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なぜいま、「がんに関する正しい情報」が必要だと思ったのか?――『押川先生、「抗がん剤は危ない」って本当ですか?』より「はじめに」「まえがき」を特別公開|おちゃずけ・押川勝太郎

・抗がん剤はやっぱり危険で、苦しい治療って本当?
・標準治療は〝並〟の治療? 最先端医療が最高水準の医療って本当?
・お医者さんに緩和ケアを勧められたら、もうおしまい?
・がんに食事制限は必要ないって本当?
・手術をするとがんは飛び散るって本当?  ……etc.


腫瘍内科医の押川勝太郎氏は、がんに備える「がん防災」の考え方を提唱し、YouTubeなどで正しいがんの知識を発信し続けています。
そんな押川氏に、まんが家のおちゃずけ氏がさまざまな疑問をぶつけ、わかりやすいまんがにまとめました。
新刊『まんが 押川先生、「抗がん剤は危ない」って本当ですかは、ある夫婦が、押川先生のアドバイスのもと、がんに立ち向かう物語。

ここでは、おちゃずけ氏が本書の執筆を思い立ったきっかけを語る「はじめに」と、押川先生による「まえがき」を特別公開します。

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はじめに――おちゃずけ



はじめまして、まんが家のおちゃずけです。

私は、自分はがんになっても「抗がん剤だけは絶対にやらない!」と決めていました。

もともと、ダイエットが趣味で、食事や健康情報に敏感。
妊娠をきっかけに、さらに拍車がかかり、食べ物はなるべくオーガニック。病気になっても、極力病院に行かず、免疫力を上げて自然治癒力で治す。愛読書は、『家庭でできる自然療法』――。

……そんな私にとって「抗がん剤は猛毒」、体に毒を入れたら「免疫力が下がって、かえってがんと闘えなくなる」、そう頑なに信じていました。

そんな私の意識を変えたのは、友人の妹さんの乳がんの闘病でした。

彼女は2児のママ。待望の2人目を妊娠中にがんが発覚。帝王切開で出産後、すぐに治療を開始しました。子どもたちのためにも、必ず生き抜くと、前向きに闘病。抗がん剤治療にも積極的に励んでいました。

幸い、抗がん剤はよく効き、腫瘍は縮小。副作用もほとんどなく、よく食べ、元気で育児に動き回る姿に、親友も私も驚き、安堵しながら見守っていました。

……しかし、数カ月後、がんは肺に転移。

それをきっかけに、彼女の病院への不満と治療への不信が膨れ上がりました。

そんな時に、ある代替療法と出会い、彼女の治療に対する姿勢が一変していきました。その治療法の指導者が勧める食事法や、様々な機材、温熱療法、アーシングなどを次々に取り入れ、さらには、抗がん剤も通院も止めてしまったのです。

しばらくは、生き返ったように元気になった彼女でしたが、徐々に体調は悪化。やがて体のあちらこちらが痛み始め、首一つ動かせなくなった頃……。

家族の強い説得で病院に戻り、その1週間後に亡くなりました。

彼女の死は、姉である私の友人はもちろん、私にも大きな悲しみとなりました。と同時に、たくさんのことを私に気づかせてくれました。その一つが、私が今まで信奉してきた、自然療法や代替療法に対する疑問でした。

私が、抗がん剤や標準治療などの病院での医療を拒否していたのは、その根底にがんに対する強い「恐怖」があったからです。

真正面からがんについて学び、向かい合うことを避け、「必ず治る」「手術をしなくてもよい」などの自分にとって耳あたりのよい言葉だけを集めて安心したかったのです。

でも、彼女が投げかけてくれた疑問を無駄にしないためにも、今のがん医療について、もう一度学び直してみよう――。

そう決意した時、出会ったのが押川勝太郎先生でした。

押川先生がYouTube で配信されている動画には、

・「抗がん剤の発展は、その副作用を抑える薬の発展である」こと
・「薬は、副作用や痛みが出る前に、予防的に飲む」こと
・「標準治療は〝並〟の治療法ではなく、選び抜かれた最高水準の治療である」こと

……などが、繰り返し、繰り返し、語られています。

どれもこれもが、私には目からウロコの驚きの情報でした。

そして、押川先生の動画をクリックするたびに、がんに対する漠然とした「恐怖」が、すこしずつ薄らいでいきました。

押川先生は、「恐怖は、闘うべき相手の正体が見えない時、増幅します。逆に、相手の正体を徹底的に学んだ時、闘い方が明確になり、生き延びる確率は格段に上がるのです」と語られています。

この本は、私自身が、がんを知らないことからくる「恐怖」を克服するために、押川先生に取材を重ね、描かせていただきました。

「2人に1人はがんになる時代」

このまんがが、いつか来る、がんと向き合うその時に、少しでもお役に立てれば嬉しいです。

最後になりましたが、この本を描くきっかけを作ってくれた、友人の金沢福美さん、妹の美和さんに、心より感謝いたします。

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まえがき――押川勝太郎



こんにちは。現役がん治療医でYouTuber の押川勝太郎です。

近年、がん治療の発展が著しいことは、報道などでよく知られています。

一方で、がんにまつわる都市伝説や間違った噂なども様々に出回っており、いったい何を信じていいのかわからない人も多いはずです。

せっかくがん治療が発展しているのにその恩恵を享受できない、それどころか、とんだ被害に遭ってしまったという残念な例も後を絶ちません。

がんの専門家が集まるがん関連の学会は、がんばって正しい情報の啓発活動をしていますが、そのことを知っている一般の方はあまり多いとはいえないでしょう。

最近ではSNSやYouTube などに、センセーショナルな、あるいは不安を煽
るような関連コンテンツが溢れています。

医学的に正しいがん治療の情報を伝えればよいというだけではもはや通用せず、どうすれば無理なく、わかりやすく知ってもらえるかということを、私はずっと考えてきました。

世の中の人はいろいろな先入観にとらわれ、理解の程度も分かれています。大勢の人に伝える最も効果的な方法は、がん専門医としてYouTube で平易に語ることだと思うに至り、この6年間ずっと「がん防災チャンネル」を運営してきました。

