ワインエアレーターでお手軽デキャンタージュ|パリッコの「つつまし酒」#119
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ワインエアレーターでお手軽デキャンタージュ|パリッコの「つつまし酒」#119

デキャンタの存在意義

「デキャンタ」ってあるじゃないですか。サイゼリヤなんかで、ワインが入って出てくる、花瓶みたいな形の。あれ、今まで僕、飲食店でワインを提供するにあたり、グラスじゃ足りないしボトルじゃ多い人のためのものだと思ってたんです。だから、あれを家で使ってる人って、単にかっこつけてるだけだと思ってたんです。だけどどうやら、そうではないらしいんです。
 まずですね、ワインをボトルからデキャンタに移す行為には名前がついていて、ずばり「デキャンタージュ」というそうです。かっこいいですね。で、デキャンタージュにどんな意味があるのかというと、ワインに対して、「香りを良く」したり、「味わいをまろやかに」したり、「澱(オリ)をのぞいて口当たりを良く」したりと、嬉しい効果がたくさんあるんだそうです。特に、安いワインには効果的なことが多く、飲んでみて「ちょっと渋いな」とか「なんだか若い感じだな」なんてときに試してみる価値ありだそう。
 ただし、デキャンタにも膨大な種類があるし、注ぎかたにも技術がいる。さらに、デキャンタージュしてから、古いワインなら20分ほど、若いワインなら2時間ほど経ってからが飲み頃だそう。よほどのワイン通でない限り、家で挑戦するのはちょっとハードルが高いですよね。
 さて、大前提として、僕は本当にワインのことがわからないので、以上の情報はすべて最近調べた付け焼き刃の知識です。なんか間違ってたり微妙なこと言ってたらすみません。そういう場合、怒らず優しく指摘してくださる方のみ、ご連絡ください。

ワインエアレーターとは?

 で、なんでワイン通でもない僕がこんなことを言い出したのかというと、実はですね、このデキャンタージュと同等の効果を誰でも簡単に、しかも一瞬で手に入れることができる、魔法のようなアイテムの存在を知ったからなんです! その名も、「ワインエアレーター」。ボトルの先端に取り付けられる注ぎ口の形をした器具で、これを装着するだけで、その特殊な構造によって空気を含ませながら注ぐことができ、劇的にワインの味がかわるらしい。そんなことを聞いてしまったら気にならざるをえないじゃないですか。
 ワインエアレーターにも種類はいくつかあるんですが、いろいろと調べてみたところ、王道はLusciouz(ルーシャズ)というメーカーの「ポアラー2」という商品らしい。ただしお値段が税込みで3850円と、気軽に買えるほど安くはない。そもそもさっきから言ってますけども僕、本当ワインのことがわからない男なので。でもでもでも、やっぱりどうしても気になる! まぁいつものことなんですが、買っちゃいましたよ。欲望に負けて。

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商品到着

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うおお、かっこいい

 すぐに我が家にやってきたポアラー2様。専用の箱にきっちりと収まる美しいフォルムを見た時点で「買って良かった」と思えるかっこよさです。しかも驚いたのが、付属の説明書にあった「安心の一生涯保障!!」という言葉。え? 一生涯? 我が目を疑えど、確かにそう書いてある。こちらの不手際による故障や紛失などでなく、普通に使っていて不具合が生じたら、製品が製造されている限り新品と交換してくれるんだそうです。なんて良心的な企業なんだ……。

いろんなお酒をデキャンタージュ

 と、使う前から惚れてしまいそうなポアラー2なのですが、肝心なのはその性能ですよね。今回は、基本の赤ワインに加え、購入したサイトのレビューで「日本酒も美味しくなりました」なんて情報も見たので、試してみたいお酒をあれこれ用意してみました。あ、ちなみに、炭酸が入っているものは向かないそうなのでビールやチューハイはなし。以下、あくまでワインの味のを知らない男の、個人的な感想レポートをお送りします。

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エアレーターを通して注ぐと、ジョボボボボとすごい音が

1)安い赤ワイン

 こんな僕でもワイン気分の日というのはあり、そんなとき、前に美味しかった記憶があるのと、可愛いラベルデザインが覚えやすいので買うことの多い「サンタ バイ サンタ」というチリワインの「カベルネ・ソーヴィニヨン」。お値段は500円しないくらい。まずはこれで試してみます。

