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家オクトーバーフェスト2022|パリッコの「つつまし酒」#180
10月と言えば
朝起きて窓を開けると、どこからともなくふわりと甘い金木犀の香り。おや? とカレンダーに目をやると、早いもので、明日からもう10月ですか。いや〜、早いものですねぇ……いやいや! 早いものすぎない!? え、もう10月なの!? 今年、今まで、なにして過ごしてたっけ?
あ〜、嫌んなっちゃうなぁ、歳をとると、月日の経つのがどんどん早くなって……って、やばいやばい。このままだと、書こうと思えばいつまででも書けるおじさんの愚痴で原稿が終わってしまう。そんなことよりも前向きに、この最高の気候にぴったりの、なにかこう、美味しいつまみを食べながら一杯やって、ごきげんになりたい。いい思い出を作りたい。
と、考えていたら思い出しました。10月と言えばオクトーバー。オクトーバーと言えば、そう「オクトーバーフェスト」!
オクトーバーフェストとは、ドイツ、バイエルン州の州都、ミュンヘンで開催される、とんでもない規模の会場に、とにもかくにも酒飲みたちが集まり、朝から晩までごきげんにビールを飲みまくるという、世界最大級のお祭り。開催期間は、9月のなかばから10月の第1日曜日を最終日とする、16日間。つまり、まさに今! って、偉そうに言ってますが、別に行ったことがあるわけではないんです。
そこで今回は、人生初のオクトーバーフェストを体験しにドイツへゴー! と、気軽に行けるはずもなく(光文社さん、取材ということでいつか連れてって!)。ただ、日本でも2003年以降、公式にオクトーバーフェストが開催されるようになり、ちょうど今であれば、「豊洲オクトーバーフェスト 2022 in アーバンドック ららぽーと豊洲」が開催中。これならば行けないことはないな。よし、豊洲へゴー! といきたいところなんですが、間の悪いことに仕事の締め切りが立て込んででまして……。
ならばもう、なんとか今日の仕事ノルマを終わらせ、小さな我が仕事場で、気分だけでもオクトーバーフェストができないだろうか? 名づけて「家オクトーバーフェスト2022」! これをやっていこうと思いついたわけなんですね。なんともしょぼくれた響きのお祭りではありますが、思いついてしまうと意外とわくわくしてくるもので。
ホットプレートのポテンシャル
で、仕事終わりに駅前へ買い出しに。その買い出しに向かう道すがら、僕にはすでに“ある計画”が思い浮かんでいました。この連載でしばらく前に「缶詰温泉」というお話を書かせてもらいましたが、あれ以来思っていたんですよ。ホットプレートって、単に食材を焼くだけではなく、もっといろいろなポテンシャルのある調理器具なんじゃないかって。そこで、100均へ行き、詳しくはあとで説明しますが、おあつらえむきに使えそうなグッズを買ってきてみました。
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「グラタン&ドリア アルミプレート」と「マッコリカップ」。まずグラタン&ドリア アルミプレートは、オーブンやトースターで使えるアルミ製の調理用プレート。直火は禁止と書いてありますが、ホットプレートにのせて調理に使うぶんには問題ないでしょう。そして、マッコリカップ。恥ずかしながらその存在を初めて知ったのですが、マッコリを飲む用のカップなのかな。ただ説明書きに「空焚きはしないでください」とあり、となれば、加熱は可能ということでしょう。
もう、このへんで僕の考えていることを告白してしまいましょうかね。これらの道具とホットプレートを使い、今日の家オクトーバーフェストでは、「焼く」「ゆでる」「アヒージョ」の3通り同時調理をしてやろう! と企んでいるわけです。はたしてうまくいくだろうか。
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もっと大きなホットプレートならばアルミプレートだけでもいいのかもしれませんが、仕事場にあるのが小さなひとり用ホットプレートだけなので、こんな感じ。けどまぁ、それぞれの道具の使い勝手を確認するのには、むしろちょうどいいでしょう。
で、オクトーバーフェストといえばソーセージ!(浅いイメージ) そこだけは手を抜きたくない。なので、この日のために、こだわりの手作りソーセージ工房から、あれこれ取り寄せておいたんですよね〜! ……なんていう計画性が僕にあるはずもなく、スーパーでいろんなタイプのソーセージを買ってきました。
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それからもうひとつ。そういえば数年前、リサイクルショップで見つけ、3000円近くしたのでかなり迷ったあげく、どうしても欲しくて買ってしまった、フタつきのビアジョッキがあったよな。どう考えても使いにくそうだから、一度も使ったことはなかったあいつ、ついに今日こそ、出番な気がする。
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どうです? かっこいいでしょう? そして、ぜんぜん使いやすそうじゃないでしょう? そもそも、このくらいのジョッキのビールなんて、フタで温度変化をやわらげておく前に飲み干しちゃうし。でも、その無駄というか、余剰というか、それこそが酒を飲む楽しみのひとつじゃないですか。
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さて、家オクトーバーフェストの準備は整った。あとはもう、ひたすらソーセージをかじりつつビールを飲み、2022年オクトーバーの思い出づくりをしていきましょう!
