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「頂き女子」にお金と心をコントロールされないために | 辛酸なめ子#09

「パパ活」の進化系「頂き女子」とは!?

紀州のドン・ファンの事件が3年ぶりに動いたことで、それまで世間を騒がせていた小室さん親子のニュースがいったん沈静化しました。会社経営・野崎幸助さんの元妻に比べたら、小室さんの母、佳代さんはとくに悪くないのでは……そんな空気が形成されつつあるのを感じます。

男性に経済的に頼る生き方と、男性並に仕事しまくる生き方があるとしたら、どちらが幸せなのでしょうか。だいたいワリカンの私は、何の気兼ねもなく奢ってもらえる女性を見ると羨ましくなるときがあります。男性からお金をうまく引き出すテクニックに長けている女性たちは、昨今、「パパ活」(p活)や、その進化系の「頂き女子」といった名前で呼ばれています。

前に、カフェにいたら男友達とパパ活の悪巧みをしている女子の会話が耳に入ってきたことがあります。整形で涙袋を作りたいので「パパ」にどう言ってお金を出してもらうか男友達に相談すると、「◯△さんとごはん行くとき、かわいい子連れてるって思われたいって言えば。おじさん大興奮でしょ」とアドバイスされ、「うまい。すごいね」と女子はさっそくそのプランを採用しそうでした。その男友達は、ついでに自分もレーザー治療で毛穴を閉じたいから合計20万円引き出せないかと、女子に持ちかけていました。おじさんのことを思うと心が痛いです。

「パパ活」はあらかじめお金をもらう契約をして年上男性と会う活動のようですが、その「パパ活」をさらに巧妙にしたのが、最近話題の「頂き女子」です。ツイッターで「頂き女子」で検索してみると、札束の写真やら、おじさんたちからせしめた金額を自慢する書き込みが出てきました。

「35万頂いて一週間でまた16万頂けました」
「新規のおぢ2人から振り込みされてた」
「顔合わせ40分で5はやばい爆笑」(万札の写真とともに)
「おぢケアがんばれば出稼ぎもいらないし」
「新規一撃100気持ちいい。いろいろ気持ち悪くて死んだけど」
「◯◯ちゃんの入院中画像速攻使わせていただきました。253万いただいたおじから、またいくらか頂けそうです。◯◯ちゃんのnoteは絶対買うべき!」
「まだ、会ったことのないおじから253万に続き。明日いくら入ってるか確認しなきゃ」

「253万」という半端な金額が違う人のツイートに登場するのがあやしいですが、「頂き女子」のテクニックを情報商材として売っている人もいるので、サクラ的な書き込みなのかもしれません。魔法のようにお金を「おぢ」(頂き女子用語で年上男性のこと)から引き出す頂き女子の手腕に憧れる人もいるようで、「頂き女子になりたい」という書き込みもたまに見かけました。

「頂き女子」と「パパ活」との違いは、最初に金銭の約束があるかどうか。

「頂き女子」はSNSやマッチングアプリで知り合った「おぢ」の恋愛感情や庇護欲を刺激して、自分からは「お金をください」とは言わず、巧みにお金を引き出す、というテクニックを持っているようです。

逮捕の危険性も

「パパ活」について調べてみると、その援助の形態によって「都度パパ」「定期パパ」「月極パパ」などに分かれるようです。かなりドライな関係です(男性がガチ恋に発展するケースもあるようですが……)。

「頂き女子」が厄介なのは、恋愛経験が少なそうな年上男性を狙い、疑似恋愛をしかけてお金をもらう、という点。「頂き」と名称こそ丁寧ですが、恋愛詐欺みたいなものでしょうか。この場合、はじめから騙す意図があったと立証するのが難しいそうです。

例えばツイッターの書き込みにあったように、入院して体調が悪いといった「病み営業」をしかけて男性の庇護欲に訴え、治療費などをせしめます。生活が苦しいとか、買いたいものが買えないとほのめかし、男性に自分が支えないとダメだと思わせます。グレーな関係ですが、先日「頂き女子」の男子版的な、女性たちに貢がせていた「45股男」が詐欺容疑で逮捕されたので、もし弁護士などに相談されたら「頂き女子」も逮捕される危険があります。このご時勢、気前良く数十万も出してくれる人などなかなかいないし、お金を出してくれたあと、嘘だと気付いて揉める可能性もあるので、素人は安易に「頂き女子」を目指すのはやめておいた方が良さそうです。

「小室文書」の波紋

揉めるといえば、何年も膠着状態なのが、小室佳代さんと元婚約者のXさんです。借金だったのか贈与なのか、解決金はどうなるのか、「小室文書」によって事態はますます混迷を極めています。小室佳代さんは「パパ活」と「頂き女子」の中間になるのでしょうか。「小室文書」では「贈与」だと主張していて、元婚約者の方から進んで援助してくれたと言っているので「頂き女子」に近いのかもしれません。小室佳代さんの、お金を引き出すテクニックについては、これまでも度々週刊誌に出ていましたが、「週刊文春」(4月29日号)や「AERAdot.」(4月26日)には、元婚約者に送っていた新たなメール文面が掲載されていました。

X氏のことを「パピー」とかわいく呼んでいた佳代さんですが(「パピ活」?)、メールの文面は生々しいです。婚約のプランニングとして「パピーの生命保険の受取人を私にして下さること」などと明記したり、「私にとって結婚=主人の遺族年金をなくすことなので大切な問題です」「主人の年金を受け取っている間は内縁の関係にはなれません」といったお金絡みのメールだらけで、婚約中の恋愛ヴァイブスは感じられません。度重なる出費に、X氏は、こんな日記を書き残しています(「週刊現代」5月1日・8日号)。「お金の無心を言う物は、だんだんと相手も麻痺してくるんだろうか 圭君の為と言われれば、止む無しとは思うものの、どうなのか?」と、誤字まじりの自問自答の文章に困惑ぶりが表れています。

高度なテクニック「佳代マジック」

入学金や高級ディナーといった大金以外にも、細かいお金も頂いていたようです。

「……又又面目ないですがトイレットペーパーがキレてしまいました。もし購入して頂けたら幸いです」

「キレる」という変換に、買ってこなかったらキレられそう、という潜在的な恐怖が刷り込まれます。佳代さんのマインドコントロール術でしょうか。ちなみに婚約前のメールだそうです。

「仕事帰りに食料品を買い込み、薬局でトイレットペーパー等も買ったら凄い荷物になってしまいました タクシーで帰宅したのですが……次回そのような時は、(車マーク)助けて頂いてよいですか?」

と、日常のタクシー代をサポートしてもらおうとするメールも。

「図々しいでしょうか?でも700円が勿体なくて 10回利用したら7000円 一緒にフレンチ頂けます」

この文面には、うまい……とつぶやいてしまいました。タクシー10回ぶんで7000円を節約したら一緒にディナーに行ける、という具体的な目標を設定していますが、結局タクシー代も食事代もXさんが出すことになるような……。損しかしないポイントカードみたいで恐ろしいですが、数字のマジックにまやかされてしまいそうです。

先日、佳代さんを何度か取材している女性週刊誌の記者さんが「佳代マジック」という言葉を使っていましたが、気付いたら意のままになっている、という不思議な魔力を持っている女性なのでしょう(料理はすごい上手らしいです)。「パパ活」や「頂き女子」よりも高度なのが、佳代さんが恋愛感情すらチラつかせない、ということです。元婚約者に甘い言葉で好意を伝えることなく、むしろ息子が一番というスタンスを貫いてお金を引き出しているのがすごいです。恋愛を感じさせないクールな態度の方が相手がハマっていくのでしょうか?このまま眞子様と小室さんがご成婚となったら、高度なテクでステップアップを極めていった佳代さんは「パパ活」や「頂き女子」のカリスマとして崇められそうです。そんな日本の行く末が恐ろしいですが……まじめに生きて働いている女性も報われる世の中であってほしいです。

今月の教訓
「頂き女子」にも「頂かれ女子」にもならない、ブレない自分になる。

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著者プロフィール

辛酸なめ子(しんさん なめこ)
1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。 漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)、『霊道紀行』(角川文庫)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、最新刊に『女子校礼讃』(中公新書ラクレ)がある。

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もくじ
その1 人間関係のテクニック
その2 試練への対処法
その3 同調圧力のかわしかた
その4 コロナで変わった人間関係
番外編 人間不信になる前に

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