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出産前に出会っていたら2552時間を節約できてその分もっと赤子を愛でられたかもしれない

はじめまして。
光文社新書の永林と申します。
育児休業からの復帰と同時に、雑誌から新書編集部に異動して参りました。

本来は4月に復帰の予定だったのですが、コロナの影響で保育園が休園し、育児休業を2カ月ほど延長。その間、誰にも会わず、外にもせず、仕事もせず、授乳中はボーッとするので長い文章もなかなか読めずで、情報はほぼスマホ経由。1日平均7時間(!)もスマホで情報収集する日々でした(これはコロナ以前からですが)。世界中のコロナ関連ニュースの他、育児中に噴き出しまくる「これって本当にこれでいいの?」という日疑問を解決するためです。

そんな新米母かつ新米新書編集者の私が、全国の寝不足新米父母に泣きながらおすすめしたい新書が、「科学的に正しい子育て~東大医学部卒ママ医師が伝える~」 (光文社新書) です。
その理由はただ一つ、超絶時間の節約になるから!!!!!

専門家すら信じていた、母乳回りの神話

個人的な話をします。うちの子どもは最初の頃、母乳をうまく飲めない赤ちゃんで、授乳の合間にその解決策を検索する日々でした。育児書や産院からの情報だけでは個々のケースに対応できません。飲んでくれない理由、母乳がたくさん出る食べ物、母乳相談のある助産院や母乳外来。1時間も飲み続けるのは足りてないからじゃないのか、完全ミルクに切り替えるべきなのか、でもそうしたら母乳が出なくなってしまうのではないか。粉ミルクはなぜ「一旦沸騰させたお湯を70℃に冷ました上で溶かしさらに人肌に冷まして与える」という面倒な温度変換プロセスが必要なのか。何でもかんでも調べまくった結果、1冊本が書けそうなほど「ネット上の育児クソバイス」が蓄積されました。公共の情報だと個人のケースに当てはまるものは少なく、かといってインスタ漫画やブログに頻出する“神話信仰”には辟易。区の保健師さんに相談したり、助産院に出かけてみたりもしてみたものの、専門家にもらったアドバイスですら「本当かよ!」な内容が実に多かったのです。


出産育児周りの事柄って、自分の経験のみに基づいた見解が事実として語られがちなんですよね。今もって解明されていないことが多く、医学的な常識もどんどん更新されるので、“頼るべきはやはり「経験」”と信じられているのかもしれません。そして、出産育児周りに位置しない人には、明かされない事実が多すぎる(たとえば、出産後は“悪露”という出血が1カ月も止まらないので“産褥パッド”という巨大ふかふかナプキンをつねに装着するためお尻がつねにワカメちゃん状態、とか知ってました?)だからなのか、出産育児周りには、驚くほど“神話”が残っています。

たとえば、妊娠中から出産直後。

友人「予定日をすぎたら焼肉を食べてオロナミンCを飲むと陣痛が来るよ」(なんで?)

インスタ漫画「雑巾掛けを毎日したら予定日に生まれました!」(臨月でそんな事できるか!)

仕事仲間「顔がやさしくなってきたから、絶対女の子だよ〜!」(関係あるか!)

会いにきてくれた先輩「女子はやっぱりパパ似が幸せになれるのよ〜」(だからなんで?)

お見舞いにきてくれた友達「生クリームを食べると母乳が詰まるから、和菓子ね」(和菓子はありがとうおいしい)


母乳に悩んでいたときは、プロからもこんなアドバイスをいただきました。


助産師さん「辛いものを食べると、おっぱいも辛くなって子どもが飲まなくると言われています。納豆にカラシ入れてる? 飲まないのは、それが原因かもしれませんね」

訪問保健師さん「母乳のタイプには“刺し乳”と“溜まり乳”があって、アナタは“刺し乳”です。だから張らなくても出ています」

助産院の人「うどんやお餅を食べると力がつくので、おっぱいが張りますよ」

病院の看護師さん「右の乳首がちょっと長いんじゃない? 新生児には長すぎて飲みにくいのかもね」


毎度、つい「なぜ?」と聞いてしまいましたが、一度も明解な答えは得られず。効果があるなら何でもいいと実践してみても、結果はやはり「? ? ?」でした。調べてみると“刺し乳”と“溜まり乳”という母乳タイプはそもそも医学的には存在しないようだし、お餅で母乳がよく出るというエビデンスも見つからず。辛いものがダメなら韓国人やブータン人はどうしてるんだ! そして、神話関係ないけど「私の乳首……右だけ長すぎるんでしょうか?」と、母乳関連の人に毎回聞く謎の人になってしまったじゃないか! (「ふつうだと思いますが……なぜ?」と逆に聞かれる始末)


