【動画】指揮者・伊藤玲阿奈が選んだクラシックの7つの名曲
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【動画】指揮者・伊藤玲阿奈が選んだクラシックの7つの名曲

ニューヨーク在住の指揮者・伊藤玲阿奈さんの話題のデビュー作『「宇宙の音楽」を聴く ~指揮者の思考法』には、各章の後にコラムがはさまれています。このコラムでは、その章にかかわる内容をクラシックの楽曲からも理解できるように紹介しているのですが、その楽曲を実際に視聴できるYouTubeの再生リストが用意されています。

今回、そのコラムで取り上げられた、伊藤さんが選んだクラシックの楽曲を、再生リストからの動画と、伊藤さんご自身による簡単な解説を付けてご紹介いたします。ぜひ本書を片手にご覧になってください。理解が深まり、きっと楽しめることでしょう!

動画① 再生リストについて ~伊藤さんの公式YouTubeチャンネル『光文社新書「宇宙の音楽」を聴く』

伊藤さんの公式YouTubeチャンネルに設けられた再生リスト「光文社新書『「宇宙の音楽」を聴く』」にある最初の動画は、ご自身によるご挨拶となっています。

動画② ギヨーム・ド・マショ―作曲『我が終わりは我が始めなり』

動画②は、第1章の章末コラムでとりあげた、中世フランスの作曲家ギヨーム・ド・マショー(1300頃~1377)の合唱曲『我が終わりは我が始めなり』。曲の中間まで来たら、それまで歌ってきた音符をそのまま逆向きに歌うという、まるで中間に鏡を置いたような作曲になっています。それでいて、ちゃんと一つの楽曲として成り立つのですから、まるで音のパズルです。こんな曲を作ったのは、当時ヨーロッパ人以外にはなく、本書第1部(第1章&第2章)のテーマとなっている彼らの特殊な思考回路がよく現れています。

この動画では、実際の楽譜をなぞりながら演奏していますので、その数学的・理性的に並べられた音符の構造を確認しやすいと思います。ただし、700年前の音楽ですから、今の私たちにとっては退屈かもしれません。1〜2分ほど聴いたら次に進まれても結構です。

動画③&④ ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲『ロ短調ミサ』より「クレド」冒頭の2曲

動画③と④は、第2章の章末コラムに選んだ、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750)の『ロ短調ミサ』より「クレド(我は信ず)」冒頭の2曲です。

現在では“音楽の父”とまで尊敬されるバッハも、本書第4章でふれられるように、当時は芸術家というよりも宮廷に仕える公務員のひとり。後半生をライプツィヒ市の音楽監督として過ごし、市内にある主要な教会(プロテスタントのルター派)で行われる礼拝音楽はじめ、さまざまな実用的な音楽を公務として作曲しました。

この動画は、生前のバッハがライプツィヒで勤めた教会のひとつである聖トマス教会での演奏です。実際にバッハが礼拝中に指揮をしながら演奏もしていた場所を使っています。(信徒全員で歌う讃美歌をのぞいて)女性が聖歌隊として歌えなかった当時の習慣にそって、ソプラノパートは声変わり前のボーイソプラノによって歌われています。

このふたつの小曲の中に含まれる驚愕すべき内容と作曲テクニックについては、本書の該当コラムをご参照ください。

動画⑤ 滝廉太郎作曲『憾』

動画⑤は、『荒城の月』などを書いた日本最初の作曲家といえる滝廉太郎(1879~1903)の絶筆と考えられているピアノ曲『憾(うらみ)』。近代西洋の強さ、「自由」の発展、明治維新の成功の秘密などを語った第3章の章末コラムに対応しています。

廉太郎ゆかりの大分県日出町の公式チャンネルで、作曲者の経歴や、『憾』についてのキャプションも入っています。これを選んだのは、丁寧なキャプション説明もありますが、なによりもピアノを弾いていらっしゃる佐藤麻美子さんの演奏が素晴らしいからです。

コラムでも述べました、死神が鎌を振り下ろすような最後の一音をぜひ演奏でお確かめください。同時に第3章のテーマ――このような心を震わせるクラシック音楽を、西洋化まもない東洋人が書けることになった理由と意義――も、ご確認できると思います。

動画⑥ ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲『バガテル 変ホ長調 作品126-3』

動画⑥は、第4章後半の主人公であるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)が最晩年に孤高の境地で書いた天国のような曲、『バガテル 作品126‐3』です。

