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岡田尊司著『不安型愛着スタイル――他人の顔色に支配される人々』のまえがき&目次を公開|光文社新書

・自己肯定感が低い
・人に気を遣いすぎて、疲れてしまう
・自分が嫌われていないか、過度に気にしてしまう
・感覚が過敏で、体調を崩しやすい……etc.

数々の生きづらさの裏にある、本当の原因とは…? 
光文社新書の新刊不安型愛着スタイル――他人の顔色に支配される人々』(岡田尊司著)から、まえがきと目次を公開する。


はじめに

不安型愛着スタイルとは


「人に気を遣いすぎて、疲れてしまう」
「自分のことが嫌われていないか、過度に気にしてしまう」
「何事にも過敏で傷つきやすい」

といったことで苦しんでいる方はとても多い。

そういう傾向を持つ方は、自分が一生懸命人に気を遣い、サービスする心理の根底で、自分のことを実際よりも低く、つまらない存在と見なしていて、自己評価や自己肯定感が低いこともしばしばだ。

そのため、人から認められているとか、受け入れられているとか、愛されているということを確かめないと、自分の存在価値を保てない。

ちょっとでも悪い反応が返ってくると、自分の価値がなくなったように感じてしまい、落ち込んだり不安に駆られたりしやすい。



こうしたタイプの人の根底にしばしば認められるのが、「不安型愛着スタイル」である。

不安型愛着スタイルの人は、寂しがり屋で、取り残されることを恐れている。

人に気を遣って合わせてしまうのも、機嫌を損じないように顔色をうかがい、ついサービスしてしまうのも、相手に悪く思われ、見捨てられることを恐れているからだ。

自分の力だけでは頼りにならないので、誰かに頼りたいと思ってしまうのだ。実際には、頼りになりそうな相手こそ、人生の躓(つまず)きの石になることも多いのだが。

孤独や孤立をそこまで恐れる背景には、何らかの見捨てられた体験や否定され続けた体験があって、その出来事から何年も何十年も経っても、その人を支配してしまっている。

見捨てられまいと、あなたの心遣いや愛に値しない人にまで、つい機嫌を取り、しがみついてしまうのだ。


愛着障害の核心を攻略する


一般にもその存在と影響が広く認識されるようになった「愛着障害」

中でも、身近な問題となっているのは、比較的軽度な愛着障害である「愛着スタイル」だ。

その核心ともいえるのが、「不安型愛着スタイル」で、人の顔色や気持ちに対する敏感さや、傷つきやすさ、安心感・自己肯定感の乏しさなどを特徴とする。

繊細で、共感性に優れ、サービス精神旺盛で、優しく、献身的な一面とともに、依存しやすかったり、攻撃を受けやすかったり、利用や搾取をされやすいといった弱点を抱え、気疲れや自己犠牲が限界を超えると、心身の不調を来し、ときには別人のように怒り狂う面も持つ。

男性でも一割五分、女性では二割近くの人が該当すると推測される不安型愛着スタイルについての理解と知識なしには、職場でも家庭でも、良好な関係を維持することは至難の業である。何気なく導火線に火をつけてしまい、大やけどを負うこともしばしばだ。


昨今では、ご自分の不安型愛着スタイルを自覚され、それを克服したいと、専門的な治療やサポートを求める方も多い。

本書では、不安型愛着スタイルを持つ人に対する対応の仕方とともに、不安型愛着スタイルの克服や治療についても、大幅な紙数を使って詳述した。

私自身の臨床経験にとどまらず、広い角度から愛着スタイルや愛着トラウマの改善に有効な方法を知っていただくため、心理カウンセラーとして活躍する河野光世氏、倉成央氏、古川綾子氏、岩崎恭子氏、魚住絹代氏ら各氏からもご教授をいただき、長年取り組まれてきた経験のエッセンスを盛り込ませていただいたことを、感謝の気持ちとともに記しておく。

是非参考にしていただき、ご自分に合ったアプローチや考え方に出会われる一助となればと思う。

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不安型愛着スタイル 目次

はじめに
 不安型愛着スタイルとは
 愛着障害の核心を攻略する

第1章 不安型愛着スタイルの特性

1.愛着不安が強い
 顔色や相手の反応に敏感
 承認欲求や見捨てられ不安が強い
 心理的な支配を受けやすい
 厳しいはずの上司の意外な親切に――亜佑美さんのケース
2.寂しがり屋で一人が苦手
 自分を自分で支えられない
 寝かしつけてくれる人が必要だったサガン
 何もかも話さずにはいられない
3.自己肯定感が低く、自分が嫌い
4.求めすぎて、反応が極端に

 評価が裏返りやすい
 完璧主義になり、ほどほどが苦手
 理想化と幻滅、依存と攻撃のパターンに陥りやすい
 独占欲が強く、三角関係が苦手
 パートナーや子どもとの関係が不安定になりやすい
 子どもの問題から自分の課題に気づく――怜果さんのケース
5.客観視が苦手で、悪い点にばかり目が向いてしまう
 感覚が繊細で、言葉にも敏感
 痛みや苦痛に弱い
6.よく気がついてサービス精神が旺盛
 計算ができるウマの秘密
 気配りの才能にもつながる
 欽ちゃんの場合――芸能人にも多い不安型愛着スタイル
 人の助力を得る不思議な能力
 欽ちゃんを救ったのは

