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ChatGPTは俳句を詠めるか?――ChatGPTの基礎知識⑩by岡嶋裕史
切り捨てられていた分野を包含
GPT-4が学習に使ったデータセットはとにかくでかいので、今までだったら「価値を生み出さない」「役に立たない」と切り捨てられていた分野を包含し、かつそれらを結びつけているところが「すごい」と思う。
表と俳句を作る
アナグラムを作るプログラム
#ありゃ、いきなりは作ってくれなかった。でも、まあこの辺は聞き方次第なので・・・・・・。
で、ブラウザから使えるネット上の無償開発環境で動かしてみたら、こんな結果を吐き出した。
#さっき、GPT-4が出力した俳句だ。
組み合わせによって新しい回答を創造できる
まず、汎用の言語モデルで俳句だの季語だのの話題に追従してくるのがいかしてる。詩や文学の重要性は論を待たないが、いっぽうでビジネスや日常会話で頻出かと言えばそうではないだろう。
データセットの作成に金も手間もかかることを考慮すれば、真っ先にぶった切りたい候補になってくる。たとえば、大学受験用の電子辞書を買うときスタンダードなモデルを選ぶと、「もうちょっとご予算があれば、医療分野の辞書が充実しているモデルもお求めになれます」などと言われるのと同じである。
医学部志望の受験生は欲しいかもしれないが、一般的な受験対策としてはいらないので、大多数の人向けのモデルでは省かれる。
季語の意味や、数ある季語の中から夏の季語を教えてといった問いあわせは、(学んでさえいれば)AIの得意な回答分野だろう。でも、「じゃあ、それを表にしてよ」といっていきなり出力できるのはなかなかである。
表という表現形式を知っていて、短文と表の置換ができるのはもちろんなのだが、よくあるモデルであればステートレスなので、次のデータを表にして欲しい、「蝉(せみ) - 夏の暑い日によく聞こえる蝉の鳴き声は、夏の象徴です。・・・・・・」ともう一度データを投入しなければならないところだ。
ChatGPTも永遠に会話履歴を覚えているわけにはいかないので、遡って一貫性を確保できるのは数千字と言われているが、これができるのであればビジネス用途の秘書機能として実用水準だろう。
そして、ここが生成系AIという名称に恥じない本領発揮部分だが、「俳句を作って」に応えてくれる。膨大な記憶能力を背景に、データから必要な部分を抽出して回答するだけでなく、組み合わせによって新しい回答を創造できる(ように見える)点が出色の出来映えだ。(続く)