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【81位】ザ・クラッシュの1曲―歌う労働争議を、生一本・怒濤のパンク・ロックで

「コンプリート・コントロール」ザ・クラッシュ(1977年9月/CBS/米)

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Genre: Punk Rock
Complete Control - The Clash (Sep. 77) CBS, UK
(Joe Strummer, Mick Jones) Produced by Lee "Scratch" Perry
(RS 371 / NME 83) 130 + 418 = 548

90位の「ハマースミス・パレス」は、レゲエ・ソングだった。だから当リスト初お目見えの「ザ・クラッシュのパンク・ロック」がこれだ。電動グラインダーかドリルかノコか、ジャキジャキと高らかに鳴るイントロのギター・リフからひと呼吸、一気呵成に突っ走る! 怒濤のエネルギーが渦巻く、純度100%、生一本の熱いナンバーだ。

という曲の歌詞が、楽屋落ちというか内部告発調のタッチであるところが彼ららしい。告発されているのは、まず所属レーベル(CBS)。このときはデビュー・アルバム(『教養としてのロック名盤ベスト
100』で34位
)が出たばかりだったのだが、そこからのシングル・カット曲をバンドの意向も確認せずに選んだことが指弾される。しかもその曲が、ミック・ジョーンズのヴォーカルでレーベルとの軋轢などをぼやいた「リモート・コントロール」だったのだから話はややこしい……という件について、この曲の冒頭にてまず、ジョー・ストラマーの歌で「語られる」。

さらには、彼らのマネージャーであるバーニー・ローズや、セックス・ピストルズのマネージャーであるマルコム・マクラーレンらしき人物も告発される。バンドを「コントロール」しようとするから。表題の「コンプリート・コントロール」とは、ローズの言葉からとったものだ。そのほか、ツアーやビジネスにまつわる「やりにくさ」も延々歌う。「契約書にサインするときに、芸術的自由は保証する」って言ってたくせに、とか……。

そんな歌詞であるゆえに、理性的な大人には失笑された(ジョン・ピールにすら)。デビュー時のクラッシュは、破格の契約金を手にしていたからだ。なのに、なにを駄々っ子のようなことを、と……だがしかし、まさに「そこ」こそが、大いにウケた。

現在進行形の、目の前にある「不当な事象」へと正面衝突していく彼らの姿は、今日で言えば突撃取材するYouTuberのように、日常に不満を抱くパンクスの心をつかんだ。なぜならばそれは「ロックで体験する、実録調・労働争議」の初めての例だったからだ。ゆえにこの曲は、後進のパンク・ロック・バンドにとって、ひとつのお手本ともなった。

生一本のパンクにもかかわらず、同時に音楽的豊潤さにあふれているところも彼ららしい。怒りを完全に客体視して、遊び心も加味した華やかなロック・アレンジとなっている。グルーヴ感が高まる後半部、そこはかとなくレゲエの香りすらするのは、プロデュースがなんとリー・ペリーだからだ。全英28位、彼らにとって初の30位内を記録。アメリカでは2年遅れでリリースされたUS盤ファースト・アルバムに収録された。

(次回は80位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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