第2章 不安型愛着スタイルを生む要因と背景

 その正体はオキシトシン飢餓
 一、二歳の時点ですでにその兆候が

◇愛着が傷つけられる事態に巻き込まれた場合
(1)愛着していた存在がいなくなった場合
   モンゴメリの場合
(2)愛情を奪われる体験
   ハンナ・アーレントの場合
(3)横暴な父親とその顔色を見る母親
(4)近年は母親の顔色に支配されたケースが多い
   ①情緒不安定な母親
   ②自分が中心でないと機嫌が悪い母親
    サガンの愛情飢餓と母親との関係
   ③自分のルールを押し付けてしまう親
    適応障害の裏に見えてきた母親の押し付け――麻奈美さんのケース
(5)いじめられた体験や恥辱的な体験

◇遺伝要因や生理学的・脳機能的要因
(1)遺伝子タイプが不利な環境要因の影響を左右する
(2)右脳優位で、感情に流されやすい特性

 不安型愛着スタイルの判定

第3章 不安型愛着スタイルのサブタイプ

1.依存性タイプ
2.強迫性タイプ

   気配りと責任感の人、リンカーン
3.回避性タイプ
4.境界性タイプ
5.自己愛性タイプ

   ココ・シャネルの場合
   自己愛性を帯びた不安型を生み出すのは
   岡本太郎の場合
6.ADHDタイプ
   やんちゃで衝動的だったサガン
   気を遣いすぎて潰れてしまう――朱美さんのケース
7.ASDタイプ
   嫌でもないのに仕事が続かない――瑠里花さんのケース

第4章 不安型愛着スタイルへの対応とサポート

 第三者として関わる場合には
 「大丈夫」は必ずしも「大丈夫」ではない
 親密になるほど、依存と献身のバランスに注意
 優しかったパートナーを夜叉に変えてしまったのは――妙子さんのケース
 悪い異性やカルト、薬物などへの依存から救い出すには
 長年苦しんだ女性が、母親のために流した涙――可奈美さんのケース

第5章 不安型愛着スタイルの克服

1.問題に気づく
 不安型愛着スタイルに気づく
 これまでのスタイルを捨てるときが来ている
 世界の図式が根底から覆る
 「愛情」が子どもの手足を縛る
2.距離を取り安全を確保する
 反抗と怒りの段階
 母親に振り回されてきた娘の初めての反抗――絵美さんのケース
 物理的に距離を取る
 母親に尽くして三十年――千佐子さんのケース
 心理的距離を取るための技術
 ノーが通じない相手
 二つの愛着アプローチ
3.克服のための取り組み
 相手にとっての「良い子」をやめる
 何を目指せばいいのか――「ほどよさ」を取り戻す
 ほどよさは、共感と客観視のバランスで生まれる
 自分を振り返る習慣
 マインドフルネスや瞑想も自己モニタリング効果がある
 第三者に話して、整理する
 問題を切り分ける二つの快刀
 感情が激しやすく、振り返りが苦手――「二つの快刀」で変わった彩さんのケース
 対等な関係を築く練習
 受容しすぎは、相手の悪い反応を助長する――佑子さんのケース
 結果を予測する
 思考を再構築する――リフレーミング
 理想化という支配――結衣さんのケース
 「理想の存在」ではなく、安全基地を手に入れる
 安全基地になるための条件
 優しさと揺るぎなさと
 自分の歴史、家族の歴史を語る
 自立への挑戦
 「帽子を作りたいの」の一言からすべては始まった
 本来の自分の強みや価値に気づく――自分の認識の枠を広げる
 サバイバーだからできること
 長い苦しみの後でたどり着いた仕事――潤子さんのケース

第6章 愛着障害の心理療法

 愛着スタイルと愛着トラウマ
 改善のための三つのアプローチ
 子育てにのめり込んでいた母親の自立と脱皮――彩さんのケース(続き)
 始めるに当たっての二つの大事なこと
 メンタライゼーション・ベースト・トリートメント(MBT)
 弁証法的行動療法
 ソマティック・エクスペリエンシング(SE)
 愛着のカウンセリング
 ホログラフィートーク
 ブレインスポッティング(BSP)
 TFT(タッピング、ツボトントン)
 HRV(心拍変動)呼吸
 両価型(不安型)愛着改善プログラム

最終章 試練が成長を生む 

【主な参考文献】
【愛着スタイル診断テスト】

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以上、光文社新書『不安型愛着スタイル』(岡田尊司著)より一部を抜粋して公開しました。


光文社新書『不安型愛着スタイル』(岡田尊司著)は、全国の書店、オンライン書店にて好評発売中です。電子版もあります。

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著者プロフィール


岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで困難な課題を抱えた若者に向かい合う。現在、岡田クリニック院長(枚方市)。日本心理教育センター顧問。著書に『愛着障害』『回避性愛着障害』『愛着障害の克服』『死に至る病』(以上、光文社新書)、『母という病』(以上、ポプラ新書)、『夫婦という病』(河出文庫)、『パーソナリティ障害』(PHP新書)、『アスペルガー症候群』(幻冬舎新書)、『発達障害「グレーゾーン」』(SB新書)など多数。小笠原慧のペンネームで小説家としても活動し、『DZ』『風の音が聞こえませんか』(以上、角川文庫)、『サバイバー・ミッション』(文春文庫)などの作品がある。


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