クラシックの専門家やピアニストにもあまり知られていない小曲ですが、現世ではなく想像の世界でのみ幸せを味わうほかなかったベートーヴェンが、耳の聴こえない静寂のなかで書いた安らぎの世界。ベートーヴェンの世界観については、私が書いた記事もぜひご参考ください。

この動画は、英国のピアニスト、マイラ・ヘスによる1957年の古い録音です。音質はイマイチではあるものの、弱音の音色の繊細さが他を圧倒していたので選びました。私の想像するベートーヴェンの心象風景に近い音です。

動画⑦ ジョン・ケージ作曲『4分33秒』

動画⑦は、東洋思想のなかでも特に荘子に影響を受けていたジョン・ケージ(1912~92)の代表作『4分33秒』。予備知識がなければ、まったく人を喰った作品にしかみえませんが、第5章を読まれた後に“聴く”ならば、いかがでしょうか?

動画は、世界最高のオーケストラといわれるベルリン・フィルハーモニーが、今年の11月にコロナ禍による観客制限なかで“演奏”したものです。ここでは指揮者がストップウォッチは持たずに、指揮している振り(?)をしています。また、コラムでも言及したペーター社の楽譜も写り込んでいます。

動画は4分33秒ないので、途中を省略していることになりますが、ご覧になれば分かるとおり無理もありません。これではまったく退屈です。楽員も所在なさげですね。残念ながら、保守的なクラシック界ゆえか、近年この曲が“演奏”されるときは、いつもこんな調子で出演者が真面目に沈黙しているだけになっています。観客も、「お約束」のように最初と最後で礼儀正しく拍手をします。仕方ないこととはいえ、これではケージの意図とは離れてしまっていることは、拙著を読んで頂いた皆さんにはもうお分かりになると思います。
ちなみに、『4分33秒』を世に送り出してから8年ほど経ったケージが自作を“演奏”しているテレビのクリップがあります(↓↓)。『Water Walk』というタイトルです。観客に笑われても、何食わぬ顔で伝統的な感覚では雑音とされる音を鳴らしていきます。笑う観客をしり目に、ケージは何を思っていたのでしょうか。

動画⑧ ロベルト・シューマン作曲『トロイメライ』

最後の動画⑧は、私の好きなロベルト・シューマン(1810~56)の超有名曲『トロイメライ(夢)』です。なぜこれを取りあげたのかは終章コラムでお確かめ頂くとして、この演奏は私自身のものです。今年(2020年)、コロナウイルスによるニューヨーク市のロックダウンによって、人との交流も絶たれ、生活も激変するなかで、気分転換をするために自宅の電子キーボードをつかって演奏したものです。音質も悪いですし、これより上手な演奏はいくらでもあります。それでもあえて本書の再生リストに含めることにしました。つたないながら、私の想いが伝わるなら幸いです。

伊藤さんからのメッセージ

以上、拙著『「宇宙の音楽」を聴く』の章末コラムに選んだクラシックの楽曲のYouTube再生リスト動画に、かんたんな解説を付けてみました。

この本は前回に公開された「はじめに」からお分かり頂けるように、自己変革を全体のテーマに掲げていますが、もちろん私の専門であるクラシック音楽の話題もよく出てきます。章末コラムはそのひとつで、章ごとのテーマをクラシックの楽曲を聴いてより深く理解するという試みをしました。

今回あげた動画は、本編を読むとオモシロさが倍増します。ぜひ本をお手に取って頂ければ光栄です。

『「宇宙の音楽」を聴く』「はじめに」はこちら

著者プロフィール

伊藤玲阿奈(いとうれおな)
1979年、福岡県生まれ。指揮者。ジョージ・ワシントン大学国際関係学部を卒業するも、音楽家になることを決意。ジュリアード音楽院とマネス音楽院の夜間課程にて学び、アーロン・コープランド音楽院で修士号を取得。2008年、ニューヨークにてプロデビュー。以後、カーネギーホールなど世界各地で指揮しつつ、政府や国際組織との音楽イベントもプロデュース。14年、「アメリカ賞」(プロオーケストラ指揮部門)を日本人初の受賞。武蔵野学院大学スペシャル・アカデミック・フェロー。タトル・モリ エイジェンシーの note「翻訳書ときどき洋書」にて「ニューヨークの書斎から」を連載中。ニューヨーク在住。本書が初の著書。


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