一体これのどこが……
アルミプレートに水を注ぎ、マッコリカップにアヒージョの素とオリーブオイルを注ぎ、ホットプレートスイッチオン。5分もすると思っていたとおり、それぞれがぐつぐつと煮たちはじめましたよ。
そこで買ってきた「超あらびきソーセージ」「ピリ辛特急チョリソー」「アンティエ無塩せきソーセージ レモン&パセリ」「まるごと美味しいフランクフルト」「コリコリなんこつ&ガーリックソーセージ」の5種類を、思い思いにぽちゃぽちゃしていきます。つまりは、ボイルとアヒージョを同時調理。さらに空いたスペースでは、焼きソーセージも作っていこうというわけ!
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いや〜、考えたやつすごいわ。この3種同時調理方式。あ、考えたの自分か。と自画自賛しつつ、とにかくですね、なんの不満点もなく、ゆでソーセージや、焼きソーセージや、ソーセージのアヒージョが同時進行で調理されてゆく。あとはもう、ひたすらにビールを飲みつつそれをかじればいいだけの無限ループ、誕生ですよ。
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ビールはそれっぽく、「マルエフ」こと「アサヒ生ビール」の「黒生」を用意してみました。さて、いよいよ家オクトーバーフェスト2022、開幕!
まずはゆでソーセージから。おお〜、シンプルな超あらびきのジューシーさ、レモン&パセリの爽やかさ、チョリソーのスパイシーさ、どれもむせび泣くほどにうまいですね〜。とりわけ、なんこつ&ガーリックのコリコリ感とにんにくのパンチ。初めて買ってみたけど、これはめっけもんだわ。でまた、フランクフルト。これがなんというか、形や食感だけでなく、味がもう、ソーセージではなくあくまで“フランクフルト”なことが新鮮な発見だったんですが、その違いってなんなんですかね?
なんてひとりごとを言いながら飲む、マルエフの黒ビールがまったりとうまい!
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熱で弾け飛ばないよう、カットしてアヒージョにしたソーセージたちも、それぞれの風味がぐんと高まって最高。そんでまた、奮発して買って一緒に入れた、青森産のにんにくが、とろとろで甘くてもう……。
あ〜、このオクトーバーフェスト、楽しすぎて来年は人を呼びたいくらいだなぁ……。本家の600万人は無理だけど、ぎゅうぎゅうに無理して6人くらいは。
おっと、そうそう! さすがにソーセージだけを食べ続けるのもなんだと思って、「ザワークラウト」も用意していたんでした。まぁ、作りかたを知らないので、コンビニで買った千切りキャベツの袋に直接、マヨネーズとぽん酢をぶちこんで揉んでおいただけのものですが。
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あ〜、本家のザワークラウトがどういうものかよくわかってないけど、マヨポン味のシャキシャキキャベツ、最高! またまたソーセージが進んじゃうな〜。
とかなんとか楽しんでいたわけですが、さすがに加工肉食品。とあるタイミングでピタッと、「もう、いいな」という感覚がやってきました。
もう、いいな。あ、そういえば冷蔵庫に、割引きだったから買っておいた、「きんぴらがんも」があったよな。あれでも炙るか。あと、このジョッキも想像通り使いにくいな。もう、普通のコップにしよ。あと、黒ビールもなくなったし、ここらでいつもの発泡酒「本麒麟」に切りかえよ。
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というわけで最終的に、がんもどきとキャベツのマヨポンあえをつまみに、発泡酒を飲むという状態に落ち着いたわけですが……みなさんに逆にお聞きしたい。一体、これのどこが「オクトーバーフェスト」なんでしょうか?
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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco