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水野雅登『糖尿病の真実』の「はじめに」を公開:脱インスリン率100%の医師が問題点を解説

新型コロナウイルス感染症の重症化率が高いことも、糖尿病患者の不安の種となっている。今こそ、糖尿病という疾患にきちんと向き合うためにも、ぜひ読んでおきたい1冊。
光文社新書の新刊、水野雅登著『糖尿病の真実――なぜ患者は増え続けるのかから、「はじめに」を公開する。

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はじめに――糖尿病が怖いあなたへ


自覚症状がないまま進行する



「糖尿病が怖い」という人は、糖尿病について知識がある方です。

多くの人は「自分だけは何ごともなくこのままごまかせる」「糖尿病なんてなんともない」と思いながら、悪化の一途をたどっていきます。

健診などで血糖値の注意を受けても、糖尿病は痛みなどの自覚症状がないため、多くの方は深刻に受け止めることがありません。

「ごはんやパンは食べないとエネルギー不足になる」「お菓子ぐらい楽しみたい」「お昼は時間がないから麺類じゃないと」と理由づけをして、変わらない食生活を続けます。

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しかし、あるとき突然、病院で「著(いちじる)しい高血糖です。このまま即入院治療を開始する必要があります」「今後、一生、インスリン注射はやめられません」「すぐにでも人工透析を導入しなければ、命の保証はできません」などと告げられます。

私もこれまでに、何度もこういった説明をしてきました。

病状が進行し続けると、さまざまな糖尿病の末期状態が起こります。

手足には糖尿病性壊疽(えそ)が起こり、最悪の場合は四肢の切断にいたります。

糖尿病性腎症で腎不全を起こし、人工透析を導入したり、糖尿病性網膜症による失明もあるでしょう。

糖尿病性神経症による手足の末端の知覚鈍麻(どんま)が起こると、手袋や靴下ごしに物を触っているような感じになります。

この時期になると、多い人は1日4回、欠かさずにインスリンを打つようになります。

これほど、全身に多くのことが起きるのが、糖尿病です。

こうした「最後の最後の状態」が起こるまで、自覚症状が出ないのも、糖尿病の特徴です。このため、定期的に健康診断を受けていないと早期には気づけません。

先のように、健康診断で指摘されても、そのまま放置する方が後を絶ちません。意識を失ったり、ガリガリに痩(や)せたりしてやっと受診にいたる、ということもよくあります。倒れて救急車で運ばれるまで、全く放置している場合もあります。

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爆発的に増えている患者数



こうした「自覚症状がない」という事情が大きく影響するために、糖尿病患者は増え続けています。

国内の糖尿病患者数は300万人を突破し、「糖尿病が強く疑われる人」が約1000万人、「糖尿病の可能性が否定できない人」が約1000万人となりました。

合計すると、約2000万人です(平成30年、厚生労働省調べ)。

また、世界でも糖尿病人口は4億6300万人にのぼることが明らかになっています(2019年、国際糖尿病連合の調査より)。2000年の世界の糖尿病人口は約1・5億人ですから、20年で約3倍と、爆発的に増えていることがわかります。

2019年、世界保健機関(WHO)は、世界の死亡原因の第9位は糖尿病であることを発表しました。

しかも、死亡原因上位10位のうち、男性の死亡原因で最大の増加であることも判明し、爆発的に広がりつつあることが指摘されています。

糖尿病よりも上位の死亡原因には、心疾患(1位)や脳卒中(2位)、認知症(7位)などがありますが、どれも糖尿病との関連が疑われる疾患です。

また糖尿病は、現在、世界的に広がる新型コロナウイルスに感染したときの死亡リスクを高めることもわかっています。たとえ感染しなくても、糖尿病患者に不可欠な医療サービスが、パンデミックのために中断される危惧(きぐ)も指摘されています。

糖尿病に罹患(りかん)するリスクは、年々増大していることは、間違いありません。

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なぜ医療先進国で、糖尿病患者は減らないのか


なぜ、こんなにも急激に糖尿病にかかる人が増えているのでしょうか?

そして、医療はどんどん進歩しているのにもかかわらず、なぜその数を減らすことができていないのでしょうか?

そうした疑問を抱くのが自然なことでしょう。

もっといえば、先進医療を誇る日本で「糖尿病患者とその予備軍合わせて約2000万人」という事実は、今、糖尿病患者に行われている治療法が適切ではないせいでは? という疑問が頭をもたげます。

先に答えをお伝えすれば、その疑問は正解です。

今、日本で行われている標準的な糖尿病治療は、大いに問題があるといえます。

そして、もっと問題をはらんでいるのは、血糖値をめちゃくちゃにして糖尿病を発症させる、現代の標準的な食生活にあります。

本書では、その問題について詳しく述べていきます。

同時に、私の患者さんたち全員が「一生のお付き合い」ともいわれるインスリンの自己注射を中止させた治療法の詳細についても、お伝えしていきましょう。

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第1章では現状をご理解いただくために、糖尿病の身体(からだ)で起こっていること、それに対して従来の標準治療がどんなことを行っているのかをお伝えしていきます。

そして、その標準治療でなぜ糖尿病がよくならないのかについては、第2章「糖尿病の真の黒幕、インスリン」で謎解きを行います。

具体的に、これから我々は何を指標にどんなことをすればよいのか? については、第3章の実際の症例と、第4章「タンパク脂質食の実践」でご理解いただけることでしょう。

さらに、現在、糖尿病患者の不安因子となっている新型コロナウイルス感染症に対する対策については、補論で解説を加えましたので、ご興味のある方はぜひお読みいただけたらと思います。糖尿病の改善と、身体の抵抗力を上げること(感染症対策)は、同じ道筋にあることがおわかりいただけることでしょう。

糖尿病を人の身体に引き寄せたものの正体。

そして、インスリン治療以外の糖尿病の対策があり、その対策はインスリン治療よりもはるかにあなたの健康を取り戻すことを、これから見ていきましょう。

それが、「不治の病」といわれる糖尿病を改善させる道筋になるはずです。

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著者プロフィール

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水野雅登(みずのまさと)
1977年愛知県生まれ。杏林大学医学部医学科卒業。医師。日本糖質制限医療推進協会提携医。糖質オフとインスリン・オフを中心とした治療により、2型糖尿病患者のインスリン使用を終了させ、その割合は100%となる。97単位ものインスリン自己注射をしていた患者も安全にインスリン・オフを成し遂げている。現在は治療法などの情報を講演会やブログ、Facebook、Twitter、YouTubeなどで精力的に発信している。糖質オフとインスリン・オフを中心とした治療により、2型糖尿病患者のインスリン使用を終了させ、その割合は100%となる。97単位ものインスリン自己注射をしていた患者も安全にインスリン・オフを成し遂げている。現在は治療法などの情報を講演会やブログ、Facebook、witter、YouTubeなどで精力的に発信している。著書に『薬に頼らず血糖値を下げる方法』(アチーブメント出版)、『医学的に内臓脂肪を落とす方法』(エクスナレッジ)、『糖質オフ大全科』(主婦の友社)など多数。趣味は以前はパソコン製作、現在は最新ガジェットを試すこと、ウォーキング。


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