新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

岩田健太郎『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』あとがき&目次を先行公開


こんにちは、光文社新書編集部です。
このたび、神戸大学の岩田健太郎教授の新刊ぼくが見つけたいじめを克服する方法――日本の空気、体質を変えるを刊行することになりました。

新型コロナウイルス感染症の大流行で、日々、さまざまな情報が伝えられています。そんな中、多くの感染症の専門家のご発信とともに、岩田先生の精力的な分析・発言・主張にも注目が集まっています。

今回の書籍は、岩田先生が数年にわたって構想されていたものです。昨年末にはほぼ書き上げられており、年末に別の企画の相談でお目にかかった際に、受け取った原稿でした。

年が明けて、今回のコロナウイルスの流行が拡大し、みなさんもご存じのクルーズ船の告発がありました。その渦中に加筆していただいた部分もありますが、大半がそれより前に書かれたものです。

お読みになると、岩田先生の言動が、以前から一貫したお考えのもとになされていることが伝わるのではないかと思います。ご自身のさまざまな経験、失敗、そして努力、学びから得たものを、読者に隠さず、漏らさず伝えようとしてくれています。

他の著作でもそうですが、岩田先生の本には繰り返されるフレーズがあります。

「不寛容に対してだけは不寛容であってよい」
「他者への敬意」
「アウトカムが大事」
「プランAだけでなくプランBを」
「空気は読めないふりをしろ」
「大事なのは事実であり、願望ではない」
「意思決定はファクトを根拠に」
「首尾一貫していないことにかけては一貫していなければいけない」

etc.……。

本書にも、登場します。いじめの本でありながら、それだけにとどまらない。

このコロナの流行の中でも、いったい何を判断の基準にしたらよいのか、
大切にすべきものは何なのか、日本に足りないものとは……。
たくさんのヒントが得られる本だと思います。

発売を前に、あとがきの一部と、目次を公開いたします。
ぜひ、お読みください。

(写真:野澤亘伸

画像3



あとがき


本書をお読みいただいた皆様はお気づきだろうが、ぼくは空気が読めない。忖度(そんたく)をしない。

空気が読めない、というのは実は必ずしも正確ではなく、「読めていても読まないふりをする」ことも多い。空気がものごとを決めるのは不健全だと思っているからだ。だから、わざと読めないふりをする。

このタクティクス(戦術)が上手く機能することもあるのだが、まったく失敗してしまうこともある。冒頭のダイヤモンド・プリンセス号などは、完全に上手く行かなかった事例だ。やはりある程度の根回しとか、空気を読むとか、小狡い処世術は大事なのだ。

画像3


大事なのだが、そのような根回し、処世術が苦手な人たちもたくさんいるとは思う。ぼくみたいに。

そういう人だって、いじめられずに楽しく生きていく権利はある。ぼくはそう思う。あるいは、ぼくみたいなタイプじゃない人でも、たとえどんな理由があってもいじめてよい理由にしてはならない。

本書で何度も申し上げているが、これがあったらいじめてよい、という理由は一つもない。そして、「いじめてもいい理由」の存在を認めている限り、日本からいじめは絶対になくならない。大人の世界でも、子供の世界でも。


結局のところ、ぼくがYouTubeにダイヤモンド・プリンセスの実情をアップしたのは、「理不尽に泣き寝入りはしない、絶対にしない」という思いがあったからだと思う。

もちろん、ダイヤモンド・プリンセスの感染問題を看過してはいけないからでもあるのだが、同時に、理不尽を看過すれば、必ず理不尽を正当化するエートスでその社会は満たされてしまう。そう思ったのもまた事実だ。

たとえどんなに沢山の人達からバッシングにあおうと、理不尽は許容しない。炎上など、物の数でもない(また、こんな事を言うから怒られるんだけどね)。

理不尽を許容する側に立つ人は、いざとなったら困っている人を平気で見捨ててしまう人だ。とくに、見捨ててもいいようなもっともらしい理由があるときはなおさらそうだ。

ぼくは、医療者とは要するに「見捨てない人」だと思っている。どんな理由があっても、見捨てない。それが医療者の医療者たる「存在理由」だと思う。

見捨てないこと。それがいじめないことと同義なのだ。

(後略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


画像2


目次


「はじめに」の前に

はじめに


1.いじめに対峙し、いじめを克服する

学会会場から消された著作
第一歩は事実の確認から
しかれていた箝口令
第三者委員会による調査、そして謝罪
いじめは絶対に看過してはいけない
矮小化したり、なかったことにする大人たち
いじめっこは特別ではない
具体的な対応法
 1.事実確認、事実確認、事実確認
 2.証拠保全
 3.他者への敬意
 4.オープン攻撃

