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新玉ねぎにどハマり中|パリッコの「つつまし酒」#226
新玉元年
そもそもそういう傾向が僕にはあるのですが、最近、うっかりどハマりしてしまい、毎日そればっかり食べている食材があります。それが、新玉ねぎ。
ごぞんじですよね? 春になるとスーパーなどでもよく見かけるようになる、一般的な玉ねぎよりもみずみずしそうな、白くてでっかい玉ねぎ。あれ、具体的には、普通玉ねぎは収穫後に乾燥させるところ、その過程を経ずにすぐ出荷される、旬の玉ねぎのことなんだそうです。柔らかくて辛味が少なく、生食にも向いているのが特徴。一般的に流通するのは3〜5月だそうですが、産地によっては1〜6月、つまり年の半分は収穫できるそうで、今年もまだまだ楽しめるはず。
その新玉ねぎを僕は昨年まで、あ、出てるな〜なんて1、2個買ってみては、サラダにしたりして食べていたんです。逆に言ってしまえば、そのくらいのドライな付き合いだった。ところが今年は、狂ったように付き合っている。なにがきっかけだったかというとですね、そもそも新玉ねぎといえど、包丁で切っていきなり食べてしまうと、さすがに辛味や刺激的な香りが気になったりする。そこで酢水に漬けたり、しばらくの間放置しておく下処理をするわけですが、それがじゅうぶんではないと、意外とその感じがあとを引いたりすることもあったんですよね。
そこで思いつき、一度、醤油、酢、砂糖、唐辛子、ごま油、ごまを目分量で注いで、半日ほど放置した、新玉の漬けというか、新玉だれというか、そういうものを作ってみたんですよ。そうしたらこれが衝撃の良さだった!
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ちょうどその時、鶏もも肉のゆで鶏が冷蔵庫にあったので、カットして目分量で作った新玉だれをかけてみたら、もう抜群。完全に、これに料理名がないのはおかしいでしょ、というレベルだったんです。
結論は出ちゃってる
そこで僕は思いました。これ、もっと手抜きなレシピでも作れるんじゃないの? と。それがですね、僕が最近日々作りまくっている「新玉ねぎのポン酢漬け」なわけなんですけれども。
そのレシピというほどのものではないレシピをご紹介しますと、まず、新玉ねぎを好きなだけ細切りにします。
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それをタッパーか食品用ビニール袋に入れ、全体が浸るくらいのポン酢、あとこれ以降の材料も好きでいいと思うんですが、僕の定番として定着したのが、ごま油、ごま、一味唐辛子を好きなだけ。あと、ほんのり甘みも欲しいので、おまじない程度に砂糖少々加えるというもの。そうしたら全体をよくシェイクし、冷蔵庫にしまっておきましょう。
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1日ほど漬けておくと、もはや完全に辛味や強い香りは抜け、旨味と甘みと、しゃきしゃきなのにとろとろな食感だけが残った、極上の新玉だれとなっていることでしょう。
で、これをどうやって食べるかなんですが、もう、スイーツ以外なら、どんな料理にかけても問答無用にうまい! それが結論。出ちゃってる。ただ、僕が最強と感じているメニューはすでにありまして、毎日、いや、なんなら1日2回食べてしまっている日もあるんです。もう、さっさと発表しちゃいますね。それは、「納豆と混ぜる」!
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これがね……もうね……なんだろう。新玉のとろしゃきと酸味、そこに納豆のコク深い風味が合わさって両者を引き立て合い、最高にうまいんですよ。両方の味の解像度が上がるというのかな。意外にも、付属のたれだけで食べるよりも納豆の味がきちんと感じられる。個人の感想ですけどね。
つまみにはもちろん、当然ごはんにも合いますので、ぜひお試しあれ。
どんな料理にも
はい。ここからはもう、どうせどう食べたってうまいんだから、「こういうのも美味しかったですよ〜」っていう、「ご報告まで」コーナー。気楽に流し見てやってください。
まず、サラダのドレッシング的に使ってもばっちり合う。ある夜は、ざっくり刻んだキャベツにたっぷりの新玉ポン酢をあえてしばらく放置。タッパーに新玉ポン酢のラスト少しが残っていたので、そこに刻んだプチトマトを漬けてしばらく放置。
たったそれだけでもう、極楽ヘルシー新玉ポン酢晩酌の始まりですよ。
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またある日、スーパーのお惣菜コーナーに「アジの竜田揚げ」なんてものが売っていまして、ピーンと来てしまいましたよね。そう。これ、そのまま漬けときゃ南蛮漬け的にならないかな? と。
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もうね、南蛮漬けって正確に言うとどういう料理だったかは別として、絶対正義な味! こんな簡単なのに、こんな凝った、こんな味わい深い料理になる? っていう。ということは、からあげとか揚げもの全般にも合いそうだな。
またある日は、ピータン豆腐のたれに採用してみました。
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ピータンのまったりと、豆腐のさっぱり。そこに新玉ポン酢の食感が加わることによって、これまたものすご〜く手が込んだ料理のように感じます。家でこんなもんをつまみに酒が飲めるなんて、もう言うことないですよ。
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こんがりと焼いて、ほんのり醤油味もつけたあつあげに新玉ポン酢だれ。もう、説明不要ですかね〜。
またある日は、思いつきで新玉ポン酢だれに大好きなスパイスである「クミン」をたっぷりとふって混ぜてみたんです。そしたらこれまたいい! もはや、インドのお漬けもの「アチャール」にあっておかしくないというか、むしろなかったらおかしいレベル。
というわけで、スパイスやらカレー粉を駆使しててきとうに作ったキーマカレーと合わせてみたんですが。
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というかですね、極論、「ごはんにどさっ」でもはや、最高のごちそうなんですよ。
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最近頻繁にこの新玉ポン酢ごはん、もしくはそこへ納豆を加えたものを食べている僕ですが、本当に体が喜ぶ美味しさというのかな。先日そこに、思い立って生玉子も加えてみたんですが、これまた、玉子のまろやかさが引き立つうまさで、最高にもほどがあったんですよね〜。
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リーズナブルな季節野菜を漬けておくだけでこんなにも主役級のごちそうになってしまうだけでなく、どんな食材の美味しさも引き立てる能力まである。
今年は新玉が手に入る間、引き続きしつこく食べまくってやろうと思っています。
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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco