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外国人が避ける、男女不平等の日本が生きる道

「ラクすること」をヨシとしないニッポンの社会

はじめまして。サンドラです。簡単に自己紹介をすると、母が日本人、父がドイツ人、44歳の中年です。人生の前半の22年をドイツで過ごし、後半の22年はニッポンで生活してきました。

来日22年の私が「日本に来て今に至るまで気になってきたこと」について書きます。

まあいわゆるデワノカミになってしまいますが、一片の真実はあると思いますので聞いてください。

昔から日本で問題視されている長時間労働。有休がとれなかったり、長時間の残業を強いられることで、社員が鬱病になったり、自殺に追い込まれたりすることがあります。そのたびに「被害を防ぐにはどうすればいいか」の議論が巻き起こります。

実際に何も対策がとられていないわけではなく、少し前までは24時間営業が当たり前だったコンビニも一部ですが深夜には閉まるようになり、2019年4月からは年に5日の有休をとることが法律で義務化されました。パワハラ防止も大企業では今年6月から義務化されます。

にもかかわらず、気づけばまた一部の企業で社員にコッソリ長時間残業をさせていたり、パワハラの被害で自殺する人のことがニュースになります。なぜ、間隙を縫うように何度も同じようなことが起きてしまうのか。

それは、いわば「体育会系的な根性論」が日本社会で幅をきかせているからではないでしょうか。

私が「日本って体育会系だよね」とか「日本では根性論が大事にされているよね」と言うと、反論されることが多いです。「いやいや、最近は『ゆとり』世代や『さとり』世代の登場で、日本は生ぬるくなっている」と指摘を受けることもあれば、「東洋の魔女じゃあるまいし、根性論なんて昭和の話ですよ」と諭されることもあります。

たしかに近年の日本では、かつて漫画に描かれたような「頭にハチマキを巻いてがんばる」というような「わかりやすい体育会系」は少なくなっています。頭にハチマキはやっぱりカッコ悪いですしね。ところが、人々の無意識のなかには「根性論に基づいた考え方」はけっこう根強く残っていると感じます。「物事を成し遂げられないのは本人の努力が足りない」「周囲の期待に応えられないのは自分のせい」といった考え方のようにです。

新人はまず「雑巾がけ」から?

日本の会社は能力のある人を雇っても、新人だからという理由で「まずは雑巾がけから」と言わんばかりに、その人が能力を発揮できるポジションに就かせず、全く無関係な部署に配属させることがあります。これはスポーツでいえば、大坂なおみ選手に対して「テニスが上手なのは分かるけど、まずは球拾いからね」とやってしまうようなものです。

また、あれだけ危険だと指摘されているにもかかわらず、いまだに小学校などの運動会でピラミッドが行われているのも、「子供が苦労するのを見て感動する大人」が日本には多いからではないでしょうか。ピラミッドの成功のために、子供たちが過酷な練習を強いられていることに疑問をもたない大人が多いのは、体育会系的な考え方が根底にあるからだといえるでしょう。

ヨーロッパ人は全員が「ゆとり世代」

いわゆる「自己責任」論が日本では人気があります。「理不尽な目に遭うのは、やっぱり本人に原因がある」と考える人が多いようです。実際には、たとえば貧困は必ずしも個人に責任があるわけではなく、家庭環境によっては残念ながら連鎖してしまうものですが、日本ではいわゆる「生活保護叩き」が定期的に起きており、これはヨーロッパではあまり見られない現象です。

ヨーロッパの人と接するとわかることですが、彼らの生き方はどの世代であっても日本でいう「ゆとり世代」そのものだったりします。平社員は言われたことしかしませんし、6時にはオフィスを後にしますし(早いところだと5時かも)、ヒラですから当然「経営者目線で会社のことを考える」なんていうこともしません。

そんなこんなで、私のようにドイツのゆる~い環境のなかで育った人から見ると、日本社会は今なお体育会系的な要素が強い国なのでした。

無痛分娩が広がらないのは、「女性に対する根性論」のせい?

もしこれを読んでいる貴方が女性なら、この手の根性論について、特に注意が必要です。というのもニッポンの社会は「女がラクすること」をヨシとしません。

ヨーロッパでは「無痛分娩」が主流ですが、これは女性が「痛い思いをするのは嫌」だからです。ところが日本では女性が「痛いのは嫌だから無痛分娩がいい」などと言えば、いたる方面からお説教されてしまいます。あたかも「痛くても気合で出産しろ」と言わんばかりです。「やっぱり自然な形で生んだほうがいい」という声から、「お腹を痛めて産んだ我が子だからこそ、かわいいと思える」というお決まりのフレーズも登場します。でも私は「単に女性にラクさせるのが嫌なんじゃないの?」と疑っています。(この「無痛分娩」に関しては、「体育会系 日本を蝕む病」〈光文社新書〉の134ページに詳しく書いています。)

#KuToo運動を立ち上げ、「ヒールやパンプスではなく、ペタンコな靴で仕事をしたい」と発言した石川優実さんがバッシングを受けていることからも分かるように、日本の社会には「女性にラクさせたくない人」が少なからずいます。

何年か前に政府が「女性が輝く社会」というキャッチフレーズ(?)を掲げたことがありました。そこで掲げられた女性像とはフルタイムで働き、子育てや介護もしながらいつも笑顔でいるような女性でしたが(もし私の解釈が違っていたらごめんなさい)、この「女性のパワーで何でもできるはず!」とでも言うような発想もなんだかなあと思いました。

そうでなくても日本の働く既婚女性の睡眠時間は先進国の中で一番少ないのです。「やればできる」という体育会系的な発想のもと、女性が今まで以上に色んなことを抱え込んでしまえば、気がつけば、「疲労のあまり精魂尽き果ててしまった」なんていうことになりかねません。

ブラックな根性論に出会わないためには

そんなことにならないために、あなたが人生の節目節目でブラックな根性論に出会わないためのコツやヒントを『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)の中に盛り込みました。幼稚園や小学校選びの際に気を付けるべきこと、会社選びのポイントなどについても書きましたので、子育て中の親御さんをはじめ、学生さんや会社員の方などに幅広く読んでいただけると嬉しいです。

第6章には「体育会系」にまつわる「良い話」も盛り込みましたので、ニッポンをただバッシングするだけの本ではありませんよ。どうぞよろしくお願いいたします。

サンドラ・ヘフェリン


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