メタバースでもアマゾンの手の平の上に
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メタバースでもアマゾンの手の平の上に

4章⑨ GAFAMのメタバースへの取り組み

光文社新書編集部の三宅です。

岡嶋裕史さんのメタバース連載の29回目。「1章 フォートナイトの衝撃」「2章 仮想現実の歴史」「3章 なぜ今メタバースなのか?」に続き、「4章 GAFAMのメタバースへの取り組み」を数回に分けて掲載していきます。今回はその9回目です。

ウェブ、SNS、情報端末などの覇者であるGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)はメタバースにどう取り組んでいくのか? 果たしてその勝者は? 各社の強み・弱みの分析に基づいて予想します。

本記事ではアマゾンの動向に焦点を当てます。

※下記マガジンで、連載をプロローグから順に読めます。

4章⑨ GAFAMのメタバースへの取り組み

現物と情報をつなぐアマゾン

 アマゾンは相変わらず我が道を行っている。本屋から始まったアマゾンは、その後総合小売りになり、現在では値段のつきそうなものは何でも商うビジネスを展開している。それはリアルでもサイバー空間でもかわらない。その総合性が、独自路線を突き進む余裕と自信をこの企業に与えている。世の中がARにふれようが、多くの人がメタバースに潜ろうが、アマゾンの商いはあるのだ。

 ARを活用した世界ではモノと情報のリンクが活発になる。今だってそうなのだが、実態としてモノが店頭に並んでいても、サイバー空間に登録がなければARグラスに映らないような社会が到来するだろう。

 現物と情報をストレスなくつなぐことに、アマゾンほど腐心してきた企業はない。サイバー空間でのクリックから2時間で自宅にモノが到着するなど、10年前には正気の沙汰とは思えなかったが、今では社会を構成する不可欠な要素になっている。

 アマゾンは、グーグルやアップルほど冴えた感じはしないけれど、現実に即したコスパの良いガジェットを販売することに長けている。スマートグラスについても、Echo Framesをすでに(実験的な商品として)市場に投入している。

 Echo Framesはアマゾンらしさがストレートに表出している端末だ。スマートグラスといえば、開発者はまず何よりも映像で利用者に衝撃を与えることを好むが、アマゾンは音声をインタフェースの土台に据えた。確かに、今の時点で人間とサイバー空間の接点をウェアラブル端末に仕込むなら、音声はコストパフォーマンスのよい現実的な選択肢である。同じく、音声をインタフェースとするホームAIのAlexaとリンクして、ここを軸にARとの関係を作り上げていくことだろう。

 人が住む社会の中で、どんなにサイバー空間が重要度を増しても、今のところ食べて、排泄することは仮想現実内では実行できない。対面のコミュニケーションも残り続けるだろう。その、どうにもならないリアルのモノを受注し、物流網を使って動かし、利用者まで届ける経路をアマゾンはおさえている。ミラーワールドに強い会社なのである。依然旺盛な投資意欲は、ミラーワールドの時代になってもこの企業がかわらずテックジャイアントの座を占め続けることを予測させる。

 仮に社会の趨勢がメタバースを志向したとしても、そこでもアマゾンは戦うだろう。

メタバースはアマゾンのクラウド上に?

 アマゾンが提供するクラウドサービス(AWS)は、今や世界を覆っている。アマゾンが提供するクラウドは、最も有名なEC2(仮想サーバ)、S3(オンラインストレージ)をはじめとして、およそ一般的な管理者が思いつく限りのおびただしいメニューを揃えている。

「計算資源をたくさん使う一企業が、ピークシーズン以外に余剰の計算能力を売る」以外の何物でもなかったAWSは、世界最大のクラウドに育った。クラウドサービスが生き残るために最初にしなければならないことは、まず速やかにでかくすることだ。生半可な大きさではなく世界一を取れるくらいに。

 口で言うのは易しいが、現実には不可能なほどに困難なこのミッションを、アマゾンは他の余計なことには目もくれずに達成した。

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 2019年時点でクラウドサービスの世界シェアは32.3%(前年は32.7%:https://www.acrovision.jp/service/aws/?p=2288)、エンタープライズビジネスと巨大なパイプを持ち、豊富なキャッシュで猛追しているマイクロソフトでさえ16.9%(前年は14.2%)であることを考えると、いかに大きな数値であるかがわかる。

 大きな計算資源を使うサービス(メタバースのことだ)をこれから作る企業があるとして、AWSとまったく縁なく事業を組み立てることは難しいだろう。事実、アマゾンはAWS Game Techという、メタバースに極めて親和性の高いメニューも用意している。

 アマゾンはことさらメタバースを謳って事業展開することはないかもしれない。しかし、ミラーワールドで私たちが商品をオーダーするとき、無意識のうちにアマゾンのARを使っていたり、メタバースを楽しむときに、そのメタバースを動かすエンジンが人知れずアマゾンのクラウドサービス上で稼働している世界を望んでいる。彼らの願いが満額回答で報いられる可能性は、決して低くない。(続く)

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