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「なぜかお金がある人たち」研究|辛酸なめ子

「景気が良い人たち」の不思議

 先日、記者やライターとして長い経歴を持つ少し年上の友人と話していて、「そういえばこの30年間、原稿料って全然上がってないんですよね」と言われ、ハッとしました。物価上昇を身にしみて感じていたので、もしかしてこれが「スタフグレーション」というものかもしれません……と、書いて検索したら正しくは「スタレーション」だったことが判明し、意識の低さを痛感。友人に「いや、それどころか下がってる場合も……」と自分で言ってますますわびしくなり、少しでも景気が良い気分になりたくて、行ったこともないドバイの話をして気を持ち直しました。

 そんな時、「引き寄せサミット」というオンラインイベントに関わることになりました。「引き寄せの法則」は1900年代初頭から支持されている成功哲学。日本でも15年くらい前に『ザ・シークレット』(ロンダ・バーン著)という自己啓発作品がブームになり、今でも根強い人気です。その背景にあるのは、ポジティブな思考で描いた夢は実現する、という理念。100%信じることが重要みたいで、ついネガティブなことを考えてしまう私は成功率が低いです。

 この度、この「引き寄せの法則」がテーマのイベントに登壇する何人かの先生にお会いしたら、同じ出版や著述業にしても、かなり景気が良いことを知りました。例えば、パラレルキャリア(複業)の専門家で、オンライン配信やセミナーなどで活躍する三浦さやかさんは、『ごく普通のOLが1億円を生み出した「聞き方・話し方」の法則50』という本を出されている通り、年商1億円を達成。海外TEDに登壇したり、25カ国の方々にセミナーを実施しているとか。どうしたらそんなことができるのか全く想像できません。

家賃、3000万円

 また、漠然とドバイに憧れている身としては気になる存在が、ドバイ在住で「ミリオネアコーチ」のアマーリア香織さん。お金に関するセミナーを世界に向けて行なわれている方です。オンラインでお会いしたのですが、ミステリアスなセレブオーラを放つ美女でした。インスタを拝見したらカンヌ映画祭のレッドカーペットにゴージャスなドレス姿で登場したり、海外TEDにも登壇されたり、まぶしすぎる写真が多数。どうやらこの界隈は、億単位で稼ぎながら海外のTEDに出る、というのが成功の一つの指標のようです。

 ドバイの話を伺うと、家賃も超ゴージャスな豪邸だと月3000万円くらいするとか、息子の友だちのおんぞうの誕生パーティはリムジンやクルーザーを借りて盛大に行なわれる、といった異次元の暮らしぶりを知りました。ドバイ住人は皆さん裕福だから心に余裕があり、レストランで少し席を立つときも、バッグは中の財布が見えても気にせず開けっ放しで行かれるそうです。もしかしてノーブレス・オブリージュ精神で、貧しい人は財布をってもいいよ、ということでは……ないですよね。実際は、窃盗の刑罰が厳しいこともあって、治安がかなり良いそうです。

 別の登壇者、右脳の潜在能力を使った「瞬読」という速読法を開発した山中恵美子さんは、本がベストセラーになり、塾を30校も経営。今は自由に毎月のように海外に行きながら充実した生活を送っています。仕事を安定させて好きな時に海外に行ける、というのも憧れのライフスタイルです。

「スピリッチ」vs. 精神修業

 また、最近はスピリチュアルでリッチな人生を実現する「スピリッチ」という概念がスピリチュアル界ではやっているようです。私などは古い体質なのか、ストイックに精神修行するのが良い、という考えでしたが……。「引き寄せの法則」を使って、宇宙にお願いすることで願いを次々と叶えていく……。そんな新時代のカリスマが、スピリチュアル・ユーチューバーことスピチューバー美湖さんです。この宇宙のすべての情報が記録されたアカシックレコードにアクセスできる能力の持ち主だそうです。この方も華やかな雰囲気で、ドバイで着物のファッションショーに出たり海外で講演されたりと、素敵な生活を送っていてまぶしいです。やはり成功者はドバイに引き寄せられるのでしょうか……。「スピリッチ」、すっかり乗り遅れた感が。

 これまで、一般的にはお金の話題はつつしむ、という風潮がありましたが、「引き寄せサミット」の出演者の方々を見ると、収益を堂々と言っていたり、お金が大好き感を出していて、それがまたお金に愛される秘けつなのかもしれないと思いました。あまり儲かっている感を出すと友人知人に借金を申し込まれたり、詐欺に遭う危険性もありますが、「引き寄せの法則」は、類は友を呼ぶという面もあるので、自分が志を高く持てば変な人は寄ってこなくなるのかもしれません。

やっぱり、愛

「引き寄せサミット」が始まってから、何人か気になる登壇者の話をオンラインで聞いてみました。

『ザ・シークレット』を翻訳した山川こう・亜希子夫妻は、精神世界の本を多数翻訳していて、80代でも活躍し続けているスピリチュアル界のレジェンドです。山川紘矢さんのお話は、「愛と感謝」の大切さを説くという心にしみる正統派な内容でした。

「ありがとうは愛の言葉。愛の波動が高まれば、あなたの欲しいものはみんな引き寄せられてきます」
「この世の中は愛しかないんです。ひとつわかれば全てがわかります。宇宙が神なんです。ひとりひとりはみんな神の分身である。神のエージェントなんです」

