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eスポーツからリアルスポーツへの進出―『メタバースは革命かバズワードか~もう一つの現実』by岡嶋裕史

2章⑧ 仮想現実の歴史

光文社新書編集部の三宅です。更新の間が空き、申し訳ありませんでした。

岡嶋裕史さんのメタバース連載の12回目。「1章 フォートナイトの衝撃」に続き、「2章 仮想現実の歴史」を数回に分けて掲載中です。仮想現実(≒メタバース)の歴史をたどることで、メタバースへの理解を深めていきましょう。

前回はNFTの話でしたが、今回はeスポーツについてです。

下記マガジンで、連載をプロローグから順に読めます。

6月1日からEテレ「趣味どきっ!」に出演されます。

eスポーツ

 eスポーツは世界的な普及傾向にある。日本では、香川県のネット・ゲーム依存症対策条例に典型的なように、ゲームはいまだ白眼視される傾向のコンテンツだ。だが、スポーツとして認知する国が増えている。

 確かに、PDCAサイクルを回して研鑽を重ね、熟練へと至る道はスポーツの構成要素と言えるし、そもそも欧米はチェスをスポーツにカテゴライズしてきた。ゲームをスポーツに加えることに躊躇はないだろう。室内で実施し、激しい身体運動を伴わないスポーツはざらにある。

 風向きが変わったのは、IOCがオリンピック競技として真剣な検討をはじめ、従来のスポーツを模倣したものと注釈がつきながらも、アジア大会の正式競技に決定したあたりからだ。すでに、民間企業はeスポーツの大会を高額な賞金で主催し、中には億単位の賞金を獲得してeスポーツで生計を立てるプロフェッショナルプレイヤも輩出されていたが、ここで飛躍的な認知の向上を見た。

 eスポーツの効用はいくつもある。一部のリアルスポーツでかかる高額な費用を希釈できること、若年者や高齢者、低所得者、障害者などスポーツにアクセスしにくい環境、境遇にいる人たちにも参加の道をひらくこと、リアルスポーツで熟達者と入門者が同じフィールドに立つことは実現しにくいだけでなく危険でもあるが(F1やサッカーを想像するとよい)、eスポーツならそれが比較的簡単に安全に行えることなどである。

 本書で言うところの「もう一つの世界:メタバース」的なeスポーツが、体を動かさないから健康に悪いのであれば、もっと現実と融合したAR的なeスポーツに興じても良い。それなら、実際に体を動かすこともできる。

 私は車のレースに参加するのが好きだが、参加回数は数えるほどである。嵩む費用が原因だ。プロを目指すようなドライバーであれば、必要資金は莫大な額になる。多くの者はプロを目標とすることすらかなわない。

 ところが、F1が主催するeスポーツシリーズで2年連続シリーズタイトルを獲ったブレンドン・リーが、その実績を買われて実車のフォーミュラフォード1600でデビューし、2019年シーズンの前半を戦った。フォーミュラフォードはF1に比べたらずっと格下の、フォーミュラレースのエントリークラスに位置するカテゴリだが、実車の実績なく乗れるものではないと考えられていた。リーは上位争いこそできなかったが、ただ走らせただけではなく、ちゃんと戦ったのだ。

 このエピソードはたぶんにご褒美的、マーケティング的な意味合いの強いものだったが、リーがレーシングスピードで走行をこなした事実は、こうしたキャリアパスが存在しうることを強くアピールした。

 小学生のころからレーシングカートに参戦できる資金力がなくても、フォーミュラドライバーになれるかもしれない。家の近くにカートコースがない地方でも、レーシングドライバーの可能性がある。これは、けっこうすごいことだと思うのである。(続く)

岡嶋さんの好評既刊です。


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