黒の服飾史|馬場紀衣の読書の森 vol.64
毎朝クローゼットから服を選ぶとき、どんなデザインの服を着るかよりも先に私の頭にうかぶのは、何色の服を着るか、だ。それが赤なのか青なのか黄色なのかでその日の気分が決まってしまうので、真剣にならざるをえない。ごく個人的に言って、何色の服を着るかは、これから始まる長い一日をどんな気持ちで迎えるかを決める至極重要な儀式なのである。
他人のクローゼットを片っぱしから開けてまわるなんて失礼なことはできないので、実際のところは分からないのだけれど、想像するに、誰のクローゼットにも必ず一着