【名言集】光文社新書の「#コトバのチカラ」 vol.36
安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』
ある工場では、日系ブラジル人のタイムカードだけ、名前ではなく番号が記されている。ブラジル人の名前は、日本人にとって書きにくく、覚えづらいからだ。名前を奪われた人間が、人格など認めてもらえるわけがない。
瓜生知史『魚はエロい』
カワハギのオスは、他の多くのオスと戦い、縄張りを守り、時にはメス同士の争いの仲裁までし、放精時は必死に鰭を動かす。よく頑張ったオスは産卵期が終わる頃、真っ白に燃え尽きたかのように痩せこけ、ボロボロになった姿を見せる。これがカワハギの男の生き様だ。
片田珠美『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』
我慢して押し殺した怒りが、時が経つにつれて変形して別の形で表れるのではないか、と私は危惧の念を抱いている。「抑圧されたものは回帰する」というのは、フロイトが精神分析経験から導き出した基本原理だが、怒りも例外ではないからである。
鈴木雅則『リーダーは弱みを見せろ』
素晴らしいコーチングのスキルを身につけたあなたが部下の良いところを引き出そうとしても、あなたが心からその部下の潜在能力を信じていなければ、その部下のやる気が高まることも、能力があなたの期待以上に伸びることも難しいでしょう。
稲田智宏『鳥居』
神を数える単位に柱という語を用いるのは、ひょっとしたら高度に抽象的な思考によるのかもしれない、などという気さえしてくる。集落や家の出入り口に設けられる門、そしてもちろん鳥居も、基本的には柱であり、鳥居の場合はおそらくもうひとつの神の現れである鳥と結びついた。
木暮太一『「分かりやすい説明」のルール』
相手におもねる必要はありませんし、変に気をつかうことも無用です。必要なのは、相手が理解しているかどうかに対して、「説明者がすべての責任を負わなければならない」という意識です。
佐山一郎『日本サッカー辛航紀』
名勝負の羅列だけがサッカー史ではない。創造の主体は選手、監督、審判員にだけあるわけではなく、観る人、報らせる人、催す人をも含む。サッカーもまた映画や演劇のように、内外の不特定多数を巻き込む運動や装置として生きてきたのだ。