楽しい楽しい駅弁大会|パリッコの「つつまし酒」#143
2年ぶりに駅弁大会へ
今年も無事「京王駅弁大会」が開催されました。京王駅弁大会とは、正式名称を「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」と言い、毎年1月、新宿の京王百貨店で、約2週間に渡って開催される定番の催し。その名のとおり、全国各地から人気の駅弁やうまいものが大集結し、期間中は常に大にぎわい。今年で57回目だというんだからすごいもんです。
酒飲みの先輩がたにこの大会ファンが多く、数年前にその楽しさを教えてもらって以来すっかりハマって、毎年訪れるのを楽しみにしていました。昨年はコロナのことがあって行けずじまいだったのですが、会場を数カ所に分けるなど、しっかりと対策をとって運営されている本イベント。今年は自分も諸々注意しつつ、顔を出してみようかなということで、先日、2年ぶりに行ってきましたよ(とかいってまたまた感染者数がすごいことになってきてますが……)。
そしてあらためて痛感しましたよね。やっぱり駅弁大会は、楽しい!
やってるな!
チョイスしたのは長崎名物の……
公式サイトによると、今年の会場は大まかに、2階が「ネット事前予約駅弁お渡し場」、4階が「輸送駅弁会場 ※一部を除く」、7階が「実演駅弁・輸送駅弁・うまいもの会場」と分かれているようです。
とある平日の午前11時に京王百貨店到着。ネット予約は特にしていないので、まずはエスカレーターで4階に上がってみる。すると、輸送駅弁会場へと向かう、先が見えないほどの長蛇の列を発見。
僕はファンとはいえマニアではなく、どうしても欲しい駅弁を並んでまで買う! というようりは、ふらふら〜っと会場をうろついて祭りの雰囲気を味わい、その場で気になった、できればあまり並ばないで買えそうな駅弁をフィーリングでチョイスする、というスタンスで大会とつきあっています。そこで、今日は4階はスルー。そのまま7階へ行ってみましょう。
やってるやってる!
すると、いちばん規模の大きい7階会場は、大人気の「いかめし阿部商店」や「551蓬莱」など、一部大行列のできているブースはあれど、人の流れを読みつつ歩けば普通に見て回れるレベル。
そうそうこれこれ! でっかい会場にずらーっとブースが並び、そのひとつひとつに美味しそうな駅弁が所狭しと陳列されている。しかも併設された調理場では、今まさにどんどんどんどん駅弁が量産されている。この祝祭感! 熱気! いよっ駅弁大会!
そんな会場を「へ〜」とか「ほ〜」とか「えっ!?」とか言いながら3周ほどして、今日は、名弁として名高いながらまだ食べたことのなかった、「鯨カツ弁当」を選んでみることにしました。しかもちょっと奮発し、通常の鯨かつ弁当に天ぷらまでのった「鯨カツ鯨天ぷら弁当」(税込1404円)を!
はるばる長崎からありがと〜
駅弁を買ったら決まって向かうのは
ふぅ、と上気した顔で会場をあとにし、さてここからは、駅弁大会に来るたびに僕が毎回勝手にやっているお楽しみタイム。マイルーティーン。
買った駅弁を手に向かうは、「バスタ新宿」!
「バスタ新宿」
バスタ新宿は、2013年に新宿南口駅前に開業した交通ターミナル。建物の内部全体が高速バスやタクシーなどのターミナルになっていて、それらを利用する人向けの巨大待合室もあり、どこへ遠出する予定がなくても、バスタ新宿へ行くだけで旅情成分を補給できるという、僕のような変わり者にはとってもありがたい施設なんです。
あぁ、旅気分
もちろん館内にはコンビニもあり、そこでお酒を買って、テラスで駅弁飲みをするのが最高に楽しいんですよね(ちなみに待合室内は飲酒禁止なので注意)。
バスタ新宿を利用するのは、基本的に目的のある人々。僕のようなのんき者は少数派。ものすごくきれいで、ベンチもたっぷり。1日中でものんびりしていられるテラスがあるのに、基本的にいつ行っても空いているんですよね。
さ〜、やっちゃうか
天気良好。準備万端。いよいよ駅弁飲みを始めていきましょう。
ちなみに「鯨カツ弁当」は、長崎の鯨専門店「くらさき」が作る、長崎駅の駅弁。秘伝のタレに漬けこんだ鯨をカツにしているので、ソースなどはかけずにそのまま食べられるんだそう。
かっこいい弁面!
どれどれ、初めての鯨カツのお味は……。
見たことないタイプのカツだ
がぶっ! もぐもぐもぐ……おー、これは、確かにうまいぞ! 質のいい鯨をしっかりと下ごしらえしてあるからか、嫌なクセはまったくなく、牛でも豚でも鶏でもない、どこか大海の荒々しさも感じるような、頼もしい味。7割肉なんだけど、3割魚でもあるような珍味っぽさもあり、酒のつまみにするにはこの上ないですよ。
さらにこの駅弁には、鯨の天ぷら、竜田揚げ、そぼろ、角煮風(?)まで入っている。天ぷらは、カツよりもさらに肉厚で、ちょっぴり上品な印象。竜田揚げは打って変わってお子さんが大好きそうな味。それぞれ衣が違うだけでこうも印象が変わるかと、いちいち楽しいです。
またこのお弁当、ごはんがつやつやでしっかりと美味しいですね。この、味濃いめのおかずと冷たいごはんをていねいに咀嚼しながら飲むという行為こそが、駅弁飲みの真骨頂! ふ〜、堪能した。
あ、ちなみに写真を見て気になっていた方もいらっしゃるかもしれません。弁当の横っちょの、丸っこいのはなんだ? と。
実は会場の「うまいもん」コーナーで気になってつい買ってしまった、熊本のレストラン「天草 海まる」が作る「うにコロッケ」というお惣菜。揚げものだらけの駅弁に、さらに揚げものをかぶせているあたり、僕が会場でいかに冷静じゃなかったかを証明しています。
しかしながらこちら、「プレミアム」(432円)と「スタンダード」(260円)と散々迷ってスタンダードにしたんですが、それでも驚くほどのうに感! なめらかなじゃがいもときめ細かい衣に包まれた、濃厚とろっとろのウニソースが、よってたかって僕をものすごく贅沢な気分にさせてくれます。こりゃ〜いいめっけもんだったかもしんない。
見つけたらまた買おう
はい。2年ぶりの駅弁大会、大満喫させていただきました。
そしてもちろん、帰りに大会のチラシもゲットしてきたので、家に帰ってからもお楽しみはまだまだ続くわけです。……え? 「お楽しみってなに?」って、そりゃあもちろん、「チラシ飲み」に決まってるじゃないですか。
チラシを眺めながら飲むだけでも楽しいのが駅弁大会
ちなみに、今年の駅弁大会は1月20日まで。他にも、1月19日からは大阪「阪神百貨店 阪神梅田本店」で「阪神の有名駅弁とうまいもんまつり」が始まりますし、全国各地のデパートやスーパーでも、プチ駅弁祭り的な催しはけっこうやってるもんです。もちろん、地元駅の駅弁を買ってどこにも行かずに食べるのもまたいいもの。
駅弁大会が最高なのは言わずもがな、駅弁飲みって、いつどこでやっても楽しいから困っちゃうんだよな〜。
パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco