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【33位】アウトキャストの1曲―あらゆるものを踏み越えて、「ポラロイドも振って」パーティーは止まらない

「ヘイ・ヤ!」アウトキャスト(2003年9月/LaFace • Arista/米)

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※こちらはヨーロッパ盤CDシングルのジャケットです

Genre: Soul, Funk Rock
Hey Ya! - Outkast (Sep. 03) LaFace • Arista, US
(André 3000) Produced by André 3000
(RS 182 / NME 18) 319 + 483 = 802 
※33位と32位の2曲が同スコア

ゼロ年代を回顧する音楽ドキュメンタリーがあったならば、そのなかで「かならず」この曲が流れる瞬間がなければならない――そんな忘れがたきパーティー・チューンにして、あらゆる種類の音楽ファンが「大好きになった」一大キャッチー・トラックがこれだ。

当曲は、米ジョージア州はアトランタ出身のヒップホップ・デュオ、アウトキャストの5枚目のスタジオ・アルバム『スピーカーボックス/ザ・ラヴ・ビロウ』に収録。これはダブル・アルバムで、メンバーそれぞれのソロ・アルバムとして1枚ずつが企図されていた。「ダーティ・サウス」のタフなヒップホップ・サウンドを基調とした、ビッグ・ボーイによる『スピーカーボックス』と、アンドレ3000によるサイケデリック・ロック風味でバンド・サウンド調のナンバーが多い『ザ・ラヴ・ビロウ』がそれで、当曲は後者に収録されていた。だから実質的には、アンドレのソロ・ナンバーだと言える。

思わず「乗せられてしまう」このビートは、プリンス直系だ。彼のヒット曲「リトル・レッド・コルヴェット」なんかに顕著なあのビートに、オルタナティヴ・ロック(が60年代風を模した)サウンドが加わる。ゴスペル風味もある。そしてあの、強力な強力なフック(ヘーーーーーイ・ヤーー)だ。「シェケ、シェケ(Shake it, shake it)とあおられるリフレインでは、必殺のこのフレーズが出る。「ポラロイド写真みたいに振るんだ!(Shake it like a Polaroid Picture!)」――「ヒップホップ通過後の」感覚でバンド・サウンドに挑むことで「ロックとファンクとエレクトロ音楽そのほか」の境界線を、あっという間にすべて踏み越えてしまったことから生じた快楽が、この1曲のなかに充満している。

とそんな、なにもかもが「パーティー」に奉仕しているような曲の詞は、じつは「愛の危機にある」主人公のひとり語りとして設定されている。でも彼は、ひとり悩むと「死んじゃいそうになる」ので、なんと突然「神に感謝する」。だって神様は「お母さんとお父さんを、ずっと一緒にいさせている」から。そして自らの問題に対処することは「ひとまず先送り」にして、さあ、いまから思考停止しますよ!――と宣言しているような仕掛け、すがすがしいまでの逃避感覚が最初にある。これが当曲を大ジャンプさせたものの正体だ。

ビルボードHOT100では首位を9週。全英では3位ながら、各国で首位獲りまくり。豪、カナダ、スウェーデンでも1位。ノルウェーでは1位を7週、独占した。アルバムのほうも大ヒット、アメリカでは首位スタートで、初週だけで51万枚を販売した。

(次回は32位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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