2.大人の世界のいじめの世界

貴ノ岩と、貴乃花親方へのいじめ
世間やメディアに再起不能にされた日馬富士
いじめの正体とは「空気」
SMAP元メンバーに対するジャニーズ事務所のいじめ
業界のいじめは減るはず――ソーシャル・メディアでの暴露の可能性
疑惑のもみ消しも困難に
寛容には寛容に、不寛容には徹底的に不寛容に
かつてのように「干せ」なくなった芸能事務所
巨大組織によるいじめには「スキル」で戦う
不寛容を許すと、多様性を萎縮させる
「俺たちの常識」が差別を助長する
配慮のフリをした差別、いじめ
「好ましくない行為」を罰する権利はぼくらにあるのか
もっともらしい理由があると集団でタコ殴りにする社会
患者は医者に噓をつく権利がある
叩ける人を叩く「エンターテインメント」
芸能界のいじめ体質との訣別にはシステムを変えよ
「叩いてもよいのは誰か探しゲーム」はそろそろ辞めにしよう
安全な場所で、叩けそうなやつを叩く――いじめの加害者の卑怯さ


3.願望より、事実を

厚労省のいじめ体質
お役所にペコペコしないと「いじめ」にあう
事実の認識と共有を大切にするオランダ
官僚たちも悩んでいる――省庁もいじめ体質
世界を知り、非常識を非常識と言う
子供のときのいじめ体験は、大人になっても大きなインパクトを持つ
「いじめっ子は人生に失敗しやすい」というデータ
いじめる行為だけは、やめておけ
いじめを定義しても意味がない
「ストックホルム症候群」の可能性も視野に入れる
事実が大事。意図は関係ない
宗教はいじめを救わない
キリシタン大名による日本人奴隷の売買
宗教はしばしば、不寛容の源泉となる
自殺する権利はある。問題は自殺の原因だ
自殺に追い込む「いじめ」こそが対策のターゲット
「責任」と「徹底」はいじめに無力
研修医のミスの責任はどこにあるのか?
処罰は、医療者に事実と向き合わなくさせる
結果を求めるなら、真相究明と情報開示が大切
傍観者は、いじめの加害者ではない


4.空気ではなく、科学を

子宮頸がんワクチンはなぜ推奨されないのか
メディアが騒ぐと禁止する
医学・医療において、大事なのは空気より科学
抗生物質の「原則禁忌」というフェイク
意思決定はファクトを根拠に
事実と欲望
「間違えない」ではなく「よりよく間違える」
事実から目を背けずに、考え、判断する
「失敗してはいけない」という呪い
正しい態度が、不正を萎縮させる
ネットのいじめ、ツイッターでの嫌がらせ
ライン外しの難しさと対応法
ネット上のいじめは、人物を特定してもらう
普通の人でも非道になれる――アイヒマンテスト
事実よりも「立場」「物語」を大事にすることの危険――アーレントの苦悩
人間は何事にも慣れる存在だ――どんな人でもいじめに関わる可能性はある


5.いじめ・差別対策に必要な、ビジョンとゴール

いじめ認定の問題――「いじめ防止対策推進法」の無力
止まらない、いじめによる自殺
いじめ対策に役に立たない「対策法」
破棄されたアンケート――真実より証拠隠滅
「事実」から目を背ければ「再発」もない
いじめこそが、自殺の原因だ
タイムリーないじめの認知が不可欠
ヴィクトール・E・フランクルの「意味のない苦しみ」の苦しみ
いじめの苦悩には、なんの意味もない
残念な差別用語ぎめ
言葉は、使い方だけが差別性を持つ
秘匿や保護は過渡期のもの――止まっていてはだめ
タブーを共有する意味はない
ノーマライゼーション――差別を乗り越えることのゴール
妄言は断固として否定・拒否すべきだ
タブーの存在の強さこそが、アメリカの差別感情の強さ
政治的な正しさの裏にある、強烈なミソジニー
昔からいじめはひどかった――ぼくがいじめられていたころ
いじめられっ子に我慢強さはいらない
原因は重要ではない。大事なのは結果を出すことだ
「欲望」に基づく原因の解釈を許すな
机上の空論、観念論はいらない


