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「獄激辛」が無理だったので、普通のペヤングで飲んだ話 (つつまし酒#52)

ストゼロおともに獄激辛退治、のはずが……

 美味しいことは知っているんだけど普段なかなか食べないもののひとつに、カップ麺/カップやきそばがあります。基本酒飲みなので、何かそれ一食で満腹になってしまうことを避けたい。その結果、なかなか手を出すタイミングがない。月に一度食べれば食べたほう。そんな僕に「試してみないわけにはいかない」と思わせたのが、今、巷で話題の「ペヤング 獄激辛やきそば」でした。
 僕、辛いものが大好きなんですよ。本場系の中華料理屋に行って、「水煮牛肉」なんていう、水煮とは名ばかりの、丸のままの赤唐辛子がゴロゴロと入った煮物の唐辛子をバクバクと食べて、同行者を引かせてしまうくらい。また、いろんな方と飲みの場をともにした経験上、「辛いものには強いほう」という自負もあった。そんな中、ネットなどで「これは本当にヤバい」「気軽に販売しちゃダメなレベル」なんて意見を見てしまったら、さすがに見すごせないでしょう。「ペヤング 獄激辛やきそば」。
 というわけで、何気なく寄ったコンビニで売っているのを発見し、買ってみました。で、ある日の仕事後、こいつをやっつけてやろうと思った。辛いものに強いとはいえ、激辛選手権みたいなものに出られるようなレベルでないことは自分で知っている。しかも、近年薄々感じてきていたことに、加齢のせいでしょうか。徐々に辛いものへの耐性が落ちてきている気がする。おともが欲しい。強力なおともが。そこでコンビニの酒コーナーから選んだいちばん強そうなやつが、「ストロングゼロ ドライ」。あまりの辛さに異常事態になった口中に爽快なこいつを流し込めば、スッと辛味を洗い流してくれそうじゃないですか。それに、「意外と大丈夫な辛さだったよ~」なんて場合は、美味しくおつまみにすればいい。っていうかぶっちゃけ、そのくらいな気もする。
 いざ、ストゼロおともに獄激辛退治、出陣です!

混ぜるな危険

 「ペヤング 獄激辛やきそば」を説明書き通りに作ってみると、もっと強烈に真っ赤な見た目をしてるのかと思いきや、意外に普通です。な~んだ、こんなもんか、と、麺とソースと混ぜた箸をペロリと舐めた直後に異変が。たったそれだけで、唇と舌が熱痛い!
 こいつは危険かもしれないと、おそるおそる一口。モグモグモグ……あれ? ピリ辛だけど意外に美味しい? と、快調に2口3口と食べ進めたその10秒後、ベタですが、「ギェー!」と叫んでしまいましたよね。あまりの辛さ、いや、激痛に。これはストゼロストゼロ! 頼む、ご主人様を助けてくれ! と勢い良くプルタブを引き、ゴクゴクゴク~! っと飲む。するとなんとですよ? 信じられないことに、炭酸の刺激のせいかウォッカ成分のせいか、地獄の辛さが急激に3倍くらいに増しました。……っっっ!? やばいやばい、死ぬ死ぬこれ。何が起こった? 獄激辛とストゼロ、完全に「混ぜるな危険」!

 100回くらいのうがいを経て5分後、ようやく続きが食べられるくらいの状態にまで持ち直し、獄激辛ペヤングに大量のマヨネーズをコーティング。とにかく残すのだけはしのびないと、ヒーヒー言いながら食べ進めます。頭皮からは汗、止まらない涙と鼻水。体中がガクガクと震え、呼吸も荒いからか意識朦朧。やっと食べきった頃には「もう辛いものが好きなんて言わないよ絶対」と、固く心に誓ったのでした。

あらためて原点に向きあう

 その日以来、どうも寝つきが悪い。夢枕に頻繁にペヤングが立ってくる。一回きちんとペヤングを供養しないことには、日常生活に支障をきたすレベル。そこで僕は原点に立ち返り、あらためて“オーソドックスペヤング”とストロングゼロの組み合わせを堪能することに決めました。
 決行の日。コンビニでペヤングとストゼロを買い、よし、ペヤング晩酌開始だ!

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 フタを半分開いて熱湯を注ぐ。3分後、湯切り口から熱湯を切る。ぼわんと広がる、油っぽい、粉っぽい、独特の小麦の香り。フタにへばりついたキャベツを箸で器にこそげ落とし、付属のソースとふりかけを混ぜる。あぁ、懐かしきソースの香り!
 ストゼロをプシュリと開け、いよいよペヤング飲みスタート。麺をすする。ほー、こんなにも鮮烈な甘酸っぱさと、小気味好いプリプリ食感だったのか。記憶の10倍クオリティーが高い。湯気で曇ったメガネのまま、ストゼロぐびり……うん、「混ぜても安全」! いやむしろ、「混ぜるの推奨」!
 シンプルな味つけに満足し、お好みで加えるよう指示のあったスパイスの小袋投入。ピリッとしたコショウの風味が加わり、完璧な味だ。底のほうにたまりがちなキャベツを上に持ってきながら、ひたすらモクモクモク。
 さて、僕はいやしい酒飲みなので、このままストイックにペヤング&ストゼロを堪能するのもいいんだけど、可能であれば徐々に味変しながら楽しみたい。そこで一緒に買っておいたのが、「麻辣ピーナッツ」と「温泉玉子」。どっちも合うんじゃないかと思うんですよね。
 麻辣ピーナッツを袋のまま荒くくだき、1/3ほど麺の上へ。温泉玉子もポトリ。まずはざくっと混ぜた麻辣ピーナッツ麺をすすってみると、うわー、うまい! なんか一気に本格四川料理。徐々に広がるピリッとした辛さと、ピーナッツの食感、香ばしさ。それから花椒の心地よい痺れ。さっきまでの「ペヤングならではの良さ」じゃなくて、ちゃんと店で料理を食べてるような感覚。そうそう、辛さってのはさ、これくらいがちょうどいいんだよ。これ、もしかしてすげー大発見の組み合わせなのでは?
 続いて温泉玉子を崩して麺とからめて。これはもう間違いのない濃厚さといいますか、なんも言えねー! という味わい。
 こうしてあらためてペヤング&ストゼロ飲みを120%堪能したわたくし。あの獄激辛くんもきっと浮かばれたことでしょう。めでたしめでたし。

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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)など。Twitter @paricco
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