私たちの排出する「ごみ」はどこへ行くのか?|高橋昌一郎【第48回】
地球環境破壊とごみ処理問題
インドネシアにはアジアで最大規模の熱帯雨林があったが、近年は減少の一途を辿っている。そのため、生息地を失った「スマトラオランウータン」が「絶滅危惧種」に指定されていることを、読者はご存知だろうか。そこで、いわゆる「フェア・トレード」が開始された。私たちがインドネシア産「スマトラオランウータン・コーヒー」を購入すると、売上金の一部が、動物保護活動団体と環境に配慮した栽培を行う生産者に自動的に寄付される仕組みになっている。
というわけで、私も「スマトラオランウータン・コーヒー」を飲んでみたのだが、味そのものは芳醇な香りに奥深いコクがあり、キャラメルのような甘さがある。インドネシア産の豆のブレンドらしく、マンデリンに近い味わいである。
それにしても、なぜインドネシアやマレーシアの熱帯雨林が極端に減少するようになったのか。その理由は、林を伐採してアブラヤシを大規模栽培するようになったからである。さらに、その根源的な理由は、先進諸国がアブラヤシの果肉から得られる「パーム油」を集中的に輸入するようになったからである。「パーム油」は、インスタント食品やスナック菓子の大部分に用いられている。
要するに、先進諸国の人々が「インスタント麺」や「ポテト・チップス」を消費すればするほど、より多くのパーム油が必要になり、その需要に見合ったアブラヤシを大量生産するために東南アジアの熱帯雨林が伐採されて、結果的にスマトラオランウータンが生息できなくなってしまった、というわけである。
地球規模で考えると、私たちがインスタント食品を購入することが熱帯雨林やスマトラオランウータンに大きな影響を与えてしまう。最近のニュースによれば、森林伐採や気候変動の影響で世界の野生種のコーヒー124種のうち、なんと60パーセント以上の75種が絶滅の危機に晒されているという。現在、世界で最も商品化されているアラビカ種でさえ、乱獲が続けば、約60年後には絶滅する可能性があるということで、コーヒー愛好家にとっては衝撃的な話である。
しかも、あらゆる製品はパッケージに包まれていて、それらが「ごみ」として排出される。本書は、その「ごみ」がどのように収集されて、最終的にどのように処分されるのか、国や地域によって工夫がなされている特色を分析する。地球規模の環境と持続可能性の「ごみ」問題にまで掘り下げると、奥深い。
東京23区で収集される「一般廃棄物(可燃ごみ)」は、中間処理施設で焼却処分されて、容積は約20分の1の「灰」となる。この「灰」は、埋立処分・セメントの原料の代替素材・道路用骨材・河川護岸材などに用いられる。このうち東京23区の埋立最終処分は、東京湾の中央防波堤外側埋立処分場・新海面処分場で実施され、埋立の残余年数は約50年間程度と推計されているという。
「産業用廃棄物(不燃ごみ・弁当がら・瓶・缶・ペットボトル)」の処理は、より複雑で、各自治体によって処分方法が異なる。たとえば「プラマーク」の付いた製品を「資源ごみ」とするか「可燃ごみ」とするかは地域によって異なる。
本書で最も驚かされたのは、「可燃ごみ」の中に「水銀体温計」や「リチウム電池」が入っていたため焼却炉に約3億円の被害が出たとか「ペットボトル」に「吸殻」や「注射器」が入っていたためリサイクル事業に支障が出たという事例である。「ごみ」の不適切分別がいかに迷惑を及ぼすか、認識すべきである!