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いきなり!ステーキランチ飲み|パリッコの「つつまし酒」#102

本物の若手が登場してしまった

 またしても飲酒シーンに新たなる星が登場してしまいました。“酒テロ系クリエイター”こと酒村ゆっけ、さん(、までがお名前)。これまでYoutubeでの飲み動画をメインに活動されていましたが、先日初の著書無職、ときどきハイボールを上梓され、読んでみるとこれが素晴らしい。
 内容は、吉野家、びっくりドンキー、くら寿司、ガスト、牛角などなど、いわゆる酒場ではない店でひたすら飲みまくるというもので、基本ひとりなんだけど、とにかくずっと楽しそう&幸せそうなんですよね。しかも時として「必ず必要になるから」とハイボールを2杯頼んでおくなどの姿勢に酒飲みとしての信頼感が半端ない。特に、そこで飲むという発想がなかった「いきなり!ステーキ」「野郎ラーメン」「スパゲッティーのパンチョ」の回には悶絶しつつ、絶対こんどまねしよう! と固く心に誓いながら読んでいました。
 ところで僕もこの連載「つつまし酒」でよく、居酒屋ではない店でお酒を飲むなんてテーマの原稿を書かせてもらっています。が、僕よりずっと若い女性であり、YouTube総再生数4000万回の人気者にそれをやられたら、はっきり言ってたまったもんじゃないですよ。
 2018年に発売された僕とスズキナオさんの対談集『酒の穴』の帯に、単なる悪ふざけで「若手飲酒シーンを代表するふたり」なんて書いたら、それが妙におもしろがってもらえたようで、その後、「若手飲酒シーンを代表するパリッコさんです!」なんて、メディアで紹介されることもしばしば。だけど考えてもみてください。僕もナオさんも40を超えたおじさんで、実際は若手でもなんでもないんですよ。そこがなんとなくうやむやになってて気がついてない人も多いのに、本物の若手に登場されたら参っちゃわないですか? って話。しかも、そうやって僕の頭上をびゅんびゅん超えていっちゃう若者、多いんすよ最近。まったくもう!

まずは「いきなり!ステーキ」だ!

 とはいえ、『無職、ときどきハイボール』が大変おもしろく、まねしてみないわけにはいかないと思ってしまったのも事実。ここはさっさと敗北を認め、その貴重な情報をありがたく享受させてもらうのが得策でしょう。
 というわけで、今回やってきたのは「いきなり!ステーキ」。実はこれまで縁がなくて初めて来たのですが、なんでもここの「ランチ飲み」がかなりお得なんだとか。そもそも、ステーキは大好物ですからね。店内に入り、肉の焼ける香ばしいにおいをかいだだけでわくわく感が最高潮にまで高まります。
 メニューには、リブロース、ヒレ、サーロインなどなど、様々な部位のステーキが並んでいて、グラム単位で注文できるシステム。ランチタイムの現在は、ランチサラダ、自家製ビーフスープ、ライスのセットが220円で注文できる他、お得なグラスビールやグラスワインもあるみたい。なるほど、うまく組み合わせるとかなりお得に飲めそうですね。
 悩みに悩み抜いた結果、メインの肉は、ワイルドステーキとワイルドハンバーグが150gずつの「ワイルドコンボ」に決めました。ふだんの飲みならばライスは頼まないところだけど、今回はランチセットも追加。もちろん、『無職、ときどきハイボール』にあった裏技を試してみるためです。ただ、満腹になりすぎる予感から、ごはんは半分にしてもらいました。おっと、もちろんグラスビールも注文。よし、これで準備万端!

 ちびちびとサラダやスープをつまんでいると、ジュージューと音を立てる鉄板が目の前に運ばれてきましたよ。

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ワイルド・オブ・ワイルド

 うおー! やっぱり肉ってテンション上がるわ。合計300gのステーキとハンバーグ、実際どんなもんかと思ってたけど、想像を超える大ボリュームですね。食らってやるぞ! という野性的な衝動が湧きあがってくる。
 まずはステーキを塩胡椒のみでぱくり。へー、なるほど、こうきたか。サシの入った柔らか〜い肉とは正反対の、かなり噛みごたえのある、そして噛めば噛むほど旨味あふれる赤身肉。まさにワイルドステーキ。柔らか〜い肉はそりゃあ美味しいけど、2切れも食べればもう重たくなってきます。その点こういう肉はガツガツ食べられる。うん、最高だ。続けてワサビ醤油、オニオンソース、ケーキのデコレーションみたいなバターソースと味変しながら食べ進めつつ、ビールをグイグイ。ハンバーグも表面のこんがりと中身の柔らかさの対比が楽しく、そして過剰に肉々しくて最高! いや〜、さすが専門店だけあって、美味しすぎますね。これで1265円とは、今まで来なくて損してたわ。
 続いて、ビールを飲み干しグラスワインに移行するタイミングで、コーンと、1/3ほど残しておいた肉たちののった鉄板の「再加熱」をお願いします。そう、いきなり!ステーキではいつでも鉄板の再加熱が可能なんですね。

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再び熱々!

 で、ここがポイントでして(といってもゆっけ、さんの受け売りですが)、再び熱々になった鉄板にごはんを投入。さらに卓上のニンニクとコショウもたっぷりと追加し、オリジナルのガーリックライスを作ってしまおうというわけなんですね。
 香ばしき湯気を顔に浴びながら、ジュージューと焼ける鉄板の上のごはんと具をよ〜く混ぜる。すると、さっきまでとはまったく違った光景がそこに現れたじゃないですか。

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肉たっぷりガーリックライス

 すごいな、まるで魔法。またこれが、しっかりとした味わいの赤ワインにめちゃくちゃ合う。いきなり!ステーキランチ飲み、至福!

居酒屋置換計算法

 と、じゅうぶん楽しんだところでちょっといいでしょうか。今回は最後にもう一度、頼んだものを振り返ってみたいと思います。詳しいことはあとで説明するので、いったん続けさせてください。
 まず、ワイルドコンボが1265円、ランチセットが220円、グラスビールが275円に、グラスワインが385円。合計で2145円。世の中にはグラスワインが1杯100円のお店もあるなか、昼飲みにしてはちょっと贅沢しちゃったかな〜という金額ですよね。
 ただこういうとき、自分を納得させ、かつあらためて満足度を実感できる方法があるんです。それが「居酒屋置換計算法」。って、僕が勝手に呼んでるだけなんですが、要するに「今日頼んだものをぜ〜んぶ居酒屋で頼んだとしたら、その店はどのくらい名店か?」と考えてみる方法。
 順を追って見ていきましょう。まず、グラスビールが275円。それから、しっかりとした量の赤ワインが385円。ここまでなんの文句もなし。ていうか安い。通う。
 次に、料理のトータル金額が1485円。これを分解して考える。つまり、サラダ、スープ、付け合わせ野菜。この時点でもう小鉢3品だ。それぞれが破格の100円だったと仮定すると、残り金額は1185円。その金額のなかに、ステーキ、ハンバーグ、ガーリックライスの3品が含まれている。試しに3で割ってみましょうか? なんと1品、395円ですよ! ちょっと今、自分で計算してて鳥肌立ちました。そんな居酒屋ないっしょ滅多に! 重ね重ね、通うっしょ!
 この計算方法はあらゆる場面で有効で、例えば「ちょっと高いな」と思った駅弁の値段を、入っているおかずの品数で割ってみたりするのも興味深いです。お試しあれ。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco
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