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どうなんだ? ビアボール!|パリッコの「つつまし酒」#188

「ビアボール」ってなんだ?

 最近、サントリーの「ビアボール」っていう新商品の広告を目にする機会、増えましたよね? 常にぼーっとしている僕は、しばらく「なんだろ〜な〜これ?」ってくらいにしか思っていなかったんですが、それがコンビニの店頭に並んでいるのを、先日発見。気になって手にとってみたんです。
 するとビアボールとは、いわゆる一般的な日本のビールがアルコール度数5%前後なのに対し、それよりも断然高い16%のビールらしい。それを炭酸水で割って飲むことを前提に開発されたらしい。商品名のビアボールってのは、ハイボールのイメージでしょうか。
 正直、え〜? ビールを炭酸で割って飲むの〜? しかも氷を入れて〜? それって、話題性先行で開発&発売しちゃった商品なんじゃないの〜? とね。思ってしまいましたよ。実際のとこ、どうやねん!? と。どないやねん!? と。エセ関西弁でツッコミも入れてしまいましたよ。
 ただ、もしそうだったとしても、酒飲みとしてはやっぱり気になるじゃないですか。このチャレンジングな新商品が、どんな味なのか。まぁ、買いました。2本ほど。値段は334ml入りで、1本700円程度。安くはない。ような気がするけど、おすすめの比率で割って飲むと8杯ぶん飲めるらしいので、むしろ安いのか。いや、すべては味次第だな。

すっきりとしてかっこいいデザイン
再栓用キャップつきでした

 で、ちょっといいですかね? 今回、先に結論から言わせてもらって。あのね、はっきり言ってビアボール、最高でした。今僕、ハマってます。サントリーさん、一度でも疑ってすみませんでした。

まずはじっくり味わってみる

 ところでその翌日、スーパーへ買いものに行ったら、発売記念の限定品なのでしょう。なんと、ビアボールの「専用グラス付」なんて商品を発見! しかも値段は、単体同様の700円程度。こんなの欲しいに決まってる! と、買ってしまいましたよ。しかも2セットも。まだ味も知らないうちから、どないやねん!? とか言ってた男が、4本もビアボールを所持しているというね。本当、なんなんですかね、こいつ。いや、こいつって自分なんだけど。

子供時代だったらサンタさんにリクエストしてた
専用グラス

 その専用グラスが、角度によってほんのり青みががって見えるガラスが美しく、デザインもかわいい。しかも「ほんのり」「おすすめ」「こいめ」、それぞれの比率が作れるように、目安となる線が引いてあって、まさにビアボール専用の便利さ。
 というわけで今日は、このグラスを使って、まずはビアボールとじっくり向きあってみましょう。そして続けて、せっかくなので、炭酸水以外の炭酸飲料もいろいろ用意し、あれこれ割って飲み比べてみましょう。なんたって、ビアボールの公式サイトにはこう書いてあるんですから。

「らしく、飲んだらいいよ。」

いかにもビールに合いそうなおつまみも用意して

 と、その前に、冷蔵庫でよく冷やしておいた、ビアボールそのもの、ストレートの味を、いったん確認してみましょうか。

ビアボールストレート

 グラスにほんの少し注いでみると、きっちりと炭酸はありますね。「原液」って感じではない。いざ、ちびりとひと口飲んでみて驚きました。いわゆる日本の大手ビール会社の主流である、ラガータイプのすっきりした味わいとは、方向性が真逆! 華やかな香りがして、甘みもしっかりあって、旨味がものすごく濃い。
 僕が今までの人生で飲んできたなかで、「めちゃくちゃ運動をしたあとに飲んだキンキンの缶ビール」みたいなシチュエーション込みのパターンではなく、純粋に、味の美味しさに感動したビールというものがいくつかあります。特に印象的なのが、地元の角打ちで飲ませてもらった「セント ベルナルデュス・アブト」の生。ベルギーの「修道院ビール」の系譜で、ビール通や評論家の間では、世界のベストビールのひとつとしても知られているそう。
 なにが言いたいかというと、このビアボール、それにけっこう似てる気がする!

