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【39位】ジェームス・ブラウンの1曲―ブランニューでヘヴィーな「パパ」が踊るぜ! 吠えるぜ!

「パパズ・ガット・ア・ブランニュー・バッグ」ジェームス・ブラウン(1965年6月/King/米)

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Genre: R&B, Soul, Funk
Papa's Got a Brand New Bag - James Brown (June, 65) King, US
(James Brown) Produced by James Brown
(RS 71 / NME 154) 430 + 347 = 777

ソウル連続、しかも前回の「ザ・トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」と同じ月にリリースされた――という状況が過去の現実世界にあったことが、いまとなってはまるで夢のようなのだが――スペシャルに「ダイナマイト」なナンバーがこれだ。すべてのファンク音楽の始原、だからつまり、すべてのヒップホップが生じるためのビッグ・バンの、最も初期の瞬間に属するのがこの1曲。だからスコアも神懸り的に「777」とめでたくゾロ目。まさしく宇宙からも祝福された、ジェームス・ブラウンの代表曲のひとつだ。

「パパの新品のバッグ」とは、なにか。それは「新しいリズムとダンス」を指す。ここの「パパ」はJB本人と思っていい。このときすでに30過ぎ、すでにデビュー10年選手。成功を手にしてはいたものの、たとえばモータウンから続々と登場してくる「ヤング・ソウル」なスターたちからすると、明らかにオジサンだった。だからこそ「オジサンにしかできない」方法で、ソウル音楽の未来を鮮やかに切り開いたナンバーが、これだ。

反復するリズム。ときに効果音のように叩きつけられ、聴き手をあおり、焚きつけるヴォーカル。そしてなにより「あの」ギターだ。この先ずっと、まさに人生を終える瞬間までJBの後ろで弾き続けることになるギタリスト、ジミー・ノーレンが初めて御大の録音に参加した1曲がこれだ。ゆえにタイトル・フレーズをJBが吠えた刹那、彼のギターが素早く鳴り響く。「ジャカジャカジャカジャカ――」というあれが、熱狂の渦を生んだ。ノーレンのギター、ミュート弦のカッティングも交えてかっちり16ビートを刻む技は「チキン・スクラッチ」などと呼ばれて、ファンク・ギターの基礎となっていった。

この曲は、ビルボードHOT100の8位まで上昇した。JBにとって初のトップ10シングルだ。R&Bチャートでは首位を8週独占。さらにはグラミー賞のベストR&Bレコーディング賞まで彼にもたらす、大成功作となった。そしてここから「ソウルのゴッドファーザー」が、「ファンキー大統領」へと躍進していく、栄光の道程が本格化する。

JB名曲のつねとして、当曲もとにかくサンプリングやカヴァーされ、後進に大きな影響を与えた。なかでも変わり種として僕が忘れがたいのが、英バンド、ピッグバッグによる「パパズ・ガット・ア・ブランド・ニュー・ピッグバッグ」(81年)というパンキッシュなファンク・インストだ。これが全英3位のヒットとなったのは、「名前引っかけ」による、ファンク大明神の霊験あらたかさゆえだったに違いない、と僕は考えている。

(次回は38位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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