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【27位】スティーヴィー・ワンダーの1曲―縁起かつぎに語呂合わせ、壁に書かれた文言もみんな……

「スーパースティション」スティーヴィー・ワンダー(1972年10月/Tamla/米)

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※こちらはドイツ盤シングルのジャケットです

Genre: Funk, Funk Rock
Superstition - Stevie Wonder (Oct. 72) Tamla, US
(Stevie Wonder) Produced by Stevie Wonder, Malcolm Cecil and Robert Margouleff
(RS 73 / NME 103) 428 + 398 = 826
※28位から25位までの4曲が同スコア

前回の「ノー・ウーマン、ノー・クライ」(26位)と同スコアで並んだ。よってルールに従い、より古いリリースである当曲が上に。なるほど言われてみれば、この両者は「同格」なのかもしれない、と僕は感じ入った――のだが、さらにあと2曲、つまり計4曲が「826点」で並ぶという椿事が出来している。ロック・ファンの集合無意識の作用なのか、ロックの神の采配か。いや、そんなことを言うのは「迷信」なのか。

いかに名曲多数のスティーヴィー・ワンダーと言えども、代表曲と言っていいナンバーのひとつは、間違いなくこれだ。アルバム『トーキング・ブック』の先行シングルとして発表されて大ヒット。63年の「フィンガーティップス・パート2」以来の、自身2度目のビルボードHOT100首位を記録。全英は11位に達した。以来、無数のアーティストがカヴァーし、あらゆる媒体で使用され続けているのだが、子供番組での起用も目立つ。そうなった発端は、73年、米PBSの名物教育番組『セサミ・ストリート』にワンダー自身が登場。そこでのすさまじい演奏が、大受けに受けたせいだ。

たしかに歌詞も教育的だ。「理解できないことを信じると、害になるよ」と告げる。それが「迷信」というものの本質であり「まったくなんの役にも立たないんだ」と。つまり、正しき信仰と科学的態度を称揚しているわけだ(ゆえに教育的なのだ)。この箴言が執拗に繰り返される。ファンキーなビートの反復のなかで。

冒頭のドラム・ビート、モーグ・シンセサイザーによるベース・ライン、そしてなんと言っても、ホーナー社のキーボード、クラヴィネットによるフレーズが、きわめて印象的だ。これらは全部「ワンダー本人」がひとりで演奏した。とくにクラヴィネット、電気チェンバロ(ハープシコード)と呼ぶべきこの楽器が「ファンキーなのだ」ということを世に広く認知させた最初の「実例」が、まさにこの「耳について離れない」フレーズだった。

この曲は、名ギタリストのジェフ・ベックとワンダーのセッションから生み出された。『トーキング・ブック』に参加していたベックは、素案状態の当曲に、あの印象的なドラム・フレーズを提案したという。そして彼が率いるパワー・トリオである、ベック、ボガート&アピスのデビュー作(73年)にもこの曲が収録された。ただ諸般の事情により、ワンダーのヴァージョンのほうが先に世に出て、決定的な大ヒットとなる。しかしベック版もハード・ロッキンで素晴らしい仕上がりなので、ぜひお試しいただきたい。

(次回は26位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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