はじめに
まずは本書を手に取っていただいたみなさん、そして本書を買ってくださったみなさん、誠にありがとうございます。
本書のテーマは「お金」です。
およそ世の中には、お金に関する本が山のように出ていますが、基本、種類は2つしかありません。
1つは「お金の増やし方」に関する本です。これはじつにいろいろなタイプの本がさまざまな著者によって出版されています。世の中に出ているお金の本は、そのほとんどがこのタイプ(お金の増やし方)の本といっていいでしょう。
そしてもう1つ、こちらは、数は非常に少ないですが「アンチお金主義」ともいうべきタイプの本です。昔ベストセラーになった『清貧の思想』という本などはまさにこのタイプでしょう。
人類の歴史において過去、何度もバブルが繰り返されてきましたが、バブルが終焉(しゅうえん)を迎えると、いつもこのタイプの本が出てきます。これらはいわば「お金至上主義」に対するアンチテーゼや反省としてしばしば登場してくるものです。
でも本書は、そのいずれでもありません。
じつは「お金至上主義」も「アンチお金主義」も、その根っこは同じなのです。それは「お金の呪縛に陥っている」ということです。
お金の増やし方をひたすら追い求める人はもちろんのこと、「お金がすべてじゃない!」と強く主張する人も、結局はお金の呪縛に陥っている点は同じです。お金を眺めている方角が異なるだけです。お金に縛られているから、「もっと増やしたい」とか、反対に「お金より大切なものがある」と叫ぶのです。
この本は、そんな「お金の呪縛を解くこと」を目的にしています。「たかがお金」なのです。お金を中心にものごとを考えるから、お金の呪縛に陥ってしまうのです。
大事なのはお金ではなく、「モノ」や「サービス」であり、それを提供してくれる「人間」です。世の中の問題はお金が解決するのではなく人が解決するのです。「お金」はそうしたモノやサービスを手に入れるための道具にすぎませんし、問題を解決してくれた人に対する〝感謝のしるし〟として存在しているのです。
そう考えると、お金に対する見方が根本から変わってきます。お金は使ってこそ価値のあるものです。
本書では「人はなぜお金が好きなのか」「お金ってじつは単なる記号にすぎない」、そして「お金は増やすよりも使う方が楽しい」といった話が次々と登場してきます。
まずは第1章、お金に対して人々が持っている勘違いを紐解くところから始めていきましょう。
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以上、光文社新書『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(大江英樹著)より一部を抜粋して公開しました。
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