エロス身体論|馬場紀衣の読書の森 vol.50
人間は矛盾した生き物だ。そもそも、この「身体」が矛盾している。現代人は長らく「精神と肉体」とか「心と物質」だとか分かりやすい言葉で身体を説明しようとしてきたけれど、心身二元論も物心二元論も、あるいは心身一如論にしても、あくまで抵抗の姿勢としてあるにすぎない。身体について本当に語る言葉というのを、私たちはまだ持っていないような気がする。そういうわけで、私にとって身体というのは、いつも薄膜に覆われたわけのわからない存在である。世界と関係を結び、他者と触れ合い、出あうことだけが「私