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とんそくをしゃぶりつくせ!|パリッコの「つつまし酒」#225
ずっと気にはなっていたけど
「とんそくラーメン」ってどうなんだろう?
ふと、そんなことを思ったんです。
というのもですね、たまに行く業務スーパーにいつも売ってるんですよ。パックに大入りのとんそくが、かなりお手頃な値段で。
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で、見るたびに気になっていたんだけど、どうもなんていうか、自分のような者の手にはおえない気がして、「次回でいいか」と、毎回購入を見送っていたんです。だって、この量のとんそくですよ。娘は食べず嫌いするだろうし、妻も嫌いじゃないとはいえ、夫婦ふたりで食べつくすために購入するのは、ちょっと勇気がいる量じゃないですか。
ところがある日思った。「とんそくラーメンってどうなんだろう?」と。とんそくってつまり、部位は特殊なれど、豚の骨つき肉じゃないですか。つまり、これをコトコトと煮込んで、とんこつならぬ「とんそくスープ」をとる。その副産物として出た肉を、いろんな味でつまみにしてみる。つまり、この1パックのとんそくを、骨までしゃぶりつくす。それってすごく楽しそうだなと。消費、できそうだなと。
思いついたらいてもたってもいられなくなり、大あわてで業務スーパーでとんそくを買ってきました。
さぁ、しゃぶりつくしていっちゃいますか!
醤油漬け、焼きとんそく
まずは下処理。熱湯でとんそくをゆでこぼします。引くほどの量のアクが出るので、お湯とともにいったん捨てましょう。そうしたらまた新しいお湯で、くさみ消しのおまじない、ネギの青い部分と、生姜ひとかけとともに、じっくりとゆでていきます。
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弱火と中火の中間地点くらいで、気長にゆでること1時間半ほど。確認してみると、やった! 狙いどおり! 鍋のなかには、いい感じとしか言いようのないくらいにいい感じに白濁したスープがたっぷり。とんこつラーメンとはちょっと方向性の違う上品な香りが、湯気とともに立ち上ってきます。
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試しにとんそくをひとつ取り出し、しょうゆをかけて食べてみると、とろっとろのぷるっぷるでもうたまりません! いいじゃんいいじゃん、とんそく。なんで今までもっと積極的に買ってこなかったんだろうか。
で、さてさて、このゆでとんそくたちをどう料理してやろうか、と。まずですね、3つは鍋からあげてよく水気を切り、かつて東海林さだお先生が提唱した絶品チャーシューの作りかたであるところの「ただ醤油につけておくだけ」、これでいってみましょう。
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さらに2品目、かつて、九州の福岡では、かりっと焼いた豚足に酢醤油などをつけて食べるのがポピュラーと聞いたことがあり、一度食べてみたいと思っていたんです。3つはそれでいってみましょう。
ゆでてとろとろになった豚足を耐熱パンに並べ、魚焼きグリルで、こんがりと焦げ目がつくまでじっくり焼く。すると、おお! これは問答無用でうまそうだぞ。
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こってりとした味わいと、焦げ目の香ばしさ。それが酢醤油のさっぱり感とめちゃくちゃいい相性で、絶対に合いそうだぞと用意したいも焼酎のロックがすすむことすすむこと。とんそくは、「焼き」につきるかもしれないな。
そしてシメのラーメンへ
とか言いつつ、翌日の晩酌つまみはとんそくの醤油漬け。
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これがまたですね、いったんとろとろになったはずの肉が、むっちむちのぷりっぷり食感を取り戻していまして、めちゃくちゃいい! ただ、豚の塊肉と違って醤油が染み込む隙間が多いからでしょう。かなりしょっぱめの仕上がりになってしまい、そのあたりは要調整かな。
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思いついて五香粉をかけてみたら、いきなり本格中華風の味わいになったので、次回は、醤油、みりん、酒を1:1:1くらいに混ぜて煮切ったたれに五香粉を加えて漬けてみる、くらいが良さそうかもしれません。なにしろ研究の余地あり、かつ、これまたいいとんそくの食べかただなと思いました。
さて、いよいよクライマックス。最後に残ったとんそくの鍋に、玉ねぎ、にんじん、にんにくを加えてもう一度よく煮込み、ラーメンスープを目指していきます。しっかりと野菜の味が染み出したら、それらは取り出し、塩でもふって食べちゃいましょう。で、そこに、醤油、塩、チート技で味の素などを加えて味を整える。とんそくもいったんすべて取り出し、骨から外して肉を戻す。はい、これでとんこつスープの完成です。
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あとはこれをベースにラーメンを作っていくだけ。ちょうど先日、見た目の華やかさがおもしろくて買っておいた、カラフルに野菜の彩りがついた中華乾麺があったので、麺はこれを使いましょう。
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麺をゆでてどんぶりに入れ、熱々のとんそくスープを注ぎ、肉、メンマ、高菜漬け、紅しょうが、ごま、コショウなどを盛り付ければ、よ〜し、できたぞ! 生まれて初めてのとんそくラーメンが!
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いやいや、これがですね、いわゆるとんこつラーメンとはまた違った味わいながら、なかなか美味しかったんですよ。きちんと豚肉や骨から染み出した旨味は感じるけれど、動物性由来のくさみみたいなものはまったく感じず、やっぱり上品。それから、ほんのりと香ばしいような独特の香りがすごくいい感じ。スープのとろみは、どろどろ系ではなく、どちらかというとコラーゲン由来の、ぺったり系。
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それでも無心ですすっていると、やっぱりとんこつラーメンを食べている気分になってくるんですが、それが引き戻されるのが、メイン具材であるとんそく。チャーシューとはまったく違う、ぷるぷるとろとろの食感が、あぁ、今自分は、とんそくラーメンを食べていたんだな……と思い出させてくれます。
以上、とってもお手頃な食材にも関わらず、なんだかずいぶん楽しませてもらってしまった、とんそく大パック。また買ってきて、こんどはカレーでも作ってみようかな〜。
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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco