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【55位】ザ・キンクスの1曲―パワー・コードの「ユーレカ!」が、荒ぶるティーンの原風景を

「ユー・リアリー・ガット・ミー」ザ・キンクス(1964年8月/Pye/英)

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※画像はイタリア盤ピクチャー・スリーヴです

Genre: Garage Rock, Hard Rock
You Really Got Me - The Kinks (Aug. 64) Pye, UK
(Ray Davies) Produced by Shel Talmy
(RS 80 / NME 219) 421 + 282 = 703

ザ・キンクスも出た。初だ! 最初なら曲はまずこれしかない。彼ら3枚目のシングルにしてブレイクスルーの1曲。全英1位、全米7位のヒット――というよりもなによりも、パワー・コードを駆使した「リフ」で世を切り裂いた、史上初の1曲がこれだ。

イントロから鳴り響く「F5・G5(x2)・F5・G5」(ユ・リリ・ガ・ミ)――たったこれだけ。しかしこれこそが、言うなればアルキメデスの「ユーレカ」だった。レイ・デイヴィスが発見した「新公理」であるこれを、弟のデイヴが、文字どおりわざとぶっ壊したアンプを使用して弾いた。ゆえにバキバキにひずみきった音の単純な繰り返しに、原始の火が宿った。「血が騒ぐしかない」というやつだ。かくしてこのリフの延長線上にハード・ロックやメタルが生まれ、パンク・ロックすら、これがなければどうなったことか。ロックにおける「暴れる血統」の始原のひとつとなったのが、革命的なこのリフだ。

リフの直接的なアイデア元となったのは、レッドベリーやビッグ・ビル・ブルーンジーら、いにしえの達人ブルースマンのギター、それから同期ともいえる米オレゴン州はポートランドのバンド、ザ・キングスメンのヴァージョンの「ルイ・ルイ」だったという。そもそもはレイがピアノで弾きながら考えていた、ジャズ調のフレーズのつもりだったこれが、めぐりめぐって、即効性と破壊力抜群のロック・ギターで展開されることになって、未来が変わった。歴史はここから大きく、不可逆的に進行していくことになった。

歌詞のほうは、女の子に「首ったけ」になった男の子が、こらえ切れない「衝動」を抱えながらぶつぶつ言う、というストーリーだ。発展性も出口もない、この「悶々とした鬱屈」も、楽曲の破壊力増強へと大きく寄与した。当曲は彼らのデビュー・アルバムに収録され、代表曲の第1号となった。そして味を占めたバンドは「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」ほか、一連の「リフもの」の名曲を世に送り出していく。

という曲なので、カヴァーも映像作品内での楽曲使用も無数にあるのだが、前者で最も有名なのは、78年、デビューしたてのヴァン・ヘイレンのヴァージョンだ。映画では『さらば青春の光(原題:Quadrophenia)』(79年)のお風呂歌合戦シーンで、全裸のジミーが、リフも口ギターで熱唱していた(60年代のモッズ族が好むロックならまずこれ、という描写だ)。ビートルズ、ストーンズ、フーが60年代UKロックの1、2、3だったとしたら、4つ目の椅子に座るべきキンクスの、突出した逸品がこれだ。

(次回は54位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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