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左がそのまま、右がポアラー2を通したもの

 まずはボトルからそのまま注いだものを飲んでみる。グラスを顔に近づけると、ぶどうのフルーティーな香りとともに、タンニン由来であろう渋そうな香りも漂ってきます。よ〜く味わって飲んでみる。うんうん、美味しい。美味しいけど、渋みがしっかりとあって、それからアルコール独特の苦味も感じますね。こういう味だったか。
 次にポアラー2を通したものを飲んでみる。あれ? まず香りからして違いますよ。なんというか、すごく穏やかになっている。じゃあ味はどうか。ごくり……うわー! 明らかに違う! 全体的にまろやかで、さっき感じたとげとげしさがすっかりなくなってます。それでいてフルーティーな香りはぐっと花開いた感じ。
 商品説明には「1000円のワインを6000円のワインの味に」なんてことも書いてありましたが、そもそも僕は、ワインの味と値段の関係がわかっていません。けれども、格段に美味しくなったことは確かです。商品説明を素直に信じるならば、このワインが約500円だから、3000円の味ってこと? やった、2500円儲けた!
 以下、手もとのメモを見返すと、ほとんどのお酒について同じような感想しか書かれていなかったので、駆け足でお送りします。

2)2000円クラスの赤ワイン

 スーパーで約2000円だった、オーストラリアの「ペンフォールズ クヌンガ・ヒル・シラーズ・カベルネ」。普段の家飲みでは手を出さない価格帯ですが、せっかくの機会なのでちょっと背伸びをして。「世界で唯一! ワイナリー・オブ・ザ・イヤーを28回受賞」というキャッチコピーが、なんだかよくわからないけどすごそうだったんでチョイスしました。

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どんどん飲み比べます

 するとまず、普通に飲んだ時点でモノが違うことがわかる。数百円のワインとは段違いの、まるで濃厚なぶどうのスープとでも表現したい旨味の量。その後、ゆっくりと渋みや苦味がやってきて、味の余韻が長いですね。
 さてポアラー2を通すとどうか? これまた味がまろやかになり、香りが華やかになるのは先ほどと同じ。そのおかげで、長い余韻がそのまま飲んだ時よりもさらに心地よいです。うまいな〜。
 え〜と、計算によると2000円のワインは12000円の味になるから、1万儲けた! もう元とれた!

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それでは実験ゾーンへ

3)白ワイン

 そもそも白ワインはデキャンタージュには向かないそうなんですが、もう少しまろやかさが欲しいときなどに効果があることもあるそうで、試しに。リーズナブルなチリワイン「サンタ・ヘレナ・アルパカ・シャルドネ・セミヨン」の小さいのを買ってきてみました。
 飲み比べてみると、ポアラー2を通したほうが若干苦味がおだやかになったかな? というくらいで、確かにあまり大きな変化はありませんでした。

4)キンミヤ焼酎

 日頃からお世話になりまくっている「キンミヤ焼酎」。甲類ですが、よく味わうとけっこう甘みがあるんですよね。そのまま飲んでみると、その強い甘みに加え、当たり前だけど強烈なアルコール感。ところがポアラー2を通すとあら不思議。甲類焼酎さえ、ものすごくまろやかになっちゃった気がします!
 ストレートの焼酎に梅エキスを数滴たらして飲みやすくした、下町大衆酒場名物の「梅割り」なんて飲みかたがありますが、それをデキャンタージュしたキンミヤでやったら、ポカリくらい飲みやすくなっちゃって危険かも?

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かつてキンミヤのボトルにポアラー2を装着した人はいただろうか?

5)芋焼酎

 先日、ホームセンターの「カインズ」で見つけたまさかのオリジナル焼酎から、「芋焼酎 黒麹仕込み」を。飲んでみたら驚くほど本格派で美味しい焼酎だったんですが、デキャンタージュすることにより、やはり角がとれてまろやかさが増しますね。

6)ブラックニッカ

 あえてウイスキー独特の味わいが薄めなイメージの「ブラックニッカ」を選び、久しぶりに飲んだところ、あれ? ブラックニッカってこんなに美味しいウイスキーだったっけ? 失礼しました。それをポアラー2に通してみると……え? 本当に!? ストレートでじっくり味わえるくらい美味しく、もはやシングルモルト! うお〜、これは魔法だ! ついに魔法を手に入れたぞ!

 ……と、後半になるに従って酔いもどんどん加速し、まったくあてにならなくなっていく感想は話半分で聞いてもらうとして、ワインエアレーター、ものすご〜く楽しい道具でした。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco


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