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いつもの晩酌|パリッコの「つつまし酒」#200

連載200回!

 いつも大変お世話になっております。「つつまし酒」でございます。毎度毎度なにかしらのテーマを考え、それに従ってただひたすらに酒を飲んできたこの連載、今回で200回目を迎えました。
 いや〜飲んだな〜。それはもう「いや〜飲んだな〜」しか感想が出てこないほどに。
 今この文章が掲載されている光文社さんのnoteではなく、光文社さんのサイト「本がすき。」で連載が始まったのが、2018年11月。久しぶりに見返してみて驚いたのが、当時僕、まだ会社員だったんですよね。第1話が、「健康診断後のホッピー&カツカレー」で、会社の健康診断後の開放感に包まれて飲むという話を書いている。当時はコロナなんて存在しなかった世の中なので、いやぁ、好き放題やってますね。
 で、掲載サイトがこちらに移ったのが2020年3月。さて心機一転、がんばって行くぞー! というタイミングで、日本が本格的にコロナ禍突入ですよ。当時は会社を辞めて独立してからちょうど1年経ったころ。かなりとんでもないことだけど、自分は「酒場ライター」として生きていくんだと決意し、毎晩のように仕事で酒場へくり出す日々だったのが、突然に止まってしまい、途方に暮れたよなぁ……。
 しかしそれでも、酒は希望でした。主に家飲みにテーマを絞り、食材や道具にこだわってみたりしながら、油断すると閉塞感に押しつぶされそうになるなか、ひたすらに酒を楽しみ、それを記録してきた。昨年末に連載ペースを隔週に落とさせてもらったのですが、それまで191回、毎週そんなことを続けていたんですからね。狂ったやつですよ。我ながら。
 もちろん、そんな奇行をこうして掲載させてくれる媒体があり、読んでくださる方がいて成り立っていることで、いつも本当にありがとうございます。

連載モードと日常モード

 ところで、日々飲んだり食べたりするものを記録するだけの連載といったって、一応気を遣う部分はあります。
 特に大きいのが、写真。どんなにしみったれたつまみだって、一応ちゃんとしたカメラで、どの角度がいちばん美味しそうに見えるかな〜? なんて、プロではないなりにも考えながら撮ってはいるんです。器その他の小物も、どれが合うかと考えながら。
 たとえば、スーパーで塩鮭のカマが安くなっていて、今夜はこれで晩酌だなと思い立つ。それを「つつまし酒モード」の自分が撮ると、まぁこんな感じになります。

これだったら
こんな具合に

 ちなみに、めちゃくちゃうまかったです。
 ところで最近、別媒体の連載に自分のごくパーソナルな日記を掲載しはじめまして、そのため、日々何気なく飲んだり食べたりしたものを忘れないよう、なるべく写真で残すことにしてるんです。そういう場合って、わざわざカメラを出してきたり、小物を用意したりはしない。やっぱりスマホが便利ですよね。
 で、記録用にスマホで撮ると、こうなる。

なんにも考えてない写真

 もしくはたとえば、生食用の茎わかめが美味しそうだったので買ってきた場合。納豆にでもあえてつまみにするかと思い立ち、それをつつまし酒モードで撮ると、こんな感じ。

生食用茎わかめ
質素なつまみも、それなりには見える気がする

 ところが記録用だとこう。

ひどい

 というわけで今回は、なんとなく200回の節目に、僕の、おめかし的ではない「いつもの晩酌」の記録を見てもらおうかな、なんて思ったんです。
 そもそも連載時みたいにテーマなんて設けてないから、その日の思いつきのなんだかよくわからない創作料理ばかり。あまりにも恥ずかしい行為ではあるんですが、ある意味、それこそが真の「つつまし酒」な気もして。
 あ、先ほどのとおり写真があまりにもてきとうで、正直あんまりじっくりと見てほしくないので、ここからはいつもの大きさの4分の1バージョンで勘弁していただければと。

いつもの晩酌をジャンルごとに

「海藻」その1

 近年、本当に海藻が好きで。特に春は海藻が美味しい季節ですよね。でっかい生のめかぶが売っていたので買ってきて、家で鍋でゆでるときの、一瞬で茶色から鮮やかな緑に変わる瞬間が好きです。
 そのまま刻んで刺身的に食べたり、刻んでさっと炒めたり。たっぷりとあったので、冷蔵庫にあまっていたあぶらあげ2枚と一緒に醤油炒めにしたり。

「海藻」その2

 春の生わかめにスーパーで出会う嬉しさ、これも格別なものがあります。醤油やポン酢でそのまま食べるのはもちろん、しらす、そして冷蔵庫に余っていた(冷蔵庫にあまっていたものばかり登場するので、以降その部分省略でいきます)卵白ふたつぶんも加えて、オリオーブオイルで炒めたり、もう、どう食べてもうまい。
 写真右下は、鍋のだしをとったあとのこんぶを佃煮風にしたもの。

