【リレーエッセイ】一世を風靡した勝間和代さんの大出世作はこうして生まれた!
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【リレーエッセイ】一世を風靡した勝間和代さんの大出世作はこうして生まれた!

タイトルが決まらない本

アランちゃん6歳時のこの一冊は、経済評論家・勝間和代さんの『お金は銀行に預けるな』(2007年11月刊)です。勝間さんは本書がベストセラーとなったことで一躍「時の人」として注目され、活躍の場を広げられることになります。

本書は、タイトルの最終決定までに二転三転した一冊です。

本書が出る一月前の10月、勝間さんはダイヤモンド社から『無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法』を出され、快進撃を続けていました。そんな「勢い」に乗っていた時期の勝間さんの新作、しかも新書で初の刊行ということもあって、販売部からの期待も大きいものがありました。

ところが、タイトルの最終決定時期が近づいても、なかなかいい案が思い浮かびません。そして最終的に『お金が動けば、お金は貯まる』といったようなタイトルに落ち着きかかったのですが、この案が「インパクトがない」との理由で販売部に却下されてしまったのです。そこで、無い知恵を振り絞ってタイトルを再考しました。そして、「もうこれ以上は待てない」という締め切りギリギリのタイミングで、『お金は銀行に預けるな』というタイトルが思い浮かんだのです(たしかにこちらのほうがはるかにインパクトがありますね)。

後日談ですが、ある出版社の社長さんは「このタイトル(と、この内容)なら40万は売れる」と語っておられたそうです(実際にその通りになりました)。

また余談ですが、タイトルが決まり、本書の内容も固まって編集の最終段階に入った時、私は「髄膜炎」(脳や脊髄を保護している膜が炎症を起こす病気)にかかって入院してしまいました(高熱が出て病院に行ったら、「あ、これ入院です」とあっけなく言われ、病院に行ったその足で即入院となってしまったのでした)。

幸いにして重症ではありませんでしたが、勝間さんの原稿のことが気になっていたとき、当時の編集長が病院にお見舞いに来てくれました。すると「これ持ってきたよ」と、ベッドに横たわっていた私に『お金は銀行に預けるな』の校正刷りをポイッと渡し、スッと帰ってしまったのです。点滴を打たれて毎日イタイイタイ思いをしていたのですが(あまりに痛くて途中で看護師さんに「点滴もう外してもらえないでしょうか」と頼みました〈外してもらえました〉)、入院中ということで特に何もやることもなかったので、病院のベッドの上で本書の最終チェックを行いました。

『高学歴ワーキングプア』『4-2-3-1』『座右のニーチェ』

アランちゃん6歳時に刊行された主な光文社新書はこちらです。

・『高学歴ワーキングプア』水月昭道(2007年10月)
・『「言語技術」が日本のサッカーを変える』田嶋幸三(2007年11月)
・『非属の才能』山田玲司(2007年12月)
・『黒山もこもこ、抜けたら荒野』水無田気流(2008年1月)
・『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』山田真哉(2008年2月、『食い逃げされてもバイトは雇うな』2007年4月刊の続編)
・『4-2-3-1』杉山茂樹(2008年3月)
・『愚か者、中国をゆく』星野博美(2008年5月)
・『座右のニーチェ』齋藤孝(2008年6月)

『非属の才能』『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』『4-2-3-1』の担当は、またしてもカッキーちゃんこと柿内芳文さんです。カッキーちゃんどうもありがとう。

黒山

『黒山もこもこ、抜けたら荒野』と『4-2-3-1』
この2冊はタイトルが面白いですね

ちなみに2008年の8月には、北京五輪が開催されました。日本勢は9個の金メダルを獲得。競泳男子で北島康介選手が平泳ぎの100、200メートルを制し、2大会連続の2冠という偉業を成し遂げています。ソフトボール(次のロンドン五輪から2021年の東京五輪まで、ソフトボールは正式種目から外れます)では、日本が決勝でアメリカを破って悲願の金メダルを獲得。エースの上野由岐子選手は2日で3試合を投げ切る力投を演じて話題になりました(泣きました)。一方、金メダルが期待された野球の「星野(星野仙一さん)ジャパン」は4位に終わってメダルを逃しています。

勝間さんの危機感から生まれた一冊

さて、本書は、「日本人の金融に対する一般的な知識が、同レベルの経済力を持つ他国と比べて大きく遅れているのではないか」という勝間さんの強い危機感から生まれた一冊です。

実際、日本では、たとえある程度の資産を持っている人でも、その多くは自分の資産を銀行や郵便局などの普通預金や定期預金として預け、「お金を寝かせたまま」にしているのが現状でしょう。

