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タップロボーンランプライス|パリッコの「つつまし酒」#125

スリランカのお弁当

 前々回から、カレーライス飲み、チャーハン飲みと続けてまいりましたこの連載。なんとまさかの、今回もごはんものの話です。これをもって、つつまし酒、令和3年夏のごはん飲み3部作、完結となります。何卒、おつきあいください。
 先日、パラパラパラとある雑誌を眺めていたら、ものすご〜く魅力的なおとりよせの情報に出会いました。それが、南青山に本店、門前仲町と神保町に支店のあるスリランカ料理店、「Taprobone(タップロボーン)」というお店のオリジナル商品「ランプライス」。
 一体どういうものかというと、7種類のおかずとごはんをバナナの葉で包んだスリランカ流のお弁当らしく、色とりどりのおかずたちがなんとも美味しそう。しかも、それらを広げたバナナの葉っぱの上で食べるらしく、家でそんな体験ができるなんて楽しそうにもほどがあるじゃないですか!
 貧乏性で、ふだんはおとりよせなど気軽に手が出せないタイプなんですが、ちょっとこの魅力的なメニューを前にして、試合終了後まで立っていられる自信がない。ひとつ1500円でふたつセット、送料込みで約4000円か。う〜む、すごく安くもないけどすごく高くもない。いや、そもそもこういうものがおとりよせできるというのがありがたいことだし、コロナで外食の機会も減ってるんだし、それを思えば……って、なんだか最近そんな言い訳ばっかりしてる気がしますが、とにかくもう、ダウンです! 負けました! 買います!

バナナの葉っぱを開いてみると……

 数日後、到着した箱を開けるなり、いきなり感動しちゃいましたよね。そこには店主のゴダクンブラ・カピラバンダラさんの直筆(と思われる)「おかいあげ ありがとうございます」の文字が! 異国の文字、しかも日本語なんて絶対に書くの大変だろうに、なんて真心のこもった対応でしょうか。うぇ〜ん、ゴダクンブラさん〜、カピラバンダラさん〜、ありがとう〜!

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大切に食べますね

 ランプライスはひとつずつ、厳重にバナナの葉っぱでくるまれており、これをラップを外さずに電子レンジへ。700wで5〜7分と少し長めに温めることで食材が蒸され、葉っぱの香りがより際立つとのことで、もちろん7分間、じっくりと温めます。

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蒸しあがり

 ところでよく考えたら、スリランカ料理を食べるのは初めてだ。そもそもスリランカってどんな国なんだろう? と、調べてみました。
 スリランカは、インドの南側のインド洋に浮かぶ、北海道の8割くらいの大きさの島国。熱帯雨林から乾燥した平原、高地、砂浜のビーチにいたるまで多彩な風景が広がる国で、その美しさから「インド洋の真珠」とも呼ばれているそう。
 なるほど、そんなに美しい国なんだな。いつか行ってみたいな。というかその前に、タップロボーンの実店舗にもいつか行ってみたいな。まぁ今は、目の前にあるランプライスが僕とスリランカをつなぐ唯一の架け橋。さっそく葉っぱを開いてみましょうか。

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ふわ〜ん

 レンジで温めてる時点で甘くてスパイシーな香りが漂っていたランプライスですが、開いてみるとなんと魅惑的なことか! バナナの葉の、どこか笹の葉にも通じる優しい〜香りと、さまざまなおかずから渾然一体となって立ちのぼる食欲をそそる香り! いや〜、これは楽しすぎるぞ。
 全体をざっくりとほぐし、雰囲気に合うペラペラアルミコップ(インド製ですが)にビールも用意し、いざ、いっただっきま〜す!

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我が家のベランダにスリランカの風が

未知の味の連続

 と、その前に、そもそもタップロボーンのランプライスにおけるおかずの構成はどうなっているのか? 同封のパンフレットをもとにメモしておきますね。これがとにかく、驚きの連続なんです。

・Yellow Rice
ココナッツオイルとスパイスミックスとターメリックで味つけて炒めたバスマティライス

・Chicken Curry
スパイスたっぷりのピリ辛チキンカレー

・Seeni Sambal
揚げたカツオ節、カレーリーフ、玉ねぎの炒めもの

・Malay Pickle
デーツ、パイナップル、玉ねぎ、にんじん、パプリカをスパイスで煮込んだメレーピクルス

・Maldives Fish Sambal
玉ねぎとカツオ節を炒めたジーニサンバル

・Dal Curry
レンズ豆のドライカレー

・Eggplant Moju
ナス、キビナゴ、赤ピーマン、玉ねぎを煮込んだモージュ

・Fried Egg
揚げゆでたまご

 ね? 揚げたカツオ節とか、きびなごとか、え? そういうものも使うんですか!? と驚いてしまうものもあれば、メレーピクルス、ジーニサンバル、モージュ、みたいに、説明されてなおよくわからないものもある。こんなにわくわくできる食体験、そうそうないですよ。
 で、食べかたは、これら好きなおかずをまんなかのライスと混ぜて、よく噛んで味えばいいんだそうで。ではあらためて、いっただっきま〜す!

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ちびちびと崩しながら

 え〜と、これはなんだ? あ、玉ねぎ&カツオ節のジーニサンバルか。うわ、香ばしくって旨味が凝縮されてて、そして素材のせいかすごくほっとするような味だ。こんなの自分でも作れないかな〜。あら、パイナップルが入ってるっていうピクルス、いかにも南国風の甘い味わいが、バスマティライスにすごく合うぞ。そしてチキンカレー、王道の美味しさと食べごたえだな〜!
 ってな感じで、気になったところをあっちへ行ったりこっちへ行ったり、スプーンですくっては食べていると、次々に未体験の味、香りが爆発するような美味しさで、合間合間のビールがすすむ!
 そんなことをしているとどうしてもだんだん、それぞれの境界が曖昧になって2、3種とおかずの味が混ざってくるんですが、そこにまた新しい美味しさが生まれていたりして、最後までずっと興奮しながら食べてましたね、僕。

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このごちゃごちゃも美味しい

 そして食べ終わってから気がついたんですが、あれ? パンフレットの写真、よく見ると手で食べてるぞ! そうか、こいつは手で食べるのが本式か〜。ぜったいそっちのほうがより深く味わえたに違いないよな。う〜む、気づくのが遅かった……。
 こりゃあそのうち、また注文しないと。

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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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