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丸ごと! とんかつ屋サンド|パリッコの「つつまし酒」#147

サンドイッチは食べやすい

 アウトドア用の折りたたみ椅子を持って広々とした公園や川沿いなど好きな場所に出かけてゆき、そこでひとときぼーっと過ごすだけの行為に「チェアリング」という名前をつけ、数年前から楽しんでいます。
 その際、お酒を飲むことも多いのですが、おつまみに「サンドイッチ」が非常にいいんですよね。サンドイッチって、言ってしまえば「薄いパンで食べやすく挟んでくれてある味の濃いおつまみ」。そもそも、カードゲーム好きだったイングランド貴族のサンドウィッチ伯爵が、ゲーム中にでも手軽に食べられるように生み出したという逸話もあるくらいなので、そりゃあ食べやすくて当然って話なんですが、その便利さを今さら実感するという。
 最近、特に気に入っているのが、とんかつ専門のチェーン「さぼてん」の「ミックスカツサンド」。手ごろなサイズのボックスに、ヒレカツサンド、チーズミルフィーユカツサンド、エビカツサンドの3種類が入って500円。もはやこれ、食事というより酒のつまみなんじゃないかというちょうど良さなんです。

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「さぼてん」の「ミックスかつサンド」

「さぼてん」へゴー!

 そのカツサンドに限らず、地元にあるさぼてんのテイクアウト専門店が、僕は大好き。とんかつといえばロースカツ一択の人生を送ってきた僕ですが、さぼてんのロースカツは最小単位が大きな1枚で、約500円する。ところが「ひとくちヒレカツ」は、1枚税込み185円。ある日、おつまみにちょうど良さそうだなとひとつ買ってみたら、これがなんと、おつまみにちょうど良かったんです!
 サクサクの衣に包まれた、想像してたよりずっと柔らかい豚ヒレ肉。そのしっとりとした旨味がとても美味しく、ヒレカツってこんなにもいいもんだったんだとさぼてんから教えてもらったというわけで。
 これに単品の「イカフライ」165円也を加えた2点セットが、お昼ごはんのおかずにも、お酒のつまみにもすごくいい。さぼてんにおける僕の定番。可能であれば、“パリちゃんセット”として大々的にプッシュしてほしいほどに絶妙な組み合わせなんですよ。

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夢いっぱいのショーケース

 以上のようなことを、なかなかはかどらない仕事をよそにぼーっと考えていたら、突然思いついてしまった。あ! あのヒレカツとイカフライをサンドイッチにしたら、と〜っても具合がいいんじゃないの!? って。
 よし、もう仕事はいったんいいや。さぼてんへゴーだ!

カキフライサンドが絶品! イカフライは……

 というわけで、ひとくちヒレカツとイカフライ。それから「カニクリームコロッケ」(180円)、「海老フライ」(315円)、「大粒カキフライ」(195円)、の合計5点を買ってきました。
 今からこいつらを、合わせて買ってきたバターロールパンに挟んで、ぜ〜んぶサンドイッチにしてやるぞ! へへへ、こりゃ〜前代未聞、人類未到の領域だ〜。

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これぞ豪遊

 それぞれのカツに、せっかくだからと買ってきたさぼてんオリジナルソースをドボドボとかけ、切りこみを入れたロールパンに挟んでゆく。エビフライとカキフライにはタルタルソースも足してやれ。あっという間に「丸ごととんかつ屋サンド」の完成!

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大迫力!

 ヒレカツサンド、カニクリームコロッケサンドはまだわかります。が、それ以降の、カキフライサンド、エビフライサンド、イカフライサンドが未知の領域。そりゃあ、まずいってことはないだろうけど、はたして……。まぁ、とりあえず発泡酒を用意して、はしから片づけていってやりましょう。
 まずはヒレカツサンド。これがもう、いきなり感動的な美味しさ! サックサクのカツにソースの酸味と甘み。豚肉の食べごたえ。それを包みこむ、バター香るふんわりパン。僕、カツサンドって好きでよく市販のものを買うんですよ。だけど、手作り(と言っていいのか?)するだけでこんなにも美味しいとは! しかも原価、ひとつ200円ほど。これからは、家でカツサンドが食べたかったらこうすればいいんだな。
 続くカニクリームコロッケサンドも安定の美味しさ。昔ながらの街のパン屋さんの惣菜パンを思い出しますね。
 エビフライサンドなんて大ごちそう。考えてみれば、ミンチにしたプリプリの海老を使った海老カツサンドなんて、定番だもんな〜。それの荒々しい版というか、漁師のサンドイッチというか。
 そんでもって美味しさにびっくりしたのがカキフライサンド! 基本の構成がカツサンドなのでまずは見知った味がするんですが、だんだんとタルタルのまろやかさとともに、海のミルクの旨味が口に広がりだす。これが新感覚。調べてないからもしかしたらもうあるのかもしれないけど、「カキフライサンド専門店」を出したらこれ、一攫千金ワンチャンあるんじゃないすか?
 こんなに簡単に作れてしまったのに、どれもこれも絶品、かつビールがすすんでしかたないな〜。サンドイッチ飲み、あらためて最高!
 あ、最後にイカフライサンドですが、「具なし」というか「無」というか、とにかく主張の薄いカツサンドを食べたような感覚がまずやってきて、それでもめげずにもぐもぐと噛んでいると、「あ、そうだそうだ、君、いかだったよね」というおくゆかしい風味が、おずおずと顔を出します。その瞬間にくすりと笑っちゃうようなかわいい味というか、素直にごはんと合わせといたほうがいいというか。
 これはこれでおもしろい体験なので、ご興味があればお試しあれ。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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