勝間さんは本書の冒頭で次のように語っています。

まず最初に分かってもらいたいのは、「自分のお金を銀行などの口座に預金として預けてさえおけば安全」であるどころか、それは人生設計上、リスクになるということです。

なぜでしょうか。

これからの時代は、何が起こるか分からない世の中です。自分の勤務先がいつ倒産するのかも分かりませんし、倒産しないまでも、自分の会社の属している業種が何かの理由──例えば材料高や労務費の高騰、あるいは政府の規制やグローバル化──などにより、いつ、不況になるのかも分かりません。そう考えれば考えるほど、ある一つの勤め先の給与所得に自分の人生を頼ることは、とても危険なことなのです。だからこそ、能動的に自分たちの資産を形成し、キャピタルゲインを得て、最低でも半年、できれば2〜3年間は無収入でも家族が今まで通りの生活をできるくらいの資産を蓄える必要があるでしょう。

幸いなことに、今はインターネットが発達しているので、金融に関する情報入手の手段にはまったく事欠きません。あとは、新入社員が少しずつ仕事を覚えていき、5年から10年、15年、20年とかけて職場の仕事に熟達していくように、私たちも少しずつでもいいから、毎年、毎年、金融リテラシーを身につけていけばいいのです。

直近のデータ(2021年)を見ても、日本では、現金・預金、次いで保険・年金など「安全資産」の保有率が高く、これらに比べて、株式や投資信託、債券など、「リスク資産」の保有率が極端に少ないことがわかります(図表2を参照)。

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「資金循環の日米欧比較」2021年8月20日、日本銀行調査統計局より

このデータからも分かるように、私たちはいまだ金融の知識に乏しいといっても過言ではないのではないでしょうか。

「汗を流して稼いだ1万円の方が、お金を運用することで得た1万円よりも尊い」?

本書の刊行時、勝間さんがライフワークとして考えていることが二つありました。

それは、

1.現代の日本に生きる多くの人がワークライフバランス(仕事と生活の調和)をもっと上手に整えることができるよう、労働時間の短縮に向けた仕組みを手伝うこと

2.専門としてしてきた(勝間さんはJRモルガン、マッキンゼー、アンダーセンなどの外資系企業で、コンサルタント、トレーダー、アナリストとして16年間、金融相場の分析や取引、新しい金融商品の設計などに関わってきました)金融・経済・会計の知識を社会に還元するために、それを分かりやすく伝えていくこと

です。

そして、次のように語りかけます。

日本では、たとえ知識層であっても金融に詳しくないのは、その背景に「お金のことを人とあからさまに話すのは恥ずかしい」という美学があることや、同じ1万円を稼ぐにも、汗を流して稼いだ1万円の方が、お金を運用することで得た1万円よりも尊いという価値観があるためだと私は思っています。また、学校教育の現場でも、どこもお金についてはほとんど教えていないことも原因の一つでしょう。

しかし、私たちは資本主義社会に生きている以上、金融に対する健全な知識を持たないまま生きるということは、ゲームのルールを知らずに試合をしているのと同じことを意味します。そして、これから本書で詳しく述べていきますが、ルールを知らずにそのまま試合を続けていれば、そこにはさまざまな〝落とし穴〟が待っており、足元をすくわれかねない結果を招くことになります。

しかし、金融の知識を上手に活用していけば、労働からの収入と金融からの収入のバランスをうまくとることができ、現在、社会人の誰もが課題と感じているワークライフバランスをもっと上手に整えることができるのです。

本書は、ビジネスや経済、政治や社会問題には自分なりの見方をある程度持っている人で、これまで金融に関してだけは疎かった人(おそらく日本人の大多数派)が、身の周りの金融商品や金融資産運用について、何をして、どこを中心に情報収集をすればいいのか、そのポイントが分かるような内容を目指しました。

また、本書では、貯蓄から投資への移行は月々の積み立てを中心に説明しましたが、すでに十分な資産を持ちながらも預金などに寝かせている方は、月々の積み立てと同じ発想で、半年から一年間、少しずつでいいので、本書で勧める投資方法を実践してみてください。

少子高齢化が進む日本は、今後、定年後の公的年金の支給率は切り下げられる可能性が高く、また、自分の勤め先がいつ倒産するかも分からないような状況です。したがって、自分の身を自分で守るためにも、自分自身で資産を管理していかなければならない時代に入ったといえるでしょう。

そのためにも、本書を読んで金融に関する知識を学び「ああそうだったのか」「目からウロコが落ちた」──そんな気持ちになって金融に興味を持ち、自分の生活に実際に役立ててもらえれば幸いです。

金融は非常に公正な市場で、勉強すれば勉強した人にリターンが必ず返るしくみになっています。そこには嫌な上司もいませんし、妙な社内政治もありません。アマもプロも、同じ立場で勝負ができます。だからこそ、実力主義の厳しい市場ではありますが、金融の知識をうまく味方につけ、その知識を応用していくことで自分の資産を上手に運用することが可能になります。また、この金融に関する知識は、自分の資産運用だけに限らず、会社の業務においても財務や資金回収、あるいは値づけを考える際に必ず役に立つはずです。

今から10年以上前に刊行された本ですが、勝間さんが本書で示した金融に対する考え方は、いまなお有効で、色褪せることのない内容を含んでいます。「金融は苦手、でも金融の最低限の知識は身につけておきたい」と考えている方にはピッタリの一冊です。

アランちゃん6歳時のこの一冊

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