6.コミュ障でいい、世界を変えよう

空気を読めないフリをしろ
コミュニケーションとは、たくさん「聞くこと」
礼儀正しく、しかし忖度はしない
いじめへの介入に関する研究論文――科学的議論の重要性
いじめ対策に一定の効果――ノルウェーのエビデンス
情報はあっても、ソリューションがない
脳科学といじめ――日本人にはなぜ空気を読むタイプが多いのか
短絡的な特性クラスタによる分類も、いじめと同じ
スポーツ界といういじめのエートスとその変化――昭和から令和へ
昭和的全体主義のシンボルとしての高校野球
成功譚の蔭に、野球人生を縮めた多くの存在
「夏の甲子園」にひそむいじめの構造
「厳しい練習」が目的化していないか
スポーツ界はさらに成熟すべき
燃え尽きるのは受験の世界も同じ
「判断できず」「考えられない」医師たち
若い世代では、確実に変化が起きている

あとがき

【註】
【参考文献】

画像4

ぼくが見つけたいじめを克服する方法――日本の空気、体質を変える』4月14日(火)発売

ダイヤモンド・プリンセス号の告発で注目の
感染症エキスパートによる渾身の書

願望より、ファクトを
空気ではなく、科学を

日本に蔓延する同調圧力を打ち破れ!


【内容紹介】
子供のいじめは一向に減る気配がない。
それはそもそも、日本社会、それも大人の社会がいじめ体質だからだ。
大人の社会でいじめが普遍的で常態化しており、
「世の中そんなものだ」と多くは納得すらしている。
本書では、どうしたらこの悪循環を断ち切り、いじめが蔓延しない社会にできるかを提案する。


自らもコミュ障で、いじめられっ子だったという著者。
さまざまな経験の末に、それに立ち向かい、克服する方法を導き出している。
「いじめの正体は『空気』だ」とする著者の姿勢は一貫している。
大事なのは、空気よりもファクト。いじめを認知し、オープンにする。
医療においても、空気によるいじめはある。
大事なのは科学であり、事実である。空気なんてどうでもよい。
あえて空気を読めないふりをすればよいのだ。
ファクトを無視したフェイクな社会において、
多くの人が健康を損ない、苦しむことになるのだ――。


厚労省の体質の問題点や、注目を集めた新型コロナウイルス流行時のクルーズ船の感染対策告発にも言及する。


【著者プロフィール】
岩田健太郎(いわたけんたろう)
1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』『99・9%が誤用の抗生物質』『「感染症パニック」を防げ!』『サルバルサン戦記』『ワクチンは怖くない』(以上、光文社新書)、『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(ベスト新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『絵でわかる感染症 with もやしもん』(講談社)など多数。


もしよろしければ、こちらの記事( ↓ )も、お読みください…!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4月中旬に全国の書店に並びます。この機会に、ぜひお読みください…!
ウェブストアは、Amazon、紀伊國屋書店ウェブストア、honto、楽天、などなどで扱っています。電子版は4月24日リリースです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


光文社新書の好評既刊


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

よろしければサポートをお願いいたします。もっと読んでいただけるコンテンツを発信できるように、取材費として大切に使わせていただきます!

アランちゃんと一緒に喜んでいます!
162
新刊、イベント情報ほか、ぜひ手にとっていただきたい既刊本のご紹介や注目の連載をアップしていきます。お気に入りの光文社新書について書かれたnoteをまとめたマガジン「#私の光文社新書」は、アイコンのキャラクター「アランちゃん」ともども投稿をお待ちしています。
コメント (1)
大変興味ある内容です。 購入いたします。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。