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NFTで実際に絵を売ってみた(後編)――『Web3とは何か』by岡嶋裕史 第2章 NFT②

前編はこちら。

過去の連載はこちら。

今一番売れているメタバース関連書。現在7刷です。

第2章 NFT②――実際に自分の絵を売ってみた(後編)

https://opensea.io/assets/matic/0x2953399124f0cbb46d2cbacd8a89cf0599974963/16574766965458615798230311985769411348232750438055220306317869818305423867905

(承前)OepnSeaでは作品を何個供給するかも、この画面で決められる。リアルなブツを売りさばく場合、作った数以上には売れないが、デジタル作品だといくらでもコピーがきく。それゆえの値崩れを防ぐための、デジタルオリジナルとしてのNFTなわけだが、そこをいじろうというのだ。

版画作品などと同じで「同じものは作ろうと思えばいくらでも作れるけど、10枚しか刷らないことを胴元が保証するよ」とやれば価値を維持することは可能だ。さじ加減は難しい。

図18 供給数のコントロール

今回はお試しなので、作品と名前だけ記入する。作品タイトル『枯渇』『破綻』の2つを作ってみたのだが、1つだけ出品してみよう。枯渇しているのは私の才能で、破綻しているのは私の生活だ。

図19 出品準備

画面を一番下までスクロールすると出てくる「Create」ボタンを押すと、登録完了である。これがいわゆるミント(Mint:鋳造)で、NFTを発行したのだ。

図20 出品進行中
図21 登録できた

ところで、これはまだ売りに出されていない。コレクションと呼ばれる陳列棚に並べられた状態である。コレクションはいくつも作って作品を分類することができるが、初期設定のまま使っているのでUntitled Collection #202655065という素っ気ないコレクション名がついている。売る気がある場合はコレクションにロゴ画像を登録するなどして、もっと愛想良くしないとダメである。

せっかく登録したので売ってみよう。Sellボタンを押す。

図22 販売方法の決定

すると、どんなふうに売りたいかを問う画面が出てくる。販売期間や抱き合わせで他のものも売るかどうかなどだ。出品者として最も興味があるところはお値段だろうが、これは固定価格とオークションと両方選べる。面白いのでオークションにしてみよう。販売期間はオークションでは最も長い1週間を選んだ。

オークション方式はお値段がつり上がっていくイングリッシュスタイルと、最初に設定した価格からどんどん下がっていくダッチスタイルの2つが用意されている。下がっていくのは精神衛生に悪そうなので、イングリッシュオークションを選択する。

あとは初期価格である。WETHと書かれている部分だ。単位はイーサである。執筆時点で1イーサ(ETH、WETH)=37万円ほどなので1000イーサにしておこう。うっかりした大富豪が間違えてポチってくれたらもうけものである。そしたら速やかに引退しようと思う。

下のほうにFees 2.5%とあるのは、成約したらOpenSeaが2.5%もっていくという意味だ。成約手数料である。

Complete listingを押して進めよう。

図23 手数料を求められた

えっ、また手数料? と恐怖感が身を苛むが、これはアカウントの初期設定に必要なもので、イーサ側の手数料(ガス代)だ。OpenSeaでは個々の出品は無料でできるので、最初の1回払うだけでいい。誰かが購入してくれたときもガス代は発生するが、それは購入者が払ってくれる。

ガス代もイーサのレートも変動し続けるのでケチケチいきたいときは、安くなった瞬間を狙う。このときは0.09イーサ=$270を要求されたので、ポチらずにやめておいた。お試し出品には懐に痛い額である。もうちょっと安くなった瞬間を狙おう。

図24 けっこう要求してくる

と思ったのだが、せっかく記事を公開させていただくのだから、実際に出品して「ああ、こんなものか」と試せるようにしておくのが筋かと考え直した。でも、ガス代は痛いので、コレクションを再構成して手数料のかからないポリゴンで出品し直す。コレクション名も「Depletion」に変えてみた。

残念ながらポリゴンではオークション方式にできないので、固定価格での出品である。URLは記事の冒頭にあるので、NFTの出品を見たことがないという方は試してみて欲しい。

いやいやアート作品とか何だか敷居が高いし、海外のサービスもメンタルに打撃を与えるぜ、という方はブロックチェーンゲーム辺りから始めると気が楽だと思う。

たとえば、ゲーム内のレアカードは稀少であることがその価値を担保していて、だからこそそのカードを入手するために利用者はガチャの無間地獄へと漕ぎ出していくのである。

でも、ひょっとして運営がカードを水増ししているかもしれないし、ゲームから引退するときにカードを売り飛ばすしくみも公式には用意されていない。また、ゲーム会社がゲームの運営をやめてしまえば、すべての価値が消滅する。

そこで、NFTを使ってカードの稀少性を裏書きし、利用者間での売買を認める。もしブロックチェーンが生き残っていれば、ゲームが終了した後も売買を継続することができる。

ブロックチェーンのゲームへの応用は色々考えられるが、今のところ上記のようなシナリオが多い。そのシナリオが十全に履行されるかは後段で議論するとして、投じる資金も「ゲーム」の枠内で常識的に設定されているし、NFTを体験するにはちょうどいいだろう。

たとえば、国内大手のスクウェア・エニックスも資産性ミリオンアーサー(カードバトルゲーム『拡散性ミリオンアーサー』からの派生作品)をオペレーションしている。

図25 資産性ミリオンアーサー

(続く)


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