やっと授乳が軌道に乗ってくると、今度は永久におっぱいを吸い続ける赤子へと進化したわが子。寝落ちするものの、口から乳首を離すと爆速で起きるので、1日の半分くらいはソファと一体化して授乳していました。その間にスマホを握りしめ、すでに知っている情報を除外し、ゴミ情報をより分け、有益と思われる情報の断片を拾い、信頼に足るソースに辿りついたころ、気づけば「7時間」が経っているのでした。

よき新書は素人スマホ検索の2億倍効率的な情報源


前置きが長くなりました。お伝えしたかったのは、出産前に「科学的に正しい子育て~東大医学部卒ママ医師が伝える~」と出会えていれば、どれだけの時間を節約できたか、ということなのです。この本には“科学的に正しい”、つまりエビデンスに基づいた出産育児周りの知識が簡潔に書いてあります。医師という医療情報検索のスペシャリストである著者が、自らの育児で疑問に思ったことの答えを、世界中の医学論文や文献の中から探し当て、現時点での正解を示してくれているのです。私のような素人が、ネットに溢れる情報から一握りの有益な情報を漠然と探すのに比べ、2億倍効率的。しかも、薄くてわかりやすい新書なので、授乳中でも読めます(トップ写真参照)。私が毎日スマホ検索に使っていた7時間なら、2回通読して復習までいけます。

たとえば、私が様々な形で受け取ってきた母乳関連アドバイスも、科学的に喝破してくれています。

●生クリームを食べると母乳が詰まる
→食事内容が乳腺炎のリスクになるという科学的根拠は、現在のところない

●お餅を食べると乳が張る
→母親の食事によって母乳の糖分や脂質の量が大きく影響されることはない

●辛いものを食べると母乳も辛くなる
→母親の食事内容によって成分(味)は変わらないが、匂いは変わる。そして、羊水には母親が食べたものの匂いが移るため、赤ちゃんは母親が妊娠中によく食べていたものの匂いが好きという実験結果がある

●粉ミルクはなぜ一旦沸騰したお湯を70度に冷まして溶かしさらに人肌に冷ますのか
→粉ミルクには髄膜炎などの重症感染症を起こすサカザキ菌が検出されることがある。しかし71〜72℃に加熱すれば、およそ0.7秒ごとに10分の1に減らすことができる

●お酒を飲んだら授乳間隔をどれくらいあけるべきか
→母乳中のアルコール濃度は、飲酒後3〜60分後が最大になる。体質にもよるが、お酒は1杯程度に留めて2〜2時間半以上の時間をあける


母乳関連の謎だけでも、これだけの「正解」が書かれていました。もちろん、全て根拠となる論文や文献が示されており、信用に足るものです。

私が「ミルクスルーブレンド」(母乳に良いとされるハーブティー。変な名前だし効果は不明)を飲みながらスマホ検索に当てた7時間✖️365日=2555時間。新書一冊を読むのに要する時間は3時間程度ですから、出産前にこの本と出会っていれば、1年間で2552時間を節約できていた計算です。本の1冊も書けていたかもしれませんし、スペイン語くらいペラペラに……というのはちょっと無理な計算ですが、少なくとも赤ちゃんと過ごせる、人生の中で本当にわずかで貴重な時間を、もっと有意義に過ごせたであろうことに疑いはありません。


乳児育児中のみなさんと、これから赤ちゃんを育てるみなさんに全員に、配って歩きたい1冊なのです。


著者のインタビューもnoteで読めますので、ぜひ。



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