「野菜」

 僕の住む東京都練馬区は、野菜の無人販売所天国。そこで買った菜の花をさっとゆで、かつおぶしと醤油で。生命力溢れる野菜の甘さには毎度驚かされます。
 右上はなんだっけ、お恥ずかしいことに、もはや自分でもあんま思い出せないな。なんかの練りものと、大根の皮と、キャベツの炒めか。
 大根の皮は捨てるのがもったいないし美味しいので、毎回どうにかして食べます。写真のように、ただソテーにしたり。それだけだとあまりにも寂しいので、大根本体の薄切りも2枚ほど添えて。
 あと最近、手抜きしたいときによく使っているのが、皮むき&下ゆで済みのじゃがいも。手で潰してフライパンで焦げ目をつけ、バター醤油で味つければ、もう簡単じゃがバター。

「煮物」

 あぶらあげを開いて生玉子を落とし、楊枝でフタをして煮る「袋煮」は、娘の好物。味つけは白だしのみ。冬の間はよく作ります。1枚目はいろいろ具材も入ってて、ぜんぜんちゃんとした料理ですね。
 2枚目からが急にひどい。残りものあぶらあげと大根の皮を、酒、醤油、砂糖でてきとうに味つけた煮物。
 大根、大根の皮、鶏皮の塩味煮込み。
 最後は鶏むねを低温でゆで鶏にする際、そのゆで汁にいい味が出てもったいないので、こんぶや大根などを入れて、のちのち煮込み料理に転用しようとした痕跡か。

「サラダ」

 鶏もも、しめじ、にんにくを炒め、それをサラダに載せたもの。熱々と生野菜のハーモニーがうまいです。
 2枚目はおしゃれに見えるかもしれないけど、ざっくり切ったレタスに、デパ地下で買ったサーモンのマリネサラダをのせただけのもの。カサ増しというやつですな。
 続いてが、レタス、娘が朝食に食べた残りのツナ、フライドガーリックのサラダ。CMで見て気になった、キューピーの「ペイザンヌサラダドレッシング」で。
 最後は、レタス、フライドガーリック、うずら玉子の水煮ひとパックぶんのサラダ。自分で作っておいて、なんなんだこの料理……。

「中華」

 たまに家族で餃子作りをしますが、あれはもう一大イベント。特に大量のキャベツを細かく刻む作業が大変すぎる。中華料理屋のみなさま、いつも本当にありがとうございます。というわけで我が家では、家で焼くだけの「ぎょうざの満洲」の持ち帰り生餃子が大活躍。この日はなかなかうまく焼けた気がする。同じく満洲で買ってきたメンマと、たたいたキュウリを、ごま油、塩であえて副菜に。
 左下は、スーパーで見つけておもしろそうなので買ってみた「ゆば風こんにゃく」。もちっとして美味しかったんですが、量がありすぎて途中で飽き、ニラと一緒に中華風の炒めものに。業務スーパーで買った「麻蝦醤(マーシャージャン)」という調味料が、それで味つけするだけでなんでも本場の味になって便利なのは、最近の嬉しい発見です。
 今まで生きてきてほぼ興味をもったことがなかった料理のひとつ、かに玉。ただ、もしかして娘が食べるかも? と思い、トップバリュ「かに玉の素」を使って作ってみる。そしたら酸味がなくて食べやすく、かに玉も悪くないなと思えましたね。餡にグリーンピースが数粒入ってるのもかわいい。

「揚げもの」

 面倒なイメージの揚げものですが、僕はけっこう作るのが好き。天ぷらは専用の天ぷら粉を使えば失敗が少ないし、フライも衣つけて揚げるだけですからね。えのきを根元の部分と本体部分に分けて揚げてみた天ぷら、それぞれ食感が違っておもしろかったな。
 下段は大量に作ったチキンカツですが、翌日温めなおして豆腐、レトルトカレーと一緒に盛った右のプレートは、我ながら雑メシすぎ。

「ノンジャンル」

 娘が好きなリボン型のパスタのトマトソースあえは、多めに作ってワインのつまみにすることが多いですね。
 これまた娘の好物の、いなり寿司。煮たあぶらあげが少し残ってしまうことも多く、大泉学園の名店「大森喫茶酒店」で食べた「おきつね刺し」を参考に、刻んで紅しょうがをのせて。使いきってしまおうとするあまり、紅しょうがのせすぎたな……。
 常備菜として作っておくと娘がよく食べてくれてありがたい野菜のおかずが、ひじき煮と、にんじんしりしり。どちらも玉子焼きに入れたりといったアレンジが効くのも便利。食べかけの写真ですいません。
 最後は、スーパーに元気の良さそうななめこが売っていたので作ったみそ汁。みそ汁でもあるけれど、こんなのはもはや、豆腐ときのこのおつまみですよね。

