『舞姫』の時代を知るのに最高の1冊です|恋愛学で読みとく「文豪の恋」【番外編】
note担当の田頭です。3連休の初日、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
この光文社新書noteで好評連載中の「恋愛学で読みとく『文豪の恋』」はもう読んでいただけましたでしょうか。
おかげさまでじわじわと人気上昇中です。近々第3回として三角関係を描いた武者小路実篤『友情』編をアップしますので、お楽しみに。よろしければマガジンのフォローもお願いします!
さて、今日はこの第2回で採り上げた『舞姫』の時代背景がよくわかる副読本のご紹介です。本というか、マンガなんですが…
『坊っちゃん』の時代!
『舞姫』に関わるのは第二部のみですが、これはもう全5巻を読破する価値のある素晴らしさです! 谷口ジローさんの繊細で美しい絵はばっちりテーマにハマっていますし、こちらでも『孤独のグルメ』ばりに食べ物の描写が美味しそう(牛鍋とか!)。しかも原作が関川夏央さんときたら、『事件屋稼業』ファンのかたは、もうこのコンビのクレジットを見ただけで読みたくなりますよね。
シリーズの内容は、明治の文人たちを中心とした群像劇となっています。
・第一部 夏目漱石
・第二部 森鷗外
・第三部 石川啄木
・第四部 幸徳秋水
・第五部 夏目漱石
この4人がそれぞれ主人公格で、彼らを取り巻く同時代の文学者、政治家、女性たちとの交友や恋愛模様が描かれます。そして巻を重ねるごとに激動の「明治」という時代が何だったのかが次第に明らかになっていくという…。なんだか大河ドラマっぽいと言っていいかもしれませんね。
史実と想像が巧みに織り交ぜられた関川夏央さんのストーリーテリングがとにかく絶妙です。「あ、この人とこの人って交流があったんだ!」という発見も満載。文学史というか近代史というか、やたら勉強になる内容の連続で、私など受験生の時によく読みふけったものです(笑)。
鷗外が出てくる第二部は、もちろんエリスのモデルとなった女性(この作中でも名はエリス)との恋が描かれます。ここで苦みばしって苦悩する鷗外はかなりの読ませどころ。みなさんの『舞姫』への印象がまた変わるかもしれませんね。
ちなみに個人的には第三部が最高です。啄木のクズ男っぷりといったら!(笑)『舞姫』の豊太郎なんて目じゃありません。借金しまくって踏み倒す、人の勘定で飲んだくれる、仕事をサボる、奥さん放ったらかしで遊廓に入り浸る…とまあやりたい放題。こんな行いの中でよく『一握の砂』なんて書けたな、おい(笑)。親友である金田一京助(息子さんともども国語辞書で有名な人ですね)が対照的にいいヤツすぎて泣かせます。
そんなこんな、面白いうえに、勉強にもなってしまうこちらのマンガ、ぜひいかがでしょうか。『舞姫』や『こころ』がもっと深く理解できるようになること間違いありません。いい本やマンガって、必ず次のよき読書体験を呼び寄せてくれるものですから!
↓こちらも大作家たちの知られざる名作を採り上げた一冊。鷗外も実篤も収録されています。