自家製! 国産牛100%ダブルチーズバーガー|パリッコの「つつまし酒」#230
ハンバーグ作りのハードル
家で作る料理のハードルにおいて、「ハンバーグ」ってけっこう高くないですか? 焼肉ならば、フライパンやホットプレートで肉を焼けばいいだけ。けれどもハンバーグは、ひき肉にどんな要素を加えれば正解なのかがわからないし、どんな焼きかたが正解なのかがわからないし、無数にあると噂されている“肉をふっくらジューシーに仕上げる裏技”の、どれをどう採用していいかもわからないし。
けれども近年、主に「娘が好きだから」という理由でハンバーグを作る機会が増え、そのたびにハードルが下がってゆくんです。ハンバーグ作りの。あの、いきなり極論を言ってしまっていいでしょうか? ハンバーグ作りとはつまるところ、
「ひき肉にニュアンスで好きな材料を加えて練り、焼けばいいだけ」
の、料理なんです。
いや、極論ですよ? とはいえ、それではまだ説明不十分でしょう。具体例で説明していきますね。
まずは、牛、豚、あいびき、なんでもいいので、ひき肉を用意し、それを大きめなボウルに入れます。
続いてそこへ、本当に好きなものでいいんですが、一般的にハンバーグに入れがちな材料をなんでも加えていっちゃいましょう。僕の定番は、刻み玉ねぎ、生玉子、マヨネーズ、パン粉、醤油、などを目分量。娘が小さいこともあり、あれこれ入れてみたいスパイス類は、今のところがまんしています。
で、そこに、タネがなるべく温まらないほうがいいらしいんで、これもフィーリングで、氷を1、2個放り込み、よくこねる。
そしたらこのタネを、見様見真似でそれっぽく成型し、薄めに油をひいたフライパンに並べます。
あとは焼くだけなんですが、ポイントとしては、時間はかかるけれども「最初から最後まで弱火」。これが僕が経験からたどり着いた、失敗しないコツです。
いきなりジュワーっと表面を焼いてしまって、なかがレアだったなんてことになれば、食中毒リスクがこわいですよね。ところが弱火であれば、15分とかほっておいても表面が焦げてしまうことがなく、たまに様子を見ながら、底面にいい感じの焦げ目がついたらひっくり返す。
さらにもう片面もじっくり焼いて、これまたいい感じに焦げ目がつけば焼き上がり。
いや、あるんですよ。きっと。もっと一滴残らず内部に肉汁を閉じ込めた、ナイフを入れた瞬間にブシャーっとなるような、絶品ハンバーグの作りかたは。けどさ、そういうのはもう、たまにお店で食べればいいじゃない。家でちょくちょく作るハンバーグは、焼いている間にその他のおかずを作ったり、お皿を準備したりできる、この焼きかたでじゅうぶんじゃない。
……誰に言い聞かせているのかわからなくなってきましたが、これが僕の日常的ハンバーグレシピ。
ついでにもうひとつお伝えしてしておくことがあるとすれば、もしもそれでも焼き加減に自信がない場合は、「煮込みハンバーグ」にしちゃえばいいんです。
僕の場合、市販のビーフシチューやハヤシライスのルーを使って簡易的にソースを作り、そこにハンバーグを投入することが多いのですが、もっと簡単に、市販のレトルトハヤシライスソースを使ってもいい。それをハンバーグの上からどぼどぼとかけて、しばらくぐつぐつと煮込めば、さすがにきちんと火は通るでしょう。
どう考えたってうまいしね。こんなものは。
自分で作ればいいのでは?
毎度のことながら前置きが長くなりましたが、今回はここからが本番。
ハンバーガーチェーンの期間限定メニューや、本格高級ハンバーガー店で、「国産牛100%バーガー」を大々的に押し出していること、ありません? さぞやすごい美味しさなんだろうなと。ふだんマックのチーズバーガーで喜んでいる身としたら、とても手が出ないというか、特別なときにしか食べられないよなぁ。じゃあその特別なときっていつ? と考えたら、なかなか来そうもないっていう。
すいません、そういうハンバーガーが好きな方からしたらケチくさい話ですが、僕にとって国産牛100%バーガーって、なんだかそんな存在なんです。
ところが! 先ほどの「ハンバーグ作りは意外とハードル低い理論」を使えば、もっと気軽に作れるじゃないですか。自分で国産牛100%バーガーを!