 など、格言連発。山川ご夫妻も豊かさを引き寄せていて、つい最近も、何年も前に出した『ザ・シークレット』の続編『ザ・マジック』が、有名なYouTuberの紹介でまた動き出して1日に700冊売れるという、まさにマジックなできごとがあったとか。あやかりたい思いです。

 スピチューバーさんのセミナーはフレンドリーな雰囲気で、聞く人の心を掴む話術に感じ入りました。

「今しんどい方も大丈夫。私たちは波動が共鳴してるんだよ」
「愛とは感じる心だと思うの。すばらしいね~みんな。マジで感動してる」

 などと親身に語りかけると、参加者からは「美湖ちゃんかわいい」「美湖ちゃんの言う通りでした」といったリアクションが。空港で迷って不安だったエピソードなど、自分の弱さをさらけ出すことでファンの心を引き寄せます。またあのタメ口が聞きたくなって動画を見てしまいそうです。私にはなかなかできない話術です。

「お金がポン!」のポジティブ・スパイラル

 ドバイのミリオネアコーチで「お金の女神」、アマーリア香織さんのお話も印象的でした。お金とマインドについての講座は、15カ国に3700名の受講生がいて、1万人規模のオンラインイベントにも登壇。そんな華麗なアマーリアさんも、結婚当初は夫が作った1億円の借金を返済するのに忙しい日々。お金に振り回される人生を生きていたそうです。お金がないということがいかに人の心をすさませるか身を持って経験し、お金についての本をたくさん読んで勉強。そうしているうちに「お金の本質」を掴まれたそうです。

「お金はよく切れる包丁と同じ」で使い方を間違えると不幸になる。日本人はとくに「お金は汚い」とかお金に対するメンタルブロックがあるので、それを外し、お金と相思相愛になることを考えていたら、金運が良くなっていったとか。自分が心から望むことを知り、良い使い方をする。お金を大切な人のように扱うのが大切だそうです。

「貯め込むとお金のエネルギーが死んじゃう。お金さんに喜んで旅をさせましょう。何か買うときは、欲しいものと交換してくれてありがとう、と思って。旅をしてまた倍になって戻ってきてね、と思うとそのエネルギーが戻ってきます」と、アマーリアさん。

 お金はエネルギーなので、お金の形態以外で、チャンスや人として戻ってくることも。アマーリアさんはその現象を「お金がポン!」と呼んでいるそうです。お金のポジティブなスパライルに入ると「ポン!」に次々恵まれるとか。

 私も「お金がポン!」と心で唱えていたら、その日、なぜか夢の中でお金をボラれました。バーの会計で店員さんに「もっと出せるでしょう」と、お札を次々要求されるという……。もしかしたら私のお金に対する貧乏症のブロックを浄化してくれた夢だったのかもしれません。かなりリアルな感覚の夢で、起きてからしばらく心が乱れていました。

基本がいちばんむずかしい

「引き寄せサミット」の目玉は、『ザ・シークレット』の映画にも出ていたマリー・ダイアモンドさんのセミナー。名前自体も豊かさがみなぎっている彼女は、引き寄せを実践しているスピリチュアルティーチャーで風水研究家でもあります。引き寄せで重要なのは、生まれながらに持つ運命や、自らの行動、それから身の回りの環境だというお話でした。

「あなたの家は三次元のビジョンボード(夢や目標を書くボード)のようなもの。家に帰ってきて最初に目にするものが影響を与える。それは乱雑に脱ぎ捨てられた衣服かもしれません」

という耳が痛いお言葉が。環境が大事、という意味では、寒々しい雪景色の絵を寝室に飾っていた夫婦がいたのですが、結婚生活に冬が到来し、冷たい関係になってしまった実例などがあるそうです。

「マインドは見たものを真実と受け止めます」。マリー・ダイアモンドさんは、夢を叶えたくて、ベルギーから L.A. に引っ越して、オスカー像に似たオブジェを飾り「何百万人もの人が観る映画に出たい」とビジョンボードに書いたら、数週間以内にハリウッドから電話がかかってきたとか。風水について映画版『ザ・シークレット』で話すチャンスに恵まれ、そのあと映画は大ヒット。さらに、アメリカの超人気トーク番組で司会を務めるオプラ・ウィンフリーと一緒にいる風の写真を合成して作ったら、しばらくしてオプラ・ウィンフリーの番組から出演依頼が来たそうです。次々と夢を叶えているマリー・ダイアモンドさん。世界とつながるためには地球儀を部屋に飾ることがおすすめだとか。

 それで言ったら、私の部屋には地球儀もあるし、ときどきノートに「増刷します」とビジョンを書いているのですが、何がブロックになっているのか……。

 なかなか次のレベルにいけない人には、環境を整えることをアドバイスしているというマリー・ダイアモンドさん。

「最初にすべきことは整理整頓です。ときめくかどうかではなく、まだ使うか、もう使わないかで処分しましょう。そうするとビジョンボードが力を発揮します。家の中を変えるのが最も簡単です」

 自分にとっては最も難しい気がしますが、やはり開運の基本は、部屋を片付けることなのでしょうか。心の中で薄々感じていましたが、目をそらしてきた、重要な真理。「引き寄せの法則」を発動させるため重い腰を上げ,ホコリをかぶっている台を拭いたり、机周りに散乱している付箋をまとめたり、服を処分したりしました。夢の中で仕事依頼されるという夢オチに。果報は寝て待ちます。


今月の言葉

豊かさを引き寄せるためには、物理的にも精神的にもスペースが必要です。

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