氷も入れてみる

 次に氷も入れて飲んでみたんですが、もとの味がしっかりしてるからまったくぼやけないですね。って、割って飲む前提なんだから当たり前か。よし、炭酸で割ってみよう!
 ちなみに公式の飲みかたとしては、こちらの3パターンが推奨されています。

・ほんのり 炭酸水とビアボールの割合が7:1
・おすすめ 3:1
・濃いめ 1:1

あくまで「目安」のようですが

 じゃあまずは「ほんのり」から。まずはグラスに氷をたっぷり入れて、規定のラインまで炭酸水を注ぎます。するとなんだか、ホッピーセットを頼んだらナカの焼酎が濃すぎて笑っちゃう店、みたいな既視感が。

これが焼酎だったら一杯で終了だね
そこにビアボール

 そしたらグラスのいちばん上の線までビアボールを注ぎ、軽くステア。こんな、ほんのり色づいたくらいの割合で美味しいんかな〜? とややいぶかしみつつ、ごくりと飲んでみる。すると! さっきのどっしりとした印象が一変、柑橘系をも思わせるような爽やかで軽快なビールって感じで、めちゃくちゃうまいっすわこれ! お風呂上がりとか、あと休日の昼間、今日はそろそろ始めちゃおうかな〜、なんて時のスタートにぴったりな気がする。ビアボール、もはや完全に好きになってしまった。

こんなに爽やかなビールは飲んだことないぞ

 続いて「おすすめ」。お〜、さすがに飲みごたえがガツンと増しますね。ほんのりではまったく感じなかった苦味もきちんとある。が、やっぱり爽やかで飲みやすい。たとえて言うなら、あえてものすご〜くライトに、度数も低めに作られたクラフトビールって感じ。これが、炭酸水の値段を含めても1杯100円程度で飲めるって、もしかしてとんでもないんじゃないの? ビアボール。
 ラストは「こいめ」。うおー! これはきた! ストレートで飲んだ時と、うすめで飲んだ時、それぞれの驚きのいいとこどりだ。そしてやっぱり、セント ベルナルデュスに近い美味しさがある気がする。ちなみに、たま〜に自分を甘やかしたいときに買うセント ベルナルデュスの瓶は、330ml入り1本で1000円弱くらいはするので、そう考えると日常的に飲める値段のビールとしては、もう手放せないレベルな気がします。
 ただ、1:1の度数8%はやっぱり濃いので、個人的には、こいめとおすすめの中間くらいの割合が好きかな。

ありがとうビアボール!

いろんな炭酸飲料で割ってみる

 ここからは実験ゾーンに入りますが、市販の炭酸飲料をあれこれ買ってきてみたので、小さなグラスにほんの少量ずつ作っては、味見をしていってみたいと思います。特に期待してるのは、無糖のレモンフレーバー炭酸水。特に味が気になっているのは、もちろんホッピー!

ずらーっと

 どんどんいきましょう。まずはレモン炭酸水から。するとこれが、想像どおりの爽快な味わいで大変うまい。けれどもビアボール自体が、炭酸で薄めに割った時点でかなり爽やかなので、あんまり意味がないような気もする。
 続いて、トニックウォーター、ジンジャーエール、オレンジソーダ、コーラと割っていってみますが、う〜ん、どれもしっかりと味が濃い飲みものなので、ビアボールの個性が消えてしまうというか、どうもビアボールがもったいない気がしてしまいますね(1日でファンになりすぎ)。あれこれ試してみる楽しさはぜんぜんありなんですが、次回からはこれらの炭酸飲料は、素直に甲類焼酎と合わせようかなという感想。

こういうカクテルがあってもおかしくない味ではあるけれど

 よ〜し、そしたらそろそろいってみましょうか。ホッピー&黒ホッピー。

ビアボールをホッピーで割る

 まずはいわゆる「白」と呼ばれるオーソドックスなホッピーから。するとですね、不思議な現象というか、無個性な焼酎と違い、ビアボール自体にしっかりと味、コクがあるので、白ホッピーで割ったのに、黒ホッピーみたいな味に。これはなんというか、毎晩作って飲むようなもんじゃないけど、体験としておもしろいです。
 じゃあ黒はどうだったかというと、黒ホッピーってよく「黒ビールっぽい」なんて言われますよね。ところが焼酎ではなくてビアボールを割ると、もう、ちゃんとしたうまい黒ビールそのもの! これは、今回あれこれ割ったなかでは、いちばんやる意味があるかも。
 ちなみに最後は、ビアボールを「ビール」で割ってみるという、しかも、サントリーにアサヒを足すという、ぼうぼう的ともいえる飲みかたを試してみたんですが……酔っぱらってるせいもあり、ここまでくると自分が一体なにをしているのか、もはや意味不明でした。

意味不明な行為


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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