岡田尊司『死に至る病』|馬場紀衣の読書の森 vol.22
記憶というのは曖昧で、覚えていることよりも、覚えていないことのほうがよっぽどおおい。infant(子ども)の語源は「語らぬもの」を意味するラテン語 infans なのだという。語ることのできない、この小さな生きものは、語ることができないために、蔑ろにされることがある。どうせ子どものときのことだから忘れているだろう、と大人は思うかもしれないけれど、人はしっかり覚えている。愛された、という記憶を。そして、愛されている、という事実は栄養となって子どもの全身を(精神的な意味でも)血液