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物産館はおつまみ天国|パリッコの「つつまし酒」#66

人生は辛い。未来への不安は消えない。世の中って甘くない。
けれども、そんな日々の中にだって「幸せ」は存在する。
いつでもどこでも、美味しいお酒とつまみがあればいい――。
混迷極まる令和の飲酒シーンに、颯爽と登場した酒場ライター・パリッコが、「お酒にまつわる、自分だけの、つつましくも幸せな時間」について丹念に紡いだエッセイ、noteで再始動! 
そろそろ飲みたくなる、毎週金曜日だいたい17時ごろ、更新です。

物産館飲みは楽しい!

 以前「ヤングコミック」という漫画雑誌で「ほろ酔い! 物産館ツアーズ」という漫画を連載させてもらっていました。担当編集さんとふたり、毎月1軒の物産館へ行き、3000円以内でお酒とつまみを調達。それで宴会をするということを20回近くもくり返したんですが、何度やっても最高に楽しいんですよね。以来、物産館大好き野郎となり、それがどこの都道府県の物産館であろうとも、見かければとりあえず吸いこまれてしまうようになりました。
 東京都内でいうと、東京~有楽町~新橋が物産館密集地帯で、特に有楽町駅前にある「東京交通会館」は、ひとつのビルにあちこちの物産館が10以上も入っているという聖地のような場所。物産館ハシゴ酒なんて遊びもできてしまい、楽しいことこの上ありません。ちなみに「マイベスト物産館」は、沖縄県物産館の「銀座わしたショップ本店」。ここはイートインスペースの居心地が最高で、オリオンビールの生や泡盛、揚げたての沖縄天ぷらなどが味わえるのはもちろん、店内で買ったすべての飲食物も、飲み食いしてOKなんですよね。オリオンビールが作る発泡酒「麦職人」が現地価格で買えて気軽に飲める。店内につまみは無限にある。もはや沖縄。もはや飲み屋。銀座界隈でもっとも気軽に飲める、超穴場スポットといっていいでしょう。

「若採りした白桃のピクルス」はなかったものの……

 先日、仕事の関係で、「とっとり・おかやま 新橋館」の近くを通ることがありました。これは何をさておいても寄らざるをえない。というのもですね、「ほろ酔い! 物産館ツアーズ」の単行本の最後で、作中で約150品の物産品を飲み食いしたなかから、個人的おすすめベスト5を発表しているんですけれども、その第1位が、岡山県の「若採りした白桃のピクルス」だったんですよね。岡山の名産品である白桃の、梅干しくらいの大きさで間引きされたもの。それを廃棄せずにピクルスにしたという商品で、これが衝撃だった。食感はカリッとシャクっと、いわゆるキュウリとかのピクルスに近くて、甘味もない。なので、酒のつまみに最高。でありながら、ときおりふわっと、優雅な白桃の香りをちゃんと感じるんですよね。これがたまんないの!
 というわけで、まずは白桃ピクルスを探すも、見つからない。しかたなく店員さんに聞いてみると、今は在庫がないんだそう。時期の関係もあるんでしょうか。っく~、悲しいけれどしょうがない。気をとりなおし、直感でおもしろそうな商品をいくつか買ってみることにしました。選んだのは、小倉屋の「するめ麹漬」、岡山インスタント麺株式会社「クルードスパゲティ式めん」、アカムラサキの焼肉のタレ「元祖 肉どろぼう」、林兼太郎商店の「鳥取産 二十世紀梨 チューハイ」。それから、レジでTwitterアカウントをフォローしたらもらえるとのことでありがたくいただいた「きびだんご」。ちなみに下の台紙には「コロナに負けるな ガンバローおかやま」と書いてありました。締めて税込み1494円。

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知らない食べ物ばっかりの楽しさ!

物産館晩酌は驚きと発見の連続

 その夜はもちろん「とっとり・おかやま」晩酌となりますよ。まずは昔の給食にあった「ソフト麺」に近いようなものに見える、クルードスパゲティ式めんを説明どおりに作っていきます。といっても、フライパンに油をひいて麺を炒め、仕上げに粉末の「トマトルー」を加えてよく混ぜるだけ。あんまりあれこれ具材を足しても逆に雰囲気が出ないだろうと、ピーマンだけ入れてみました。同じフライパンでソーセージを3本炒め、面倒なので同じ皿に盛る。ソーセージに元祖 肉どろぼうをかければ、はい「岡山プレート」の完成です。お酒はもちろん、鳥取産 二十世紀梨 チューハイを。

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今日も天気がいいのでベランダで

 まずはプシュッと梨ハイを開けます。果汁が11%も使われているらしく、かなり華やかな梨の香りがいい。アルコールは4%なのでほぼジュースですが、晩酌の1杯目にはすごくいいですね、これ。
 続いて、タレがけソーセージ。おお、がっつりとニンニクが効き、玉ネギの甘味もしっかりで、かなり美味しいタレだ。嬉しいな~。で、この焼肉のタレってのがなんでもないソーセージに合うんだよな~。「バーベキュー」の味って、つまるところ、ソーセージに焼肉のタレをかけたときの味、みたいなとこありません?
 クルードスパゲティ式めんいこう。お、これは、記憶にあるソフト麺とはけっこう違いますね。プリプリもちもちグニグニした太麺の食感が、ぜんぜん頼りなくなくて美味しい。常温保存できるゆでおきめんでこれはすごいな。かなり好きかもしれない。トマトルーの味は割と控えめなんですが、だからこそいろいろとアレンジもできそうですね。っていうかこれ、麺だけ使って焼うどん風にしても絶対に美味しいと思う! こんどやってみよ~……なんて思ってたら、肉泥棒をかけたソーセージとの境目が麺と混ざりあい、勝手にそれ風になってました。

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予期せぬ焼うどん風ゾーン

 あ、やっぱりうまいぞ! うん、酒おかわり!

 この日はこのあと、デザートにきびだんごをいただいたらそれでだいぶ満足してしまい、するめ麹漬は翌朝、ご飯のおともとして食べてみることにしました。

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見た目からして間違いないですね、こりゃ

 するめ麹漬、漬けこまれてなおぷりっとした食感のイカがたっぷり。麹特有の、むわっと深くて甘いうまさ。そのあとに、きっちりとイカのうまみも感じられる。たまにシャキシャキとした食感が混ざるので何かと思ったら、キュウリも入ってるんですね。いやいや、朝ご飯にはもったいないごちそうでございました。
 なので、今夜はしっかり、お酒と合わせて堪能したいと思います。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)など。Twitter @paricco


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