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地元の商店街に丸投げ晩酌 (つつまし酒 #56)

住宅街のなかにぽつんとある小さな商店街

 相変わらず外出は、家から徒歩圏内にある仕事場と、日用品の買い物にスーパーに行くくらいしかできない日々が続いています。となると、せめて日々の晩酌においては、工夫を凝らしてバリエーションを持たせたい。制限のあるなかであっても、最大限楽しみたい。ってまぁ、この連載、最初っからずっとそんなことばっかりやってるわけですが、今回のテーマは「地元の商店で酒とつまみを調達する」です。

 西武池袋線の大泉学園駅と石神井公園駅の中間あたりの住宅街に、突然ぽつんと存在する小さな商店街があります。特に駅から近いわけでもなく、なんでこんなところに? って感じなんですが、近代的なスーパーやコンビニが今ほど発達する前は、その地域に住む人たちのためだけの商店街って、いっぱいあったんでしょうね。その名も「石泉ショッピング街」。仕事場からそう遠くないこともあり、たまにふらりと散歩がてらに寄って、買い物をしたりしています。
 商店のうちわけは、鶏肉専門の精肉店兼総菜屋が1軒、八百屋が1軒、小さなスーパーが1軒、酒屋が1軒、ラーメン屋が1軒、喫茶店が1軒、小粋な雑貨店が1軒、美容室が1軒、写真館が1軒、洋服のお直し屋さんが1軒、スナックが1軒。そんなところでしょうか。あれ? ものすごく閑散としてるイメージがあったけど、書き出してみるとけっこういろいろあるな。ここだけで生活が完結してしまうほどに。仕事を終えたら、石泉ショッピング街へレッツゴー!

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どこか郷愁漂う、石泉ショッピング街

肉屋→八百屋→スーパー→酒屋

 まずは僕がもっともよく利用している鶏肉専門の精肉店「藤木商店」へ。ここの「レバーのからあげ」がつまみに最高なんだよな~。と、店頭の加工肉製品コーナーをのぞきこむも、残念ながら売り切れ。っていうか、夕方だからかけっこう棚がスカスカになっちゃってますね。でも心配は無用。なぜなら、注文をするとその場で焼いてくれる焼鳥は潤沢に残っているから。全種類1本ずつお願いし、棚に残ってた「チキンロール」っていうのも買ってみようかな。ぜんぶで1080円。
 焼きあがりを待っている間、お隣の八百屋さん「清水青果」に寄ってみましょう。面目ないことに、ここで買い物をするのは初めてかもしれない。店頭に、パックに入ったお漬物がいくつか並んでおり、それを眺めていると奥から店主さんが出てきて「漬物ならぬか漬けもあるよ。自家製だから美味しいよ」と教えてくれました。それは耳寄り情報! 大根、ニンジン、キュウリ、カブ、迷った末に全部買ってしまったわけですが、トータルで380円と激安。これからはちょくちょく買いにきますね。
 藤木商店で熱々の焼鳥を受け取ったら、小さな店内に厳選された日用品が並ぶ「ファミリーショップ しおや」へ。ここ、自家製のお弁当や惣菜が魅力的なんですよね。カニカマの乗ったボテサラと、中華風の春雨サラダにしてみましょうか。合わせて561円。
 最後は看板猫ちゃんのいる酒屋「三由酒店」へ。コンビニなどではあまり見ない「ハイサワー缶」があるじゃないですか。久しぶりに飲みたいな。と、購入。160円。

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こんなラインナップになりました

春雨サラダが大ヒット

 家に帰ったら、さて晩酌を始めましょう。並べてみると、家族で食べるとはいえけっこうな量で、なんだか豪華すぎるくらいになっちゃったな。あぁ楽しい。
 まずはぬか漬けからいってみます。キュウリをポリポリ。お、この乳酸発酵のうまみ。家庭的な味わい。ほんとにうまい。次は大根をポリポリ。あら、キュウリは若干浅漬かりだったけど、こっちはかなりしっかりだ。すっぱさがいいなー。ニンジンって、ぬか漬けのなかでもいちばん好きかもしれません。力強い歯ごたえと甘みがたまらん。最後はカブ。うわー、見た目ほとんど大根と一緒なのに、こっちはめちゃくちゃジューシー。ごちそうだなー。
 おっと、味が気になってひととおりぬか漬けだけを食べ続けてしまい、飲むのを忘れてた。ハイサワーぐびぐび。っく~! 甘さ控えめのスッキリ味でこの季節にぴったり!
 焼きたての焼鳥はそりゃあうまいに決まってます。やっぱり秘伝のタレが決め手なのかな。家庭では絶対に出せない味だよなぁ。照り焼き風のチキンロールも美味。
 しおやのお惣菜いきましょう。まったりと甘めのポテサラは、ソースちょいがけでつまみ力アップ。そして春雨サラダ! これが大ヒットでした。春雨がムチムチぷりぷりでしっかり食べごたえがあって、具沢山で、冷やし中華的な味つけもバッチリ。これはリピート決定だな。

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大満足の晩酌に

 なかなか外食に行けない昨今、たまにはこんな晩酌も、気分が変わって楽しいですね。何しろ楽だし。あって良かった石泉ショッピング街。今後ともお世話になります!

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)など。Twitter @paricco


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