なぜ倫理学は「つなわたり」になってしまうのか?|高橋昌一郎【第24回】
現代社会に「徳倫理」は可能か?哲学を創始したソクラテスは、人生において最も重要なことは「魂の健康」だと主張した。そのために彼が何よりも必要だと考えたのが「徳(アレテー)」である。よく生きるためには、「徳」で「魂」を磨かなければならない。そして、よく死ぬために、よく生きることが大切だとソクラテスは結論づけた(古代ギリシャ哲学については拙著『自己分析論』(光文社新書)をご参照いただきたい)。
ソクラテスにとって、世俗的な人間が最も求める優れた容姿や豊富な財産、仕事上の成功や身体