ただ、視聴時間のかかる動画を見ない人もいますし、「がん防災チャンネル」の動画は1500本以上もあるため、初めての方はどこから見てよいのか迷ってしまうでしょう。かといって、活字だけの本は読みたくない、その気力がない人もたくさんいます。

そういう意味で、がん治療の実際を理解していただくためのお手伝いを、まんがという手法でお届けできたらいいなと願っていました。

そんな時、おちゃずけさんが私にお声掛けしてくださったのは、まさに渡りに船でした。

私のYouTube「がん防災チャンネル」の内容をもとに、オリジナルストーリーと2人の患者さんの体験談をまんがで描いてくださっています。

近年のがん治療は、発展とともに、非常に複雑化しています。

しかし、自分に最適ながん治療の見つけ方や、戦略的ながんとの共存の仕方は、じつはそれほど難しいことではないことを、ぜひこの本を通じて知っていただければ幸いです。

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目 次


はじめに おちゃずけ
まえがき 押川勝太郎
登場人物紹介

第1話 押川先生!「抗がん剤は危ない」って本当ですか?
――――宇宙一簡単ながんの説明
第2話 押川先生!「標準治療は〝並〟の治療」って本当ですか?
――――標準治療はベースとなる教科書のようなもの
第3話 特別ゲスト・大津先生!「緩和ケアって〝最期の医療〟」って本当ですか?
――――「アクティブ緩和ケア」が絶対必要な理由
第4話 押川先生!「がん治療は〝はじめが肝心〟」って本当ですか?
――――最初にがん細胞を減らす重要性
第5話 押川先生!「お医者さんは言わなければわかってくれない」って本当ですか?
――――患者さんは患者という名の専門家
第6話 押川先生!「がんの闘病ブログや動画を見るには注意が必要」って本当ですか?
――――闘病動画との上手な付き合い方
第7話 押川先生!「がん患者会の参加者は、詐欺治療に引っかかりにくい」って本当ですか?
――――患者会に参加するメリット
第8話 押川先生!「周りの安易な善意が患者を苦しめる」って本当ですか?
――――身近な人にできるがん患者支援
第9話 押川先生!「乳がんになったら妊娠できない」って本当ですか?
――――がんと妊娠についての基礎知識
第10話 押川先生!「ステージⅣのがんはお先真っ暗」って本当ですか?
――――将来の不安との向き合い方
第11話 押川先生!「がんに食事制限は必要ない」って本当ですか?
――――がんに効く食事法は個人の思いつき
第12話 押川先生!「がん治療、お金がかかる!」って本当ですか?
――――幸せになるためのお金の使い方
第13話 押川先生!「手術をするとがんは飛び散る」って本当ですか?
――――都市伝説が広がってしまう事情
第14話 押川先生!「がん患者の家族は、がんばりすぎてはいけない」って本当ですか?
――――家族が共倒れしないための考え方
第15話 押川先生!「がん患者は、治療に専念してはいけない」って本当ですか?
――――第二の人生を歩むための考え方
第16話 押川先生!「先進医療は実験医療」って本当ですか?
――――標準治療こそが最先端の治療
第17話 押川先生!「抗がん剤の副作用〝ケモブレイン〟」ってなんですか?
――――認知機能がおかしくなる副作用
第18話 押川先生!「超高齢者のがん治療は延命を目指してはいけない」って本当ですか?
――――高齢の患者さんをめぐる画期的な研究結果
第19話 押川先生!「がん治療には運動が超重要」って本当ですか?
――――筋トレはがん再発予防の基本
最終話 押川先生!「〝がんの防災〟が大事!」って本当ですか?
――――治療の伸びしろは患者さん次第

コラム 薬物療法

特別編 2人の患者さんの体験談に学ぶ

体験まんが① 内布恵美子さん
――解説 内布恵美子さんのケース
体験まんが② 白川勝さん
――解説 白川勝さんのケース

・本書にご協力くださった、がん患者さんを支援する方々です
・がん患者会・勉強会などをご紹介します

参考動画一覧
あとがき 押川勝太郎

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著者紹介


押川勝太郎(おしかわしょうたろう)

1965年宮崎県生まれ。宮崎善仁会病院消化器内科・腫瘍内科非常勤医師。抗がん剤治療と緩和医療が専門。1995年宮崎大学医学部卒。国立がんセンター東病院研修医を経て、2002年より宮崎大学医学部附属病院にて消化器がん抗がん剤治療部門を立ち上げる。2009 年に宮崎県全体を対象とした患者会を設立、現在NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長。著書に『孤独を克服するがん治療』(サンライズパブリッシング)がある。YouTube「がん防災チャンネル」で1500本以上の動画を通して正しいがんの知識を伝えている。

おちゃずけ

大阪府出身。まんが家、コミックエッセイ作家。押川勝太郎先生との出会いで現代の医療について学び直し中。著書に『最終ダイエット「糖質制限」が女性を救う!』『まんが ケトン体入門』(ともに共著、光文社)、『10 代のための もしかして摂食障害? と思ったときに読む本』(共著、合同出版)などがある。

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光文社新書『まんが 押川先生、「抗がん剤は危ない」って本当ですか?』(押川勝太郎・おちゃずけ著)は、全国の書店、オンライン書店にて好評発売中です。電子版もあります。


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