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祝・金メダル!侍ジャパンが世界を圧倒した「トータルベースボール」の正体

熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)。
アメリカとの再戦となった決勝戦に勝利し、見事、東京五輪の金メダルに輝いた侍ジャパン。視聴率は37.0%と全競技トップを記録するなど、根強い野球人気も明らかに。今大会の日本が見せた野球は内容も素晴らしく、これぞ「トータルベースボール」と呼べるものでした。今回はその神髄を分析してもらいます。

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死闘を繰り広げたアメリカとの再戦

決勝は、準々決勝で死闘を繰り広げたアメリカと再び相まみえることになった。アメリカの先発は、ソフトバンクに在籍しているニック・マルティネス。日本の先発は広島で若きエースになりつつある森下暢仁。試合は決勝に相応しい、息詰まる投手戦となった。

日本は初回、マルティネスの立ち上がりを攻め立てるが、先制のチャンスを逃してしまう。しかし、マルティネスの調子が上がってきた3回に村上宗隆のホームランで先制点を奪う。それに応えるかのように、森下は初回から飛ばしていき、5回を3安打5奪三振の快投。アマチュア時代から得意とする国際大会の強さを見せつけた。

1-0となってから両チームともになかなか得点が入らない中で試合は進んでいったが、日本は準々決勝でアメリカ打線をねじ伏せた千賀滉大、この五輪でフル回転している伊藤大海のリレーでアメリカ打線を抑え込んだ。伊藤がランナーを出して降板した後も、岩崎優がしっかりと抑え、防御率0.00のトリオが期待通りの結果を残した。

そして8回裏、スコアが動く。山田哲人がヤクルトの同僚であるスコット・マクガフから、この試合2本目のヒットを放ち、チームのリーダー的な存在である坂本勇人がきっちり送りバントを決めてチャンスを広げた。1アウト2塁の場面で2ストライクと追い込まれた吉田正尚がセンター前へヒットを放ち、アメリカの外野からの送球が乱れてる間に、山田がホームインして追加点をもぎ取った。

9回表は、ルーキーながらも全試合登板している若き新クローザーの栗林良吏が抑え、オールプロで参加した五輪としては初の金メダルを、しかも全勝という形で達成した。

「スモールベースボール」ではない「スピード&パワー」で実証した「トータルベースボール」

この東京五輪の日本代表は、野手陣のバランスの良さが目立った。メジャーリーガーなしの国際大会では、屈指の選出だったのではないだろうか。アテネ五輪では長距離打者に偏りがあり、北京五輪では小技が効く選手へと偏りがあった。しかし今大会では鈴木や柳田、浅村といった得点力の高い打者を中軸に置き、山田と坂本というチャンスメイクから試合を決めるまでオールラウンドにこなせる打者が上位で基盤となり、打力に細かな野球を上乗せする形で世界を圧倒した。

稲葉監督も、大会前に「スピード&パワー」という言葉を掲げており、下記のコメントを残している。

「僕の中ではそれは“スモールベースボール”じゃなくて“スピード&パワー”。盗塁やエンドランの“スピード”に加え、国際大会でここ最近はホームランで点をとってというのも出てきているので、“パワー”も必要。」

初戦を除いて会場は横浜スタジアム。比較的ホームランが出やすいとされる球場だ。連打は難しくても、ひと振りで試合が動く可能性もある。
トリプルスリーを達成したことのある柳田悠岐選手と山田哲人選手をはじめ、長打力とスピードの両方を持った選手がそろっている。稲葉監督は「スピード&パワーを具現化してくれる選手たちだ」と胸を張った。

このコメントを見ても、長打力をメインとしたビッグベースボール、あるいは機動力を活かしたスモールベースボールのどちらかに偏るのではなく、「スピード&パワー」を活かしたトータルベースボールを実践するためのチームバランスを常に考えていたのだろう。

その成果が具体的に現れた試合が、準々決勝のアメリカ戦である。1点ビハインドで迎えた9回裏、鈴木が四球で出塁し、浅村が安打で繋いだ。浅村はプレミア12で見せた打撃と同様、場面に応じた軽打を選択。右打ちをしてランナーを3塁まで運び、チャンスを広げた。

さらに、柳田が内野安打でもおかしくないような内野ゴロでランナーを返して追いついた。タイブレークの10回裏も、栗原が一球でバントを決め、甲斐がサヨナラタイムリーを放ち、総力戦を勝利した。この試合は、日本が世界に勝てる「トータルベースボール」ができたと言えるだろう。基盤となる選手がしっかりとチャンスメイクをし、細かな自己犠牲のプレーで得点に結びつける野球を見せた。

これこそが、ビッグベースボールとスモールベースボールを掛け合わせ姿であり、理想的な「勝てる野球」だったのではないだろうか。

世界を獲った「ディフェンス力」

攻撃パターンの豊富なバリエーションだけでなく、ディフェンス面も他国より勝っていた。失策数は参加国最小の1つであり、この数字だけでも守備の堅さがわかる。北京五輪では連携ミスや粗い守備も一因となり敗れる試合がいくつかあったが、今大会で見せた日本のディフェンス力は圧倒的なものだった。

特に、菊池・山田と坂本の二遊間は、ランナーを置いた場面で相手が守備範囲へ転がせば高い確率で併殺打にしていた。そのため、バッテリーも三振以外に併殺打で抑える選択肢を持つことができ、上手く活かしていたに違いない。

派手な得点シーンに隠れがちなディフェンス面だが、緻密な野球をするためには欠かせないものだ。ひとつひとつの守備をきっちり積み重ねていくことは、金メダルへの階段を登っていくことであった。

決勝後に坂本は「ミスがほぼなかったのは、日本の強みだと思います。守備から攻撃にといい流れで試合が出来ました」と振り返っていたが、まさにその通りの試合を見せてくれたことは間違いない。


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