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粒うに活用術|パリッコの「つつまし酒」#211

ついに買ってみる

 スーパーの鮮魚売り場の近くなどによく、瓶詰めの、「粒うに」や「ねりうに」と名のついた商品が売られていますよね。
 毎度、あれって、うになのかぁ。そのわりには激安だよな。だってひと瓶300円くらいだもんな。気になるな。と思いつつ、あんまり自分からすすんで買った記憶も、食べた記憶もないんです。なぜかといえばそれは、日持ちのため、原料のうにに塩や砂糖、そしてかなり高めのアルコールなどを加えてあり、その独特の風味や苦味が苦手な人も多いという話を聞いていたから。
 ただ、そんなに見かけるたびに気になってるならば、いちど食べてみればいいじゃないか、自分よ。と思い、先日、ついに買ってみたんです。

瓶詰めうにの代表的ブランド、小川の「粒うに」

 食べる前に大前提として、生うに、塩うに、粒うに、ねりうにの違いを簡単に調べてみました。
 まず、「生うに」とはその名のとおり、生のうに。超うまいやつ。ただしうには、空気にふれているだけでもどんどん溶けていってしまうくらいに繊細な食材。そこでかねてより、身崩れを防ぐ効果のある「ミョウバン」を溶かした水に浸すという方法がとられてきました。ただしミョウバンには独特の苦味があるため、近年主流になってきたのが、海水と同じ濃度の塩水にうにを浸す「塩水うに」。より生のうにの風味近く、しかも旨味が凝縮されることで人気となったそう。ここまでが生うにジャンル。
 ただ、「塩うに」はまたそれとは違って、とれたてのうにに直接塩をふって身が溶けるのを防いだ、瓶詰めなどのうに。生うにほど原型はとどめておらず、とろとろとした見た目ではあるものの、臭みが少なく濃厚な味わいが特徴。
 さて、そこに高い度数のエチルアルコールなどを加えてより日持ちを向上させたのが、「粒うに」と「ねりうに」。それぞれの違いは、うにの粒感が残してあるか、完全なペースト状にしてあるか。
 と、ここまでは調べれば誰でもわかる情報なんですが、肝心の味はどうなのか。さっそく開封してみましょうか。

まずは珍味系から

粒うに開封!
スプーンで取り出してみる

 おぉ、かなり濃いオレンジ。そして、想像よりも少しゆるめの、ねちっとした感触。香りはうに味のお菓子とかでよくかいだことがあるものを濃くしたような感じ。
 まずはそのまま味見してみましょう。舌にのせると、あ〜、確かにけっこう強いアルコール感や苦味がありますね。これはお酒が苦手な人は苦手かも。ただ幸いなことに、自分はお酒が苦手な人ではなく、しかもちゃんとうにの甘みや香りが感じられるので、すでに嫌いじゃありません。けどこれ、もっとあれこれアレンジしてみたら、さらに幅広く楽しめる食材なんじゃないかな。実際、ネットには粒うに、ねりうにを使ったレシピがいくらでもあるし。
 まぁ今回も、そういうものを参考にするのではなく、気ままに自分なりに、あれこれ試行錯誤していってみましょうかね〜。
 粒うに、けっこう甘めなので、塩気や香りにパンチのある食材と合わせるといいかもしれない。そう思い、まずは家にあった海苔の佃煮と、シンプルに混ぜてみましょうか。

間違いなさそう

 さらに、このねちっとした食感をちょっとゆるめるということもしてみたい。じゃあ、口当たりまったり系の豆腐と思いっきり混ぜ合わせちゃうとかどうかな?

「男前豆腐」適量と「粒うに」適量を
容赦無く攪拌

 味見してみるともう少しだけまろやかさと油っけがあっても良さそうだったので、オリーブオイルを少量加えてさらに混ぜ、わさび醤油を加えて完成。
 さぁ、粒うに飲みを始めよう!

どっちも超簡単だったけど、さて……

 粒うに海苔、うにがぐっと食べやすい風味になり、おたがいの味わいがいい相性で、すでに大好物。ずっと酒飲める。ただし、味がかなり濃いので作りすぎは注意かな。
 続いて粒うに豆腐。スプーンを差しこみ、すくい上げてみて驚いたんですが、周囲がひび割れながら崩れていくときの見た目が、うにそっくりなんです! 単なる偶然なんでしょうけど、これは単純にテンション上がる。

うにっぽさ!

 味は当然間違いないものの、選んだ豆腐のせいか、ちょっと甘めかな。が、どちらも、酒にも白メシにも合うことは間違いないでしょう。

どう食べてもうまかった!

 続いてうにといえば、クリームパスタ系も定番ですよね。ただ、パスタって酒のつまみにはちょっと重い。それだけで完結してしまう。そこで、パスタをえのきにおきかえた「粒うにクリームえのき」なんてどうでしょう。
 あとはそうだな、近年、ちょっといい居酒屋なんかで、生のうにと牛肉を合わせた料理なんかをたまに見るようになりましたよね。一度だけ食べたことがあり、確かに美味しかった記憶はあるけど、もうだいぶ前のことだし、味、忘れちゃったな。ちょっと作ってみますか。ただしもちろん生ではなく、焼き肉用の牛肉にうにをぬって焼くという感じにしてみましょうか。

すでにたまらない
牛にうにをぬって焼く

 粒うにクリームえのきは、オリーブオイルでさっとえのき1/2袋を炒め、豆乳、バター、粉チーズ、そしてうにを加えて煮詰め、塩こしょうで味を整えます。
 続いて塩をふった牛肉の片面にうにを塗ってフライパンで弱火でじっくりと焼き、おおよそ火が通ったらうにの面もさっと焼いて、「牛肉粒うに焼き」も完成。それらをワンプレートに盛り付けてしまいましょう。

今日も粒うに飲みスタート!

 すると、うわ、うにクリーム、これは最高にもほどがある! 普通にパスタ屋さんとかで出てきてもおかしくないくらいなソースの気がする。みんな大好きなバターやチーズの風味がとろりと広がるなかに、うにの香り。しまった、えのき、1/2じゃなくて1袋入れるべきだった!
 牛のうに焼きもいいですね。牛の味が強いから、うにの主張はそこまで強くなく、一風変わった美味しいソースという感じになります。
 洋食風にすると、ワインにもばっちり合うな〜。
 さて、最後はシメメニューとして、瓶にもおすすめと書いてある玉子かけごはんを作ってみますか。ただ、完全な思いつきアレンジで、玉子、うに、醤油少々に、わりとたっぷりめにマヨネーズも加えて混ぜ、さらにごはんと合わせてよ〜く混ぜる、という作りかたをしてみました。

マヨって強いじゃないですか
「粒うにマヨ玉ごはん」

 この「粒うにマヨ玉ごはん」が、ザ・まったり濃厚で、そこにふわりとうにの香りが加わり、これまた笑っちゃうくらいうまかったです。このためだけに今後も買ってもいいくらい。粒うに。
 というわけで、想像以上に美味しくて使える食材だった粒うに。今後もあれこれ作ってみては、晩酌のおともに活躍してくれそうです。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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