【開幕前診断】2021年シーズンの巨人軍の課題と展望(投手編)
熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
今回は、開幕前に今一度巨人軍の戦力をチェック。既存の主力はもちろんのこと、新戦力や若手に求められる役割を考察します。
エース菅野智之の残留が「最大の補強」
MLBに移籍する話が現実味を帯びていた菅野智之だが、年明けに巨人軍残留が決まった。昨シーズンに13連勝を含む活躍をみせてリーグMVPに輝いた実力はもちろん、唯一無二の存在感も含め、菅野の残留には大きな価値がある。キャリアを通して8年間で7度の二桁勝利を挙げ、うち5年でタイトルを獲得している図抜けたハイパフォーマンスを今季も大いに期待したい。不調だった2019年でさえその中で二桁勝利を記録するなど、ルーキーイヤーから格別な力を持っている菅野の残留は当然、「最大の補強」だったと言える。
現在の巨人軍の投手陣は若手から中堅までの世代が増えており、彼らに対して「生きる教科書」としての役割も求められる。巨人投手陣は、菅野とトレーニングをしていく中で吸収できることは少なくないはずだし、精神的支柱として大きな存在であることは間違いない。
昨年以上の熾烈な先発ローテーション争い
巨人は昨年オフにDeNAから井納翔一を獲得し、ドラフトでも投手を中心に指名・獲得したが、これはおそらく菅野が移籍することを見越しての動きだったのだろう。菅野が残留したとはいえ、投手陣の層に厚みが増すのはメリットしかない。エース菅野を中心にローテーションを回していくことは確実だが、昨シーズン9勝を挙げた3年目の戸郷翔征や8勝を挙げたエンジェル・サンチェスも先発陣の「当確」に近い存在だろう。
加えて、昨シーズンの後半戦から活躍を見せた畠世周は、課題である耐久性さえ克服すれば、ポテンシャルはかなりのものがあるので活躍が期待できる。
戸郷、サンチェス、畠の3投手は、スラット+スプリット(チェンジアップ)を駆使した投球スタイルを確立しており、菅野の脇を固めることでセ・リーグトップクラスの先発陣を形成できるのではないだろうか。
新加入の井納は、表ローテーション級レベルでは勝ち星の計算が難しいものの、7回ぐらいまで試合を作れる能力は高く、シーズン通してローテーションを守り切れる存在としても重宝されるはずだ。
その他の先発候補を見ると、昨シーズン5回までは試合を作ることのできていた今村信貴や、復活を目指す高橋優貴の両左腕にも期待ができる。同じ左腕で見ると、5回~6回の試合中盤まで試合を作れて短期決戦向きだったC.C.メルセデスが出遅れていることが懸念材料だ。MLBで先発経験のあるルビー・デラロサの先発転向も、場合によっては視野に入れてもいいのではないだろうか。
総合すると、昨シーズンよりも勝ち星やイニングが計算できる投手は多く見通しが立つ。バッテリーを組ませる捕手や課題だった運用の改善次第では、昨年よりも勝てるのではないだろうか。
ブルペン陣は層の厚さを保てるのか
昨シーズン途中までは12球団屈指のブルペン陣を確立していた巨人だが、今シーズンは立て直しと運用の改善が急務である。
新守護神を任されそうな中川皓太は、かつての山口鉄也のように、レバレッジが効く場面での登板を期待していたが、選手生命や耐久性を考慮した上での抑え固定なのだろう。中川を9回に固定する前提となると、それを逆算した上での勝ちパターンの確立は急務だ。
8回に右投手を置くなら鍵谷陽平、または大竹寛が無難ではないだろうか。7回には高梨雄平を置き、大江竜聖や馬力のあるチアゴ・ビエイラといった投手を上手く起用することも必要になる。時には、短いイニングで力を発揮するメルセデスや、高橋優貴の中継ぎ起用を検討してもいいのかもしれない。
昨シーズンの中盤は、ブルペン陣のぶ厚さを武器に勝ちを拾った試合が多かった。しかし、開幕当初から一貫して懸念していた、勝ちパターンや接戦試合に登板する「A級投手」と、大差の展開で投入する投手の起用法に問題があった。
高梨や大江、鍵谷といった勝ちパターン級の投手を、大差のついた試合でも起用し続けたことによって、一時的に彼らの状態が落ちてしまったのが一例だ。点差、場面ごとに投手起用をより丁寧にマネジメントし、「勝ち方」まで意識していくことが、今シーズンのリーグ制覇ひいては日本一に向けての鍵となる。
若手投手陣への期待値
最後に若手投手陣への期待も書いていきたい。昨シーズン、個人的にも注目選手として取り上げ、一軍に帯同した大田龍、直江大輔、横川凱、そして井上温大といった若手投手は今シーズンも期待だ。直江の場合は怪我の影響もあるが、シーズン通して投げられる体力がつけば、化ける可能性もある。
さらに堀岡隼人やドラフト1位の平内龍太、ドラフト4位の伊藤優輔といったルーキーもいい素材を持っている。平内に関しては、キャンプからオープン戦にかけて結果を残し続ければ、開幕ローテーションも夢ではないポジションにいる。育成指名ながらいいものを持っている戸田懐生も、故障で離脱したものの、東海大菅生をベスト4に導いただけの実力はあると言えるだろう。
今シーズンも主力が基盤となり、若武者達が実践を通して台頭する投手陣が見たい。