思いついたら走り出してましたよね、スーパーマーケットに向かって。で、おあつらえ向きに見つけましたよね。半額の「国産牛切り落とし」を。
この時点でもう1000円超えてるじゃん。それに加えて手間を考えたら、本格高級ハンバーガー店で食べたほうがよくない? という心の声は積極的に無視していきましょう。こういうのは行程も含めて楽しむもの。かつ、本来なら肉だけで原価2000円越え。そんなハンバーガー、食べたことないもんね。
ハンバーガーらしさとは
ではでは、レッツクッキング。まずはこの肉を、フードプロセッサーで荒めのひき肉にしていきましょう。
国産牛100%がコンセプトなわけで当然、今回つなぎ類は一切入れません。一応塩コショウだけはするけど、それでも99.9%以上の純度は保たれているはず。さっそくこれを、1枚だと巨大になりすぎてしまいそうなんで、2枚ぶんに分けて焼いていきましょうか。
その他の要素としては当然、具材とバンズ。そのあたりのパートにまでこだわりだすのは次回以降にするとして、それっぽいものを揃えていきましょう。
具材はなんだろう、チーズとピクルスは入れたいな。野菜は、トマトは好きだけど、入れるとフレッシュな存在感が出すぎて肉の印象を薄めてしまいそう。となると、よく焼いた玉ねぎかな。って、さっきの写真に写ってたのでネタバレしてますけどね。プラス、食感にアクセントを出すため、レタスも1枚くらい挟んでやりましょうか。
続いてバンズ。これがなかなか見つからない。スーパーやパン屋さんへ行っても、普通に惣菜バーガー的なメニューはあるのに、肝心の単品バンズがなく、あるのはマフィンばかり。なぜなんだ日本! というわけで、僕の観測範囲のなかで形がいちばんそれっぽかった、フランソアというメーカーの「国内産小麦でつくったお米のブール」というのを買ってきてみました。米粉が16%配合されているらしくて少しずっしりとした重みですが、いろいろとこだわりが書かれていて単純に美味しそう。
肉を焼きつつ、こちらも別フライパンでバタートースト風にしておきましょう。
それではいよいよ、すべてを合体させる時がやってきました。バンズの上にレタス、チーズ、ハンバーグ、ケチャップ、マスタードをたっぷりとかけて。さらにチーズ、ピクルス、ハンバーグ、玉ねぎ。仕上げにもう一度ケチャップ&マスタード。
で、これらにバンズでフタをして、あまりの具の多さに立っているのもやっとそうだったので、急遽焼鳥用の串を刺したら、完成! 自家製国産牛100%ダブルチーズバーガー
さぁあとは、ちょうど家にストックのあった瓶コーラでコークハイを作り、ハンバーガーにかぶりつくのみ。専門店的な包み紙がなくて食べづらいこと火のごとしですが、ここは家。口の周りが汚れることなど気にせず、思いっきりいただきます!
すると……うおー! これがもう、シンプルにうまい! なんとなく自分で作ったってことで油断してた、その10倍はうまい!
さらに驚いたのが、油断してた100倍「ハンバーガー」! パティに高級国産牛の旨味を感じまくるんですが、つなぎを入れてないからちょっとぼそぼそ感もあって、そこがものすごくハンバーガー。そうか、ハンバーガーのパティのそれらしさって、つなぎを入れないことによって際立つのかもしれない。つまり、普段どおりに作ったハンバーグをパンに挟んだものは、昔ながらのパン屋さんにあるような、お惣菜バーガー。それをストイックに肉100%にすると、ハンバーガーらしい味わいになると。
バーガーはひと口食べた時点で崩壊をはじめますが、それによってすさまじい肉々しさ、チーズの塩気とコク、玉ねぎの甘み、ピクルスの香り、ケチャップ&マスタードの甘酸っぱさなどがどんどん融合し、食べれば食べるほどにうまくなっていきます。正直、280g全部ぶっこんでしまった肉を食べきれるかの心配もあったんですが、なぜか全然重さがない。余裕。
こうなったらもはやいいやと、グラスが汚れるのも気にせずにべたべたの手で飲むコークハイの、またうまいこと……。
はっきり言って今回はやりすぎというか、この半分くらいの肉の量で、しかも外国産の牛肉だっていいと思うんですが、それでも絶対においしく作れたはず。
自家製ハンバーガー、そんなに難しい料理じゃないし、今後は積極的に作っていこうっと。