために何回遺伝子の増幅をしたか。

これが閾値まで行くサイクル(Threshold cycle)であり、Ct値として表現されます。

CTといっても、画像のCTとは関係ありません。10回のサイクルで陽性になればCt値は10だし、30回のサイクルで陽性になればCt値は30です。

ですから、すでに申し上げたとおり、新型コロナウイルスのPCRも実は定量検査なのです。

ただ、閾値を超える、超えないで「陽性」「陰性」と判定はしていますから、ここで「定性」検査に変換しているのです。

ということは、実際には「陽性」結果にもいろいろあり、「めっちゃ陽性」とか「ギリギリ陽性」とかがあるのです。

画像2


要するに、新型コロナウイルスのPCR検査も、連続的な概念、定量的な検査なのです。

それを、「身長166㎝以上は高身長」「166未満は低身長」と無理やり定義して、そこを境に2つのカテゴリーにぶった切っているわけです。

ちなみに、なんで166なのかというとぼくの身長がそうだからです。異論は認めません。

そうすると、同じPCR陽性でも、ウイルスの量がとても多い「露骨に陽性」な場合と、ウイルスの量が少ない「ギリギリ陽性」な場合がでてきます。

身長190㎝のモロに高身長な場合と、166㎝の「微妙に高身長」な場合があるように……自分で言っててもう嫌になってきましたが(笑)。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

丁寧に考える新型コロナ_帯付_RGB

第2章(「ファイル2」)のその他の項目は、以下の通りです。

ファイル2: 検査について

◆検査は医者でも誤解だらけ
◆まずはPCRから――定量的検査、定性的検査がある
◆PCR検査は間違える
◆「感度」とは何か
◆「特異度」とは何か
◆偽陽性、偽陰性
◆大事なのは患者の属性――「事前確率」
◆流行のない土地でルーチンの検査での「陽性」の意味は?
◆検査をするか、しないかの判断――入院患者には全員PCRを、の有害さ
◆コロナの感染性――無症候の場合
◆症状のある人はいつ感染性を失うか
◆抗原検査
◆抗体検査の意味
◆抗体検査の弱点
◆検査について、の補足――大事なのは状況判断
◆CTを撮ればよいのか?
◆PCRよりもCTよりも大事な「患者のコトバ」
◆丁寧な病歴の聴取は、感染症診療の基本 

光文社新書『丁寧に考える新型コロナ』(岩田健太郎著)は全国の書店にて発売中です。電子書籍版もあります。

↓↓↓ 以下の記事もどうぞ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

よろしければサポートをお願いいたします。もっと読んでいただけるコンテンツを発信できるように、取材費として大切に使わせていただきます!

アランちゃんも喜んでいます!
34
新刊、イベント情報ほか、ぜひ手にとっていただきたい既刊本のご紹介や注目の連載をアップしていきます。お気に入りの光文社新書について書かれたnoteをまとめたマガジン「#私の光文社新書」は、アイコンのキャラクター「アランちゃん」ともども投稿をお待ちしています!
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。