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女性首相と彼女を支える男たち~リアル男女平等社会を描く「コペンハーゲン」

光文社新書の永林です。前回の「ジェンダーで見るヒットドラマ」では、2020年に大ヒットした日本のドラマを通じて日本社会の決定的なジェンダー平等の遅れを指摘し、大きな反響をいただきました。
今回は、そんな日本社会とは対照的ともいえる、北欧はデンマークのドラマをご紹介します。制作はデンマークの国営放送で、本国では国民の4人に1人が視聴し、フランスとイギリスでもメガヒットを記録。ヨーロッパの各賞を受賞し、世界70カ国で放映されています。日本のドラマとの一番の違いは、「仕事が忙しすぎて家事・育児をしない男」が全く登場しないことです。彼らにとって家事をシェアすることはあまりにも当然で、ドラマの重要テーマにはなりえないのです。男女平等が達成されたようにみえる社会をリアルに、温かく、時に厳しく描いたこのドラマを、治部れんげさんはどのように分析するのでしょうか。

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北欧のリアルな男女平等を描く「コペンハーゲン」の温かさと厳しさ

Twitterで各国大使館のアカウントをフォローしていると、女性政治家に関する話題をしばしば目にします。先日はフィンランドの教育大臣が産休を取った、という話、また別の日にはエストニアで女性首相が誕生し、同国では大統領も女性である、という話。アイスランドの首相も女性ですし、北欧では政治分野で活躍する女性が多いです。

今回はデンマークのドラマ「コペンハーゲン:首相の決断」をご紹介します。本国では2010年に放送され、欧州各国で高い評価を得て多くの賞を取っています。放送開始の翌年、デンマークでは初の女性首相が誕生しており、現実を一歩先取りしたドラマでもあります。

「コペンハーゲン」の主人公は国会議員のビアギッテ・ニュボー・クリステンセン(シセ・バベッド・クヌッセン)です。彼女は穏健党で党首を務めており、政治信条は中道左派。デンマークが既に多民族国家になっている現実を踏まえ、極端な左でも、移民排斥の右でもない、新しい政治を目指しています。

ビアギッテは経済学者の夫フィリップ・クリステンセン(ミケール・ベアクケーア)との間に学齢期の娘と息子がいる4人家族で、最近数年間は主にフィリップが家事育児を担ってきました。ビアギッテの提案で、この夫婦は5年ごとにキャリア優先・家庭優先の役割を交換するルールを決めているのです。

選挙期間中は16時間も働くビアギッテは多忙を極めており、会合を断らないと子どもとの時間を確保できません。そんなある日、現首相の金銭スキャンダルが発覚、それを暴いた野党・労働党党首も信用を失い、そのあおりでビアギッテ率いる穏健党が選挙で多数の票を獲得して、連立与党をリードする立場になります。

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