はじめに
不安型愛着スタイルとは
「人に気を遣いすぎて、疲れてしまう」
「自分のことが嫌われていないか、過度に気にしてしまう」
「何事にも過敏で傷つきやすい」
といったことで苦しんでいる方はとても多い。
そういう傾向を持つ方は、自分が一生懸命人に気を遣い、サービスする心理の根底で、自分のことを実際よりも低く、つまらない存在と見なしていて、自己評価や自己肯定感が低いこともしばしばだ。
そのため、人から認められているとか、受け入れられているとか、愛されているということを確かめないと、自分の存在価値を保てない。
ちょっとでも悪い反応が返ってくると、自分の価値がなくなったように感じてしまい、落ち込んだり不安に駆られたりしやすい。
こうしたタイプの人の根底にしばしば認められるのが、「不安型愛着スタイル」である。
不安型愛着スタイルの人は、寂しがり屋で、取り残されることを恐れている。
人に気を遣って合わせてしまうのも、機嫌を損じないように顔色をうかがい、ついサービスしてしまうのも、相手に悪く思われ、見捨てられることを恐れているからだ。
自分の力だけでは頼りにならないので、誰かに頼りたいと思ってしまうのだ。実際には、頼りになりそうな相手こそ、人生の躓(つまず)きの石になることも多いのだが。
孤独や孤立をそこまで恐れる背景には、何らかの見捨てられた体験や否定され続けた体験があって、その出来事から何年も何十年も経っても、その人を支配してしまっている。
見捨てられまいと、あなたの心遣いや愛に値しない人にまで、つい機嫌を取り、しがみついてしまうのだ。
愛着障害の核心を攻略する
一般にもその存在と影響が広く認識されるようになった「愛着障害」。
中でも、身近な問題となっているのは、比較的軽度な愛着障害である「愛着スタイル」だ。
その核心ともいえるのが、「不安型愛着スタイル」で、人の顔色や気持ちに対する敏感さや、傷つきやすさ、安心感・自己肯定感の乏しさなどを特徴とする。
繊細で、共感性に優れ、サービス精神旺盛で、優しく、献身的な一面とともに、依存しやすかったり、攻撃を受けやすかったり、利用や搾取をされやすいといった弱点を抱え、気疲れや自己犠牲が限界を超えると、心身の不調を来し、ときには別人のように怒り狂う面も持つ。
男性でも一割五分、女性では二割近くの人が該当すると推測される不安型愛着スタイルについての理解と知識なしには、職場でも家庭でも、良好な関係を維持することは至難の業である。何気なく導火線に火をつけてしまい、大やけどを負うこともしばしばだ。
昨今では、ご自分の不安型愛着スタイルを自覚され、それを克服したいと、専門的な治療やサポートを求める方も多い。
本書では、不安型愛着スタイルを持つ人に対する対応の仕方とともに、不安型愛着スタイルの克服や治療についても、大幅な紙数を使って詳述した。
私自身の臨床経験にとどまらず、広い角度から愛着スタイルや愛着トラウマの改善に有効な方法を知っていただくため、心理カウンセラーとして活躍する河野光世氏、倉成央氏、古川綾子氏、岩崎恭子氏、魚住絹代氏ら各氏からもご教授をいただき、長年取り組まれてきた経験のエッセンスを盛り込ませていただいたことを、感謝の気持ちとともに記しておく。
是非参考にしていただき、ご自分に合ったアプローチや考え方に出会われる一助となればと思う。
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不安型愛着スタイル 目次
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以上、光文社新書『不安型愛着スタイル』(岡田尊司著)より一部を抜粋して公開しました。
光文社新書『不安型愛着スタイル』(岡田尊司著)は、全国の書店、オンライン書店にて好評発売中です。電子版もあります。
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著者プロフィール