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オーロラ写真の第一人者が撮影した地球の神秘|田中雅美

本書にはカナダでの20年以上の撮影の記録を収めています。季節ごとに同じ場所からの撮影や一度きりの場所まで、自分が思い立った場所での撮影日誌です。オーロラの神秘的で優雅な姿を、皆さんに感じていただけたら幸いです。

(「おわりに」より)

オーロラ写真の第一人者による地球の神秘をまとめた写真集『全天オーロラ日誌』が発売を迎えました。春、夏、秋、冬……季節ごとに表情を変えるオーロラの姿をご堪能ください。発売を記念して、本書に掲載した写真の一部をお届けいたします。

1 spring[春]

霞のかかる春の日
雪の残る山の上空にゆっくりと漂うオーロラ。
デンプスターハイウェイに
デンプスターハイウェイを走っているとトゥームストーン準州立公園の山並みが見えてきた。
現れたオーロラは美しいとしか言いようのない姿を見せてくれた。
春に見られる最上部の紫
春のオーロラの特徴の一つは、最上部の色が紫に映ること。
この大きなカーテンに、その特徴が良く出ている。
人生で一度だけの出現
オーロラ撮影人生で一度だけしか見たことがない強烈なオーロラ。
とにかく素晴らしかった。
6本のラインがこちらに向かって走るように現れた。
北斗七星を中心にブレイクアップ
春のオーロラの特徴である紫色が良く出ている、
北斗七星を中心にブレイクアップする強いオーロラの姿。

2 summer[夏]

空港と一緒に湖に映り込む
空全体を雲が覆っていたので、撮影をあきらめようかと迷っていると雲が流れ出し、
強いオーロラの登場に思わず声が出てしまう。
高台より下を流れる河に
高台より下を流れる河にオーロラが映る。
遠くでオオカミの遠吠えを聞く。
撮影をしながら映画の主人公になったような気分を味わった。
満月が照らす大きな滝に
大きな滝を満月が照らす。
月明かりで撮影すると、昼間のように仕上がる時間にオーロラが出始めた。
ヘイリバーにある兄弟滝のひとつ、アレキサンドラの滝。
湿地帯を覆うかのような
ドームのような形の中に渦を描くオーロラの舞は、驚くほどの迫力があった。
夏山の上空に
夏山の上空にゆっくりと淡いカーテンを閃かせながら、オーロラが踊る。

3 autumn[秋]


アッパーキャメロン滝にて
アッパーキャメロン滝で画角が240°の魚眼レンズを付け、
夜空全体と滝まで入れ込む撮影。
天空赤く染まる
イエローナイフのオーロラは太陽風の速度や磁場強度とは全く関係なく、
ときに予想外の色で荒れ狂う。
この日のオーロラはこれまでにない色で現れた。
イングラハムトレイルにて
イングラハムトレイルを走っていると、
正面に素晴らしいオーロラが出現したので、慌てて車を停め撮影した。
中秋の名月とブレイクアップ
満月の明かりを受けても全く影響しないほどの力強いオーロラ。
秋色に輝く森の上に
ライトを照り返す木々と空の輝きとで、錦秋のような色彩に。
降り注ぐ赤いカーテン
コロナ系のオーロラには、「夢のレッドコロナ」というパターンで出現するものがある。
このオーロラとの遭遇はそれに近かった。

4 winter[冬]

樹氷と霧氷の世界に
淡いオーロラのカーテンが現れる。
寒さでレンズが凍りだし、星々にソフト効果が出る。
凍りつく森の上で
凍りついた森と2色のオーロラ。
出現前日まで5日間滞在し、ひたすら現れるのを待った、
その甲斐あって珍しいオーロラの撮影ができた。
空を覆う無数の渦巻き
たくさんの渦を巻くオーロラの姿。
なかなかお目にかかれない。
ストームが起こった日
ストームが起こった日の赤と紫のオーロラ。
凍った河の上に立ち、ガマの穂を入れての撮影。
凍る河の上で
凍る河の上でオーロラの出現を待つ。
しばらくすると、とんでもない規模のオーロラが頭上に降り注いだ。
凍りつく森の上で
強いオーロラが出る予報だったので、森の中で待機していた。
かなり時間が経った頃だと思う。
赤と黄色に光るオーロラが出てくれた。
凍りつく森の上で
北側を中心にパノラマ撮影を行う。
オーロラの出る角度は予測の通りで、うまく2枚をつないだ。
ヘイリバーにあるアレキサンドラの滝
厳冬期には非常に厳しい寒さになるがオーロラの出現を待った。
その甲斐あって素晴らしいオーロラとのコラボ撮影ができた。
消えたり出たり明滅する
「脈動オーロラ」という、イエローナイフでは、めったに発生しないオーロラのひとつ。
流れるような動きをせず、消えたり出たり明滅する珍しいオーロラ。
マドレーヌ島の流氷上で
霧が発生した日に撮影すると、中緯度オーロラが出ていた。

著者プロフィール

田中雅美(たなかまさみ)
ネイチャーフォト全般の撮影を手始めに1998年より北緯60度以上の自然撮影を始める。23歳の時、渓流でヤマセミと出会う。その時見た姿に魅了され以後12年間かけて撮影に没頭。そして写真集『山翡翠』(クレオ)を上梓。展覧会は富士フイルムフォトサロンを始めコニカミノルタプラザなど全国で行う。オーロラの写真をアートに仕上げた作品は画廊での展覧会などで発表。都内の画廊で行われた黒澤明の版画「影武者」展覧会にオーロラアートで参加。オーロラの撮影や画像処理についてはアマチュアからプロまでを対象に指導するカルチャースクールを2007年から2010年にかけてNHKや工学院大学で開催。またオーロラ写真集『極北の絶景 パノラマ・オーロラ』(河出書房新社)を刊行。ネイチャー誌や旅行誌、様々なパンフレットやポスターなどへの作品提供も多数。現在、海外取材のほとんどがオーロラのVR360パノラマ写真撮影とリアルタイム動画撮影に関するものである。

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