「魚介」その1

 上段、特に写真がひどいですが、石神井公園「クイーンズ伊勢丹」の隠れた名品と僕が勝手に呼んでいる、いろんな魚の西京みそ漬けの切り落とし詰め合わせ。500円ちょっとでパックにぎゅうぎゅうに入ってるので、しばらく晩酌のつまみがそれになります。魚焼きグリルでこんがりと焼いて。
 下段は、残念ながら先月閉店してしまった大泉のスーパー「カズン」で売っていた「げんげ」という魚。あそこ、本当におもしろい魚が売ってたんだよなぁ。「煮付が一番」と書いてあるので言われたとおりにしてみたところ、旨味がすごく強く、身はぷりぷりのコラーゲン系でめちゃくちゃ美味しかったな。翌日は豆腐を足して。

「魚介」その2

 スーパーの鮮魚コーナーで、「お、立派な魚卵」と目につき、品名を見てみると「さわら」。さわらの卵ということなんでしょうが、そうストレートに言われるとなんかおもしろい。豆腐と一緒に酒、醤油、砂糖でてきとうに味つけて魚卵豆腐に。プリン体? たまにはいいじゃないですか。
 下段左は、たこの頭とねぎの煮つけ。これまた最近好きなんですよね、たこの頭。
 右は、いかと玉ねぎのバター醤油炒め。間違いない。

「肉」その1

 そしてやっぱり好きだしいちばん作るのが、肉料理!
 左上は、家族に鶏の照り焼きを作る際にトリミングした、鶏ももの皮と脂多めの部分と、「カリフローレ」というスティック状のカリフラワーの、撮影で使って残った茎部分の塩炒め。
 右はソーセージ、じゃがいも、ねぎをまとめて低温で炒めたジャーマンポテト風。
 続くじゃがいもと鶏肉の炒めにはスティック状のブロッコリー「スティックセニョール」のソテーを添えて。
 最後は、冷凍庫にいつからかあったサイコロステーキとしめじを一緒に炒めたもの。

「肉」その2

 鶏肉と豆腐でチャンプルー風の料理を作り、先ほど同様、トリミングした脂の多い部分は、キャベツの芯付近と一緒に弱火でじっくり焼いて。鶏の脂をキャベツが吸って、見た目は悪いけど絶品です。
 妻が美味しそうだったからと買ってきたホワイトアスパラガスは、豚肉巻きに。肉巻きを作るときは、ホットサンドメーカータイプの丸いお好み焼き器がめちゃくちゃ便利。
 最後の写真は、ゆで鶏、煮玉子、パセリのプレート。プレートをなんだと思ってるんだって話ですね。すいません。生のパセリ、オリーブオイルと塩あたりをかけてもしゃもしゃ食べるのが、いつからか好き。子供のころはあんなに嫌な味に感じていたのに。

「肉」その3

 ふるさと納税返礼品の鹿の赤身肉をシンプルに焼く。くさみゼロでめっちゃくちゃ柔らかく、ほんのりとレバーを感じさせるような旨味、甘みもあり、最高にうまかったです。
 右上は千葉県関係の仕事をしていた時に買った、千葉産の「豚ばら軟骨ベーコン」というもの。確かにベーコンの味がして、そしてコリコリとした軟骨部分まで食べられ、いいつまみでした。
 下段は娘も食べられるシリーズ。新玉ねぎをとろとろになるまで弱火で炒め、豚ばら薄切り肉を加えてさらにじっくり火を通す。大人がつまみにしたってそりゃうまい。
 時間があったので隠し包丁を入れ、さらに、肉が柔らかくなるという噂を聞いてしばらく牛乳に漬けておいた鶏むね肉。片栗粉をはたいて焼いてだし醤油で味つけしただけですが、むちゃくちゃ柔らかくなってびっくり。僕が引くほど娘がばくばく食べてくれ、ちょっとしか食べられなかったけど良かった良かった。

「肉」その4

 つつましき晩酌の真骨頂といえばやっぱり半額肉。200gのぶ厚い豚ばらブロックが約200円になっていたので、大興奮して購入。これまた弱火でじっくり焼いて、後半、フライパンに玉子2個も投入しちゃえ。
 えぇ、そりゃあもう、背徳の味でした……。
 以上、大変お恥ずかしいところをお見せしました。次回からまた通常営業に戻りますが、よろしければ今後とも、「つつまし酒」にお付き合いいただければ幸いです。
 ではでは、勝手に連載200